009 洗脳、俺は仮面ライダーになりたかった

 その日の放課後 ——


「充子、お待たせ」


 先にホームルームを終えた充子は、校門の近くで待っていてくれた。さくもより一回り小さな体。さくもより若干短いサラサラヘアー。さくもよりかなり控えめなおっぱい。彼女は、優しく微笑んで待っていてくれた。


 さくものお陰と言うのは変な話だが、爬虫類を食べると異常性を味わったからこそ、充子が一層可愛く思えた。


「りんごくん、じゃあ帰ろうか!」


 俺の右側にひょっこり回ってきた充子は、俺の腕にしがみついてきた。


「お……おい、他の生徒もいるぞ……」


 おっぱいが触れている。ほぼ存在しない筈なのに、間違いなく触れている。不思議だ。


「何言ってるの? 私達って幼馴染じゃん。昔、一緒にお風呂に入ったことだってあったよね? それに、りんごって優しいから、私がいないと他の悪い女の子に騙されるかもしれないよ? 昨日は大丈夫だった? あの女と居て何もなかった? 今日は私が一緒に居てあげるからね。多分私は、なんだかんだで一番りんごくんのこと知っていると思うんだ。だってほら、中学1年の頃だったかな? 私がりんごくんの部屋でエッチな本を見つけてしまったじゃん? りんごくんが、控え目な胸が好きだって知っている人も私だけじゃない? 他にいないでしょ? あ、でも、男の子同士だったらそんな話するのかな? 女子で知っているのは少なくても私だけだよね。なんか、昔のこと色々思い出して来ちゃった。そうそう、私達が同じ高校に合格した時、本当に嬉しかったよね。私が毎日、りんごくんにお勉強教えた甲斐があったって思ってる。だけどさ、何で高校になって一度も同じクラスになれなかったのかな……。因みに、高校卒業したらどうするつもり? やっぱり就職? 昔、将来は仮面ライダーになりたいって言ってたけど、今でもそのつもりなの? でも、いくらりんごくんでも、流石に仮面ライダーになる夢は諦めちゃったかな? これからも、私がサポート出来ることがあれば遠慮なく相談してね。ずっと、ずーっと、りんごくんの力になれればいいと思っているから! あ……ここまで応援されたら重いかな……? よ、よく考えたら、私達って付き合ってないもんね……。あんまりこんなこと尋ねるのはおかしいと思うけど、今、好きな人いるの? ねぇ、好きなひといる?」


「好きな……人……か……」


 やっぱり強いて言えば、充子なのかな。


「好きな人は、まだよく分からないかも」


「ふーん……」


「分からない」が正直な気持ちだった。充子は、一層俺の腕に強くしがみつき、頭を俺の肩にくっつけた。

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