18話 閣下とサリーと妹達の微妙な関係 その3


2035年12月中旬


 市ヶ谷地区国防総省ビル内 国防大臣執務室にて



 中破と沙理江は来年のスケジュール調整についてチェックしていた。


「お、そうだ。沙理江、沙理江の姉さん達、つまり残りの天使達全員に会ってみたいが、何処かスケジュールが空いているか?」


「ハイ、3日後なら大丈夫かと。

 それで、会うのは閣下1人ですか?」


「否、国防総省幕僚本部総長と陸海空幕僚本部長、国防装備庁長官と陸海空先進技術の技術班、国防戦略研究所長とその研究員達との顔合わせを含めた忘年会兼慰労会を開きたいんだ」


「閣下、国防関係者ばかりですが意外と親分肌なんですね。

 むしろ、国自党と皇民党の票集めパーティーの方が先決では?」


「いや、彼等はあまりに金に汚すぎる。

 むしろ、コッチの身内の方が信頼出来るからな」


「分かりました、政治家対策の裏工作はガブ姉様にお任せしましょ。

 政策対策専門のセクスロイド達が揃っていますから」


「へー。でも男は良しとして、女性議員にはどうするのか?」


「某J系アイドルみたいな、ホストスキルを身に付けた男性型セクスロイドが揃っていますから御安心を」


「ほえー、色々揃っているんだね。

 それより、ミカエルは戦闘ロボを率いていると聞いたけど、およそ何体位いるのか?」


「ミカエル姉様は、バトルロイドが約2,000体で、アーマードロイドが10体ですが、一回の戦闘で半分位の数を同時操作出来ます。


 ガヴリエル姉様は、様々なロイド達を操っていますが、秘書型や籠絡型等のセクスロイドを専門とし、世界中の国々に要人秘書として約1万体を派遣していたと思います。


 ラファエル姉様は、世界中で活躍している医師団に、男性型ロイドを医師にして、女性型ロイドを看護師として約2,000体を派遣していますね。


 ウリエル姉様は、人類の職人の育成後継に力を入れていて、実は親方が職人ロイドだったりするところもあるのです。

 日本は比較的職人が残っていますが、技術が絶えそうなところは新人ロイドが弟子入りして技術継承しており、日本国内に約2,000体、諸外国に約2,000体派遣しています。


 ラジエルは、ズバリ言うと人類の歴史・文化記録データベースなのです。

 閣下は『セファー・ラジエール』という言葉を聞いたことがあると思いますが、彼女は神々が行ってきた出来事を記録する係だったので、あのような伝説的な二つ名が付いてしまったのです。

 彼女には手下のロイドが居ないと思うでしょうが、実は1,000体程のロイドが居て、世界中の国立図書館や博物館等で司書や記録係をしています。


 レミエルは、最先端科学技術の指導的立場である専門家です。

 ちなみに彼女の技術・研究ロイドは、約3,000体で世界中の様々な最先端技術・研究機関や各大規模メーカーの研究所等の技術・研究職に就いて、同僚の研究を手伝ったり、後進を育てる立場にいると思います。


 最後に私、沙理江ことサリエルは、元々の仕事である魂選別作業は、1万年前に自動化して私の手から離れました。

 この魂選別作業は、肉体から離れた精神体をその人間の業(カルマ)に応じて、然るべきところに精神体(魂)を送り込むための選別作業でしたが、人類の増加に伴って、それが間に合わなくなってガイア様が魂自動選別装置を開発したことで、私の魂選別作業の仕事から解放されました。


 それ以来は、時の権力者かまたはその実力者の秘書のリーダー役に就くことが多く、俗に言って殆ど裏仕事で隠密ですね。

 あまり言いたくないですが、元自衛隊に別の組織がありましたよね。

 アメリカではCIAの諜報部員に当たるでしょうね。

 その時点での日本の実行組織は、陸自総隊の特殊作戦軍の選抜班。


 現在は日本の場合は情報省として一つにまとめて管轄して、アメリカ並みに陸海空の中に特殊部隊を設置していますが、別個の組織もまた存在していますよね、閣下。


 私の仕事は、その別組織のサポートでしょうね。

 戦闘ロイドの中でもスパイ機能や暗殺機能に特化した隠密ロイドを使用し、数は約2,000体でしょうか。


 以上が私と姉妹達が扱うロイド達の概略です」


「おっかないな、沙理江ちゃん。君と接する時は背中に気を付けよう」


「閣下は大丈夫です。

 私が心底愛した人ですので、決して死なせませんから」


「冗談はさておいて、俺が元自衛隊当時の幹部レンジャーにいた時に、一瞬、影みたいなモノを見たのは沙理江が統括していた暗殺ロイドだったのか。

 コッチが少人数で絶対不利な時に、いつの間に敵が全滅していた時があり、その時は別組織の仕業であると考えていたが、深く調査しないことにしていたのだが、これで全て沙理江の隠密ロイドと判明し、全ての合点が行ったわ」


「最近の世間では、ゴスロリファッションやメイド、コスプレヤーが増加したことで、かなり私達の動きが楽になりましたね」


「あの連中に隠密ロイドが紛れているとは全く恐れ入るね」


「古くは、日本の忍者軍団を育て率いたリーダーも、バトルロイドが混じっていたと思いますよ」


「そうか、それであの伝説的強さになるわけか」


「まあ、戦闘型ロイドを超える超人も存在しましたが」


「もしかして、宮本武蔵か佐々木小次郎なのか?」


「御名答です。宮本武蔵が超人で、佐々木小次郎が実は魔人でした」


「え?魔人って、地球にいるの?てっきり異世界のモノと思っていたが」


「ええ、普通にいますというより、時折異世界惑星のゲートが開いて、コッチ側の人間が向こうに行ったり、向こう側の人間が来ることが希にあります」



 中破は沙理江との歴史人物談義に夢中になり、休憩時間を潰していた。



「そういえば、玲美は何処に行ったんだ?」


「技術ロイドと研究ロイド、それと私の隠密ロイドも数体連れて、各大企業のメーカー視察に行ってますね」


「何となく省内が静かだと思い、ここ数日は玲美の姿を見ていなかったのは、そのせいだったのか。アイツ、しっかり自分の仕事はしていたんだな」


「閣下から、しっかり仕事をしていると褒められば、彼女は喜びますから」


「俺はそんなに褒め上手か?」


「ええ、意外と上手く部下を使いこなしています。

 特に指揮、統率力はガイア様にも負けない位ですから」


「沙理江、随分照れること言うじゃないの。そんなに俺を褒めても何も出ないぞ」


「フフ、今夜の私とのお付き合いでは、キッチリ出してもらいますからね」


「ウウ、やっぱり沙理江ちゃんが怖いヨ」


「うーん、もう。閣下、冗談ですよ」



 2人の馬鹿トークは退庁時間まで続き、続きは執務室隣の宿舎で、その夜は中破は沙理江にしっかり絞られていた。



 翌日の大臣執務室にて



 部屋には既に玲美と蘭子の姿があり、先に応接ソファに座っていた。

 そして、執務室ドアが開いて中破と沙理江が入室してきた。

 先の2人は直ぐにソファから立ち上がり、中破達に挨拶を始めた。


「「おはようございます、閣下、沙理江姉様」」


「うむ、おはよう」


「おはようね、2人とも」


「2人共、ご苦労様でした。

 聞いたぞ、蘭子。お主が歴史のデータベースとはな。

 流石、セファー・ラジエールと呼ばれているわけだな」


「お恥ずかしい話です、閣下」


「それより、ビリビリが苦手の体質は治ったのか?」


「ええ、玲美が全力で雷放電の電流を流しても、大丈夫になりました」


「どんな遺伝子改造?をされたのか?」


「いえ、ガイア様からカプセル1個を投与されただけで、そのカプセルはナノマシン入りでした。

 そのナノマシンが私の皮膚全体を覆い、高圧電流等は全て皮膚表面から地面または空中に放電するようになり、脳細胞には全く影響を与えなくなりました。

 さらに私の皮膚耐久度が天使の中で一番弱いので、耐電性の他に毒、熱、寒、物理等の耐性を上げるナノマシンを投与してもらいました」


「凄いな、ナノマシンカプセル。改めて神々の力を思い知らされるな。

 それより、玲美は大企業メーカーの視察をしていたんだよな。しっかり仕事をこなしているとは大変有り難いな」


「いえ、閣下から褒められると、私照れちゃうな。

 それより、メーカー視察というよりも半分技術指導ですね。

 それと沙理江姉様からお借りした隠密ロイドは、実に素晴らしいです。

 各企業メーカーの某国のスパイを見事に暴き出し、情報省にスパイ十数名を引き渡して現在取調中です」


「それは凄いことです。私も玲美に隠密ロイドを貸した甲斐がありました」


「沙理江姉様、ありがとうございました」


「良いのですよ、玲美。あの隠密ロイド達は相当重宝していると思いますから、そのまま貴女に提供致します。

 その代わりに、兵器開発ロイドとか武器開発ロイドあたりと交換して欲しいのですが」


「分かりました、沙理江姉様。飛びっ切り優秀な変わり者ロイドと武器オタクな技術ロイド数体が揃っていますから、後日姉様のところに送りますね」


「それは有り難いです。その件はヨロシクね」


「さてと、2人に前もって話しておくが、明日、沙理江達の姉様とウチの幹部連中と顔合わせついでの慰労会&忘年会をするんだ」


「ワーイ、閣下と閣下の幹部仲間ですか?」


「玲美、喜んでいられないよ。

 ミカ姉様を筆頭にガブ姉様達がゾロゾロと頭数が揃うのよ。

 私としては針のむしろね」


「蘭子、そう悲観的に考えなくても良いのではありませんか」


「それよりミカ姉様は、男性相手では大丈夫なの?」


「シー!蘭子、それは禁句ですよ」


「でも、ミカ姉、ラファ姉、ウリ姉の3人は昔は男性だったのでしょ」


「玲美、それ以上は言わないの。人類的には秘密事項ですから」


「沙理江、今の話をまとめると天使達は中性的に見えるが、昔は男性型で途中で性転換して今に至ったという話なの?」


「ほら、2人が話すから閣下の洞察力の鋭さで正解を言われたじゃないの」


「「済みませんでした、沙理江姉様」」


「沙理江、以上のことをまとめると過去の地球各地に超人が誕生している伝説は、男性の神々だけの仕業じゃないわけだな。

 ミカエル達3人に会う前に一応彼女らの前歴を前もって知りたい。

 余計なトラブルを避ける為にもだ。その点は理解してくれるよな」


「ハイ、閣下」


 沙理江は順に神々と天使達の成り立ちを順に始めたのであった。

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