どうしてこうなったのか話そうか

ほころびの 最初の部分は

ほんちいさな かすり傷だった


こんなのぜんぜん痛くない

放っておけばすぐに治る

そう思って さらしっぱなしで

手当てなんてしなかった


痛めている場所にかぎって

同じところをまた擦る

塞がりかけてた かさぶたが剥がれ

また初めから やり直し


そんなのぜんぜん大丈夫

気にしなければじきに戻る

そう思って

我慢してる自分に

気づこうともしなかった


細い線だった赤い傷は

だんだんと

周りの肌を染め

平たかった皮膚を

こんもりと立ち上げて

知らないうちに 悪魔が入って

増えて増えて増えていた


かゆいな

まあこれくらい

たいしたことないだろう

いたいな

まあこれくらい

耐えていけるだろう


そこが今

どんなふうになっているか

確かめもしないで


怖いんだ

嫌なんだ

ほんとうは


知りたくない

見たくない

認めたくない


自分さえ黙っていれば

それでよかったはずだった


こんなになるまで

なぜ


こんなに膿だらけになったら

もう


押さえても 抑えても

どんな手を使っても

追いつかないよ

もうきっと

元どおりにはならないよ


どうして

自分ばかりがこんな目に

叫んでみても

虚しいだけ


献身なんて

誰も頼んでない

誰にも頼まれていない

そう 自分で勝手にやったこと


だけど


自己犠牲は食べられる

そんなこと考えたこともない人たちに

無意識に

無邪気に

ときに意図的に

あとかたもなく

食い尽くされる


それで

今になって

むきになったって


誰も覚えていないんだ

証拠なんてないんだ


逃げろ

今すぐ

なにもかも捨てて


やめろ

今すぐ

なにもかも忘れて


そんなふうにできたら

楽になるかな

できないからまだ

苦しいんだよな


だから今

こんな自分にできること

自分だけは自分のことを

わかってあげて

やさしくやさしく

傷をまもって

なでてあげよう


食いしんぼうたちは

あなたがいてもいなくても

傷ついてもいなくても

この先ずっと

変わることなんてないのだから











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