抱きしめる

 今日は李仁とは別の部屋で寝ている。なぜなら喧嘩したから。ちょっとしたことでなんだけど。彼は怒るときはキーッて「何よっ!」て怒るけどまだそれは序の口で本当に怒った時は無言で距離を取られてしまう。どのタイミングで謝ればいいかわからない。


 不安になる。夜までその状態だから僕はソファーで寝ることにした。クッションを抱きしめて。いつもは李仁に抱きついて寝ているけど今日は彼はいない。ごめんね、って言えばいいのに。

 すると足音がした。甘い李仁の香り。

「ソファーで寝ると体が痛くなるわよ。ベッドにきなさい」

 と李仁は優しく声をかけてくれた。

「李仁、ごめんね」

「はいはい。ほらクッション離して」

 僕はクッションを置いて李仁に抱きついた。ぎゅーっと。許してくれた。頭も撫でてって目で訴えると、してくれた。ほっとして涙が出ちゃった。

「じゃあ、行きましょう」

「うん」


 この後もたくさん抱きしめてくれた。何も言わなくても伝わるよ、体温で、心音で。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る