Op.008


 日差しをあびた君の栗色の髪が金色の光った。

 きれいだというと、君はひどく皮肉げに唇を歪めて笑う。

 ――それはね、偽物だよ。君がみているのは表面だけの偽りだ。いわゆる、愚者の金、というやつさ。

 ぐしゃ、という言葉に戸惑っていると、君はなにを言うまでもなく、愚か者という意味さ、と付け足して、くるりと踵を返した。

 長い髪が遠心力で広がり、きらきらと光る。

 こんなにきれいなのに、彼女はそれを認めようとしない。

 それならそれでいい。

 自分は、愚か者でいい。

 美しいものを疑わなければならない面倒な生き方などまっぴらだ。

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