ささやかな願い

ツヨシ

第1話

ある日、友人のほのかから電話があった。


あの人に子供が生まれたそうだ。


「あんなぶさいくでちんちくりんの嫁さんだから、きっと子供もたいしたことはないわよね」


ほのかとあの人は同じ会社の同僚だ。


部署まで同じ。


だから知っているのだ。


私は「そうなの」とだけ言った。


三年前、私はあの人とつきあっていた。


本気で結婚も考えていたのだ。


しかしあるとき、ちょっとしたことでけんかをした。


私は意地をはって自分から連絡をしなかった。


そのうちにあの人から連絡があると思っていたのだ。


しかしいつまで経ってもあの人からの連絡はなかった。


完全に自分から連絡を入れるタイミングを逃し、一年半が過ぎたころ、あの人が結婚したことをほのかから告げられた。


すっとあの人からの連絡を待っていたというのに。


毎日、毎日。


その後もあの人のことを忘れたことはなかった。


いつも頭にあの笑顔が浮かんでくる。


毎日、毎日。


そこへほのかからの連絡が、また来たのだ。

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