日本国転生
北乃大空
1話 女神ガイアと天使ガヴリエル
2025年1月
ピポピポ!
「(おや?メールが来たか。宛先はどこからだ?お!中央管理局からか」
「(さーて、中身は何でしょうね?)」
ガイアは心の中で呟きながら、ディスプレイにメール内容を表示させた。
『前略、女神ガイア殿。
貴殿が開発後、地球を含む太陽系の管理に運用している【星系コピーマシン】と【パラレルワールド時空管理システム】を、他星系の惑星管理に応用した結果、惑星上の知的生命体の滅亡率が著しく激減しました。
それにより、我ら管理者の活動の源になる精神エネルギーが増大することに繋がり、このシステムが大変素晴らしいものであると高い評価を受けました。
その功績に報い、【星系コピーマシン】を開発・運用で【第2級宇宙管理神クラスB】から【クラスA】にランクアップし、次に【パラレルワールド時空管理システム】の開発・運用で貴殿を【第1級宇宙管理神クラスC】に昇格させます。
副賞として中央管理局から【人工生命創造システム】を贈呈します。
宇宙中央管理局より』
「ピッ!ブシュー、ウィーン」
自動ドアが開き、ある女性が入室してきた。
「ガイア様、何をしていたのですか?」
「お?ガヴリエルか。丁度良いところに来た。
中央管理局からメールが届いたのだが、私がこの度『第1級宇宙管理神』に昇格することになったぞ」
「それはおめでとうございます。ガイア様」
「ありがとう、ガヴリエル。1万年以上もこの私を支えてくれた。
改めて感謝致す」
「勿体ないお言葉です、ガイア様。あの超古代文明を滅亡させて1万年、あの事故があったからこそ、この時空管理システムを新開発出来た訳で、諺でいう『怪我の功名』なんですよね。違いましたか?」
「ガヴリエル、流石にお主は電子頭脳に毒舌&諌言プログラムが内蔵されているだけあるな。ホントに大したアンドロイドだよ」
「お褒めに預かり、恐縮致します」
「あのな!私の皮肉を肯定に捉えるとは。ムギギ、この阿呆ロボ!」
この2人、名前から推察出来るとおりで『女神ガイア』と『天使ガヴリエル』である。
女神ガイアは、正確には『神族』と呼ばれている知的生命体の一種である。
宇宙誕生からか、それ以前なのかは詳しいことは分からないが、元々は人間型生物だったらしい。
いつしか神族は科学技術を極めて、肉体という殻を脱ぎ捨て、精神体を維持しながら生活するようになった。
精神体でのメリットは不老不死であったものの、一定の精神エネルギーが無ければ彼等の活動が低下することになり、母星から離れるためには肉体という器が必要であり、人間型生物の肉体であるブランク体に精神体を融合することで、別な惑星で活動することが可能となった。
彼等の次の目的は、宇宙全体を知的生命体で満たすことであった。
生命体を宇宙全体の惑星等に満たすことは、彼等にとっては比較的簡単ではあったが、それらの生命体が知的生命体に進化することは大変困難な事であるといえた。
知的生命体が生み出す精神エネルギーは神族の活動の源であり、宇宙で知的生命体が居住することが出来る可能性がある惑星をテラフォーミングして生物居住可能に惑星改造をしていた。
その後、植物・動物生命体を移植して、最後に遺伝子操作することで、神族にほぼ同じかそれに近い人間型生物の発生を促し、その生物の繁殖発展を操作していた。
地球も彼等の惑星改造の一つで、何度も全球スノーボール状態になったり、恐竜等の巨大生物の出現等と隕石誘導落下による滅亡等の環境操作と生物操作を試行錯誤しながら繰り返して、ようやく現在の安定した自然環境を創り出すことに成功し、人類という人間型生物を繁殖、文明を発展させつつあった。
ガイアの正式所属名は
『ラニアケア超銀河団乙女座銀河団銀河系オリオン腕太陽系第3惑星地球』の『第2級宇宙管理神』であったが、先程の辞令により『第1級宇宙管理神』に昇格した。
一方、天使ガヴリエルは、神々と呼ばれる神族に創られた存在で、正確にはAI機能搭載人間型ロボットで、通称『アンドロイド』と呼ばれている。
ガヴリエルの他に6体の姉妹アンドロイドが存在している。
この2人、否、1柱と1体と呼ぶのが本当は正しいのだろうが、便宜上2人と呼ぶことにする。
この2人がいる場所は、巨大宇宙船内のコントロールルームの一室で、宇宙船が停泊しているポイントは、月の裏側のラグランジュポイントである。
この宇宙船の大きさは、直径約100kmに及ぶ巨大なものであるが、今まで人類に発見されなかった理由は、船体自体がステルス素材でレーダー等に映らないことと、光学迷彩機能を備えていることから望遠鏡等には全く見えない存在であった。
だが、人類の科学発展は目覚ましく、既に月着陸を達成し、いずれ宇宙進出で月裏側のラグランジュポイントにも宇宙ステーションやスペースコロニーが建設される可能性が高く、ガイア達の巨大宇宙船も発見されるのは時間の問題であったが、最近、中央管理局が開発した亜空間潜行技術により、宇宙船全体を亜空間潜行させることで、当面の間はこの場所から動く必要が無くなっていた。
「ふむ、副賞の『人工生命創造システム』とは何ぞや?ホムンクルスでも創れというのか?地球文明の中世ヨーロッパの錬金術師じゃあるまいし」
「ピポピポ」
「ガイア様、また中央管理局からのメールが届きました」
「お、どれどれ。メールの中身は何かな?」
『前略、女神ガイア殿。
先程、貴殿に贈呈した【人工生命創造システム】の操作マニュアルと活用方法マニュアルを含めたプログラムデータを送付しました。
このシステムは、貴殿の部下として働いている天使達(アンドロイド)の改造システムです。
例えアンドロイド体でも、定期的にメンテナンスしているとはいえ、1万年以上稼働していると、全体的にガタが来ていることは確かです。
以前はアンドロイド体の記憶、経験等のメモリーデータを、新しいモデルのアンドロイドを構成する機械体に再インストールしていました。
だが、今回は神族である管理者が使用しているブランク体に近く、人間体とほぼ同等である人造細胞を主体としたバイオロイド体の開発に成功しました。
ガイア殿の功績は偉大で高い評価を得ていることから、今回のバイオロイド体を使用した新モデルに、アンドロイド体のメモリーデータを再インストールして、新たな人工生命体に生まれ変わらせることで、ガイア殿の新たな助手として働ける訳です。
なお、改造に必要なプログラムデータは、既にメディカルルームに送付済みで、天使達がメディカルルームに行けば順次自動的にバイオロイド体への改造が始まり、所要時間は約8時間です。
それでは、貴殿の活躍を祈念致します。
宇宙中央管理局より。』
「ほほう、凄いな。この人工生命創造システムは。
ガヴリエルをアンドロイドからバイオロイドに改造するシステムだって」
「え?私に人間に変わらぬような身体を頂けるのですか?」
「嬉しくないのか?」
「私には感情プログラムがインストールされていないので、今回の事が嬉しいかどうか判断出来ません」
「あ、そうか。今まで行動や会話する度に微笑を湛えていたのは、能面みたいな無表情だと怖く感じるのを和らげるためだったわけか」
「ハイ、そのとおりでございます」
「それじゃ、ガヴリエルが感情を持つために、早いところバイオロイドに改造しなきゃダメだね。
それではガヴリエルに命令します。今から直ちにメディカルルームに行き、バイオロイド体に改造してもらいなさい」
「了解です、直ちにメディカルルームに向かいます」
ガヴリエルはコントロールルームから退出しメディカルルームに向かった。
「(さて、どんな風に変わるのか少し楽しみだわ。)」
ガイアは心の中で、彼女が次に会う時にどの位変わるのかを想像するのが楽しみであった。
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