第12話 去年・妹の家へ

妹の家はWi-Fiが入っているし、セコムも入っている。

開けてもらった部屋はキッチンの上で冷蔵庫の音が伝わってきて、楽とは言えなかったが、自宅よりはよほどマシだった。


ただ、真夜中に近所のエコキュート かエネファーム(妹にもどちらかわからないと言う)の音が鳴り、ゾッとして起きてしまった。

カウザルギーのためにお世話になった頃には、まだなかったものだ。

全身の痛みにしばらく耐えていると、どのくらいの時間がたったか、音が小さくなって楽になり、また少し寝た。



眠って翌朝、少しはまともに考えられるようになった私は、浄化槽をなんとか止めればいいのだと思いついた。


なんで考え付かなかったのかしら。

やっぱり、寝ないと人間、ダメなのね。


工事現場に置いてあるような、仮設トイレを借りられないか?

それで、今の浄化槽を移設すればいい。


ちょうど、葉山に来たばかりの頃、合併処理に変えるのに助成金が出ます、と教えてもらっていた。


GWが終わったら早速浄化槽を汲み取りして、トイレを借りるところを探せばいい。

その間は、災害用のトイレセットを使えばいいじゃない。


私は一旦、家に戻り、しばらく家を空けるためにいくつか連絡して、浄化槽の管理会社に事情を話し、汲み取りの予約をしようとしたところ、なんとその日に来てくれた。

汲み取り中、仮設トイレの相談をすると、


「そこまでしなくても大丈夫。汲み取ったばかりだから1ヶ月程度は。匂いが出てきたらブロワー を回してください」


なんだ。

ブロワー は、心臓が止まるまで回し続けなくてはならないものかと思っていた。


もちろん、本当は止めてはいけないのだ。それは分かっている。

けれど、命がけで動かし続けなくてはならないと言うほど、杓子定規ではないと言うことだろう。


残念ながら、いまだに移設はできていない。


頼んだ見積もりが出来上がる前に、あっという間に悪化して、隣の家の浄化槽の音すらつらくなってしまったからだ。


いくら今より家から離して移設しても、これでは使えるはずがない。


しかも、最近の浄化槽は昔のものより作りが複雑だから、ブロワー とつけたり消したりして、万一詰まってしまったら、メーカーを呼んで分解修理しなくてはならない、と相談した管理業者さんに言われてしまった。


移設したはいいが、やっぱり使えませんでしたではお手上げだ。




匂いが出ても家にいるとき回す事はできないから、外出中に回すことにした。


最初は週四日で治療に行っていたし、帰りにできるだけ散歩して、出かける時間を長くした。

少し回復して週三日になる頃には、ヨガをはじめて半日出かける日ができたし、散歩でも補うようにした。



できれば助成金が出るうちに移設したいが、どうなるか。

昔の汲み取りタイプの許可が出るならそうしたいくらいだ。

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