駆逐まであと198日

 ここは極東の島国、日本。ここにも一族の繁栄に寄与しようとする若い新型コロナウイルスがいた。

「俺は日本を制覇したい!」

「にぃちゃん! 僕がまだかかってない都市にいってひろめてくるよ」

「おぉ! 弟よ! 開拓はお前にまかせた!」


 まず弟はTwitterでまだ感染してない都道府県をピックアップした。その中で弟の目にとまったのは鳥取県。弟は海に面した砂丘とでかい砂浜の違いがわからなかったので実際に見に行くことにした。実は、ちょびっと観光気分だった。

「人間が観光自粛してるから、僕が代わりに観光してあげてもいいよね」

 弟はスパイクをうにうにさせながら鳥取ナンバーの車の運転手の体内に忍び寄った。

 中国道を運転手が駆け抜けて、ついに弟は鳥取に来た。思った以上に過疎ってて弟は驚いた。

「あれ? 人がいない……」

 弟は一度運転手の体内に入ってしまったので、次にうつす人を見つけなければ鳥取砂丘まで行たどり着けない。

 時間が経つにつれ弟は焦り出した。なにしろ自分の命は短いし時間をかけていたら運転手の免疫に見つかって殺されてしまう。

「えっえっ、次にうつす人がいない?!

 僕が人間を操れるわけでもないし、飛沫感染、エアロゾル感染ができる範囲に人がいないなんて。後は接触感染だけだけど……」

 と、そこに免疫細胞がやってきた。初めて免疫細胞を近くで見た弟はそれがどんな種類の免疫細胞か知らなかった。

「ヨォ、新型コロナウイルス? まぁただの風邪だろ」

「きゃあ、逃げなきゃ! とにかくこの体内から出ないと!!」

 弟は、目についた物に移動した。体外に出てしまうと増えることもできずただ死を待つのみになるのだが、とりあえず目の前に現れた殺ウイルス魔からは逃れることができた。

 ツルツルしたガラス質の表面ではそれなりに長く生きることができそうだ。ガラス面の上でへたり込む弟。

 一安心する暇もなく、ぺたっ。タップタップ、フリック。運転手が、ガラス面を何度も何度も触り、弟は運転手の指先に強制移動。

「あーっ。別の人に移動して鳥取砂丘に行くつもりだったのに~」

 そのまま手を洗わずに運転手は食事をし始めた。弟は指先から再び運転手の口の中へ。そこに待ち受けていたのは。

「ヨォ、さっきぶり。なんとかウイルス。シネ」

「わ~ん」

 こうして鳥取県は今日も新型コロナウイルスの感染者は0人だった。

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