039 やっちまった、俺はやっちまった

 ◆◇◆



 ストゼロのせいで、意識が飛んでいた。俺が気付いた時には、さくもも床でうつ伏せになって倒れていた。テーブルの上には、デミグラスソースがこびり付いたお皿と、ストゼロの空き缶が二人分合わせて13本あった。


 どっちが何本飲んだかは分からない。


「飲み過ぎたぜ……。シャワー浴びるか」


 俺は、タオルケットをさくもにかけ、風呂場へと向かった。確か、さくもは今夜もバイトの筈だけどな。脱衣所に置いてある小さな時計は、23時前を指していた。風呂から上がって、ちょっとしたら起こしてやるか。


 俺は、すっぽんぽんになって風呂場へと入った。冬場は凍てつく風呂場の床も、今ではすっかり心地の良いひんやりを俺に与えてくれる。お湯は、41度。俺のこだわりだ。


 シャワーを頭から浴びる。


 まだ僅かに体内に残ったアルコールが浄化される気分だ。


「ふぅ」


 心地良さから、幸せのため息を吐いた。そして、ちょうど息を吐き切ったタイミングだった。


 風呂のドアが開いた。


「え!?」


 俺は、風呂の鏡を見て全身が固まった。さくもの足が映っている。


「ごめんね、りんご」


 さくもは何故か風呂場の電気を消し、中へと入って来た。ドアも締め切る。


「さくも!? 何やってるんだ!? 監視カメラだってあるんだぞ……!?」


「夕方、お風呂掃除の時に壊しちゃった……」


「え……?」


「だから、ごめんね。あたし、旅行の時と違って酔ってないからね?」


 さくもは、俺の背中に両手を押し当てて来た。


「初めてだったのよ。こんなに人に優しくして貰えたのは……。だけど悔しいな……」


 俺は、ゆっくりとさくもの方に体を向ける。脱衣所の明かりで、さくもの体のラインは、はっきりと分かる。俺は、さくもの両肩に手を置き、唇と唇をそっとくっ付けた。


 いけないことだと分かっている。これが最初で最後だと知っている。だから俺は、本気なんだ。


 さくもは俺の手を取り、指を絡めてきた。キスは益々激しくなり、さくもの息遣いが荒くなる。巨乳おっぱいも、俺の胸に当たっていた。


「りんご、本当にありがとうね。一生忘れないから」


「別に縁が切れる訳じゃねぇだろ」


 体は密着したままだが、長いキスを終えた。


「ふふ。まあそうだけどね……。座って?」


「え?」


「いいから早く座って」


「あ、うん」


 俺は、その場であぐらをかいた。さくもも膝をついて身を屈める。


「充子ちゃんに悪いかな?」


「ああ。俺らは……極悪人だな」

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