入道雲
立派な青の中に、割り込んで聳え立っている入道雲が好きだ。
雲は図々しく座り込んでいて、僕らの自由だけを見守っているから。
あいつは夏の番人だから、あいつがいる間、僕らは安心して逃げ水を追った。
3秒間の静寂と蝉時雨とがせめぎ合っていているのを横目に、僕らは白線を踏み、通学路を上がっていく。世界には僕らしかいないような感覚と微熱みたいな焦燥だけが漂っていた。
普段の学校は嫌いだが、夏休みの学校は好きだ。友好的な目をした校舎は僕らの要塞であった。水蟷螂や木の葉が浮かんでいたプールも、がらんとした教室も好きだ。
思い返しては泣いてしまうのだ。
下校路はただの道になってしまった、入道雲は僕の味方ではなくなってしまった。
僕はもう、あの世界の住人ではなくなってしまった。
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