A to B
A――嫌な世の中になりましたね。コンプラがなんとかって。特に最近のお笑いなんて、毒もなにもないもんだから、ちっともおもしろくない。うっかり冗談も言えやしない。
B――ああ、例の、深夜ラジオの。
A――あれもねえ。私が学生の頃なんか、今大御所の芸人があの番組でもっとひっどいこと言ってましたよ。そりゃもう、とんでもなくおもしろかった。だいたい、ラジオなんてその人のファンしか聴いてないんだから、噛みつく人はそもそもリスナーじゃないでしょ。
B――そうでしょうか? その人のファンや番組のリスナーは、パーソナリティを全肯定するもんなんですか?
A――じゃなきゃ、聴かないですよ。
B――危険ですね。
A――そうですか?
B――そもそも芸人、て何ですかね。今芸人っていったらだいたい、話で人を笑わせる芸を持つ人、ですよね。
A――まあ、そうですね。
B――以前はターゲットを蔑んだりバカにしたり差別したり傷つけたりして笑いをとっていたけど、時代が変わったってことですよ。そのとき嫌な思いをしていても黙っていた人たちが、嫌なものは嫌だって、ちゃんと言えるようになったってことじゃないですか? 昔これでもかってメディアに出てたのに今表舞台で見なくなった芸人って、だいたいそういうタイプ。
A――ああ、今なんでもハラスメントですもんね。やりにくいったら。
B――芸人を自負するのなら、いつまでも過去のスタイルにこだわっていないで、話芸を時代に合わせてアップデートしたらいいと思います。芸人に限らずこの手の発言で炎上する人ってそのお仲間が「悪いやつじゃない」とか擁護しますけど、個人がプライベートでどう思ってるかなんてこちらにはどうでもいいんです。公共の場で披露したことがすべてなんです。要するに、芸人としての技術がないんだと思います。
A――厳しいですねえ。
B――昔も今も相手を傷つけることで、また被害者が我慢することで社会が成り立っているところはあるでしょう。厳しい、やりにくいと感じる人は、常に加害者の立場で生きてくることができたんだと思いますね。
A――そうかなあ。
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