第16話 おっぱい出撃




 【水希ver】


 ふう、なんとか生徒会室に入れてもらえたよ。小野さんと平山さんも追って来てくれたし、話し合いってゆーか、真相究明はここからだよね。なぜなら、真実はいつも1つだもん。


 でもさっきから感じてる違和感、何だろう?良くわからないけど、何か変な感じがするんだよね?まあ、いいか。


 


 ◇



 ことの経緯は副会長の湯河ゆかわさんが、説明してくれた。


 要は、今日の三時限目辺りで女子更衣室にあった体操着が無くなって、たまたまその時間にその前を通ったキタローくんが犯人だと疑われてるって事らしい。そりゃ疑われて当然なんだけどね。普段の素行の悪さに加えてあの風貌だし。よりによって、一番悪いタイミングで前通ってるしね。

 でも、この人は犯人じゃないのはわかるんだよね。


「だいたい経緯はわかりましたけど、キタローくん、あ、いや、亀太郎くんは体操着盗んだりしませんよ?」


「はあ?身内贔屓の戯言ですか?根拠があるなら言ってみなさい」

 うわ、すっごい睨んでくるよ、あの会長。


「おお、弟、言ってやれや」

 ってキタローくんは他人事みたいに言ってるし。まあいいや。


「体操着フェチとか特殊性癖の人ってある程度、知能指数が高い人なんじゃないですかね?想像力とか好奇心が過剰だったりするから物フェチに走るんでしょ?キタローくんは知能指数も想像力も高くないから、そんな複雑な性癖にならないと思うんですよね」

 キタローくんが?って顔してるな。


「つまり、あんまり頭が良くないから複雑な性癖もない、って事かい?」

 って、湯河副会長がまとめてくれた。


「うおおいっ、なんじゃそりゃ⁉ディスってんのかよ!」

 キタローくんがなんか喚いてるけどほっとこう。


「ええ、キタローくんが興味あるのはストレートに中身であって、脱いだ物じゃないんですよ。」

 そこまで言って僕はキタローくんの方を向いた。


「ねえ、キタローくん。例えば道に女の子の体操着が落ちてたとするじゃない?キタローくんならどうする?」

 と質問する。


「はぁ?たぶんスルーだわ」


「だよね。じゃあ、綺麗な人が、例えば会長さんみたいな綺麗な女の人が前歩いててブラジャー落としたらどうする?」


「なっ⁉」

 あれなんか会長、引きつった顔しながら真っ赤になってるけど、例えで怒ったかな?


「うん?そりゃ、『おいブラジャー落としたぞ』って言うだろ、ふつー?」

 副会長が軽く「プッ」って吹き出したのが聞こえた。隣の小野さんも口に手を当ててぷるぷるしてるし。でも、キタローくんはあくまでマイペースなんだよね。


「だよね。じゃあ、ウチのねえちゃんがパンツ落としたらどーする?」

 って聞いたらキタローくん、多少オロオロし始めた。


「は、葉月さんの⁉うーん、その場で『落としましたよ』って……言ったらたぶん、ぶん殴られるな。後でコッソリ家まで届けるかな、うん」

 隣の小野さんがなんか肩ぷるぷるさせながらウケけてるみたいだけど、ツボに入ったのかな?


 僕は生徒会の人達に向かって言う。

「わかります?キタローくんってこんな感じなんですよ。嘘付いてるよーに見えました?この人、子供並みのバレバレの嘘しかつけないんですよね」


「おいっおまっシツレーなヤツだな⁉」


「彼の頭がよろしくないのはわかりました」

 と、会長。


「うおいっ、わかんのかよ⁉」

 うーん、キタローくんさっきからウルサイ。


「しかし、それがやってないという証拠にはならないでしょ?つい魔が差した、という事もありますから」

 と、にべもない会長の言葉に、今まで黙ってた小野さんが声を上げた。

「あの、ちょっといいですか?女子更衣室ですけど、あそこって閉まると自動でロックされますよね?開けるには必ず鍵が必要だと思うんですけど、鍵の管理はどうなってました?」


「……鍵はちゃんと管理されてました。なので、犯人はもっと以前から鍵を複製し用意していたか、あるいはドアに何らかの細工をして、完全には閉まらないようにしていたかと、考えてます」


「あの鍵、ディンプルキーですよね?複製は作れない筈です」

 その小野さんの言葉に、会長は明らかにイラッとしたみたいだ。

 因みに、ディンプルキーってのは、昔から有るギザギザの鍵じゃなくて、丸い出っ張りや、凹みがあるキーの事だ。この鍵は複製作れないんだよね。


「それに、ドアに細工するにしても、結局一度は開けないと何もできないですよね?」

 確かに。やっぱり小野さんに付いてもらって正解だったよ。そーいや、ミステリーが好きだって言ってたし、こういう場面じゃ、ノリノリになるんだろうね。


「それは何かトリックがあるのではないですか?まだわからないだけで」

  かなり不機嫌になってきた会長が言う。


「これだけ優秀な方々が集まってわからないトリックを彼が考えられたと思います?」構わずにズバズバ言う小野さん。

 

「おおい彼女、失礼だっつーの!」


「それは……思いませんが」


「思わんのかいっ」


「たまたまちゃんと閉まらなかったという事も……」

 会長が粘る。


「今まで何回か盗難ありましたよね?それ全部たまたまドアが閉まらなかったからですか?」

 ぶった斬る小野さん。


「いえ、それは……」


 すっげー、小野さん、容赦ないなぁww。キタローくんはうるさいだけだけど。





『水希くん、水希くん!』


 あれ?頭の中でポコさん(仮)の声がする。思わず股間を確かめたら、……ちゃんと付いてるし。


『水希くんの頭に直接思考を送り込んでます。テレパシーみたいなもんだと思ってください。返事も考えるだけでいいです』


(やっぱりポコさん(仮)か。なんか久しぶりだね?こんな事できるようになったんだ?)


『そーですよぉ。って、それどころじゃないです、大変です』


(なんなの?)




『今この場に……ワタシの仲間がいます』








  【カスミver】



『はい、それでは第一回円卓会議始めま〜す』


 狭い安アパートの一室でビーチくんの高らかな宣言が響き渡ります。


「円卓会議?ちゃぶ台じゃん?」

 ビーチくんが起きた為、エプロンの胸の部分を下に下ろして、おっぱいモロ出しのモモ姉さんがそうツッコミます。その姿はもう裸エプロンでさえありませんけど、他にツッコミ所が多すぎるのでもうスルーでいいです。


「一応丸い卓ですから合ってるじゃないですか。さっさと進めましょう」


『ほう、我がしもべカスミよ、解ってるじゃないか?』


「いやいや誰がしもべですか。私はロデムでもポセイドンでもありません」

 相変わらず喋るチクビってシュール感がハンパないです。


「何でもいいけどさ、何の会議?」

 と、モモ姉さんがビーチくんに尋ねます。


『やはりまずは組織の名前だろう?』

 ああ、やっぱりそうきますか。どうやら私はこのままなし崩し的に協力させられるみたいです。もう諦めましたけど。


「はい、はーい」

 モモ姉さんが手を上げました。なにか痛い茶番が始まった気がします。

 因みにモモ姉さんがなんでこんなにテンション高いのかというと、それはちゃぶ台の上に大量に置かれたビールや焼酎の空瓶が物語ってます。そう、すでに出来上がっているのです。


『はい、モモ香くん』


「はい、あたしは『666』がいいと思いまーす」


『ろくろくろく?ろくろ黒黒……チクビが黒黒黒?』


「ちげーわ。誰のチクビが黒い黒いって連呼してんだよ?666は悪魔のナンバーだよ」


「悪魔はやめましょーよ?ほら、何年か前に自分の子供に悪魔って名付けようとして炎上した親がいたじゃないですか?」


「つかアンタは子共の名付けネタ引っ張ってんじゃないよ?組織だよ、組織」


「あ、そうでした」

 テヘペロしたら……うわぁ、ドン引かないで下さい〜。


『我輩的には、おっぱいを表すよーな感じと、初々しい感じを出したいぞ?』


「はい、はーい」

 ビーチくんの言葉で私も1つ思いついたので手を上げてみます。


『はい、カスミくん』


「『初めてのおつぱい』とかどうでしょう?」


「初めてのお使いみたいにゆーなよ。家族で見たい優良番組が、子供に見せたくない番組みたいになってるやん?」


「駄目ですか。おっぱいに親近感が持てる感じでいいと思うんですが」


「だいたい悪の組織なんだからさ、親近感持たせてどーすんだよ?持たせるなら危機感とかだろ?それを踏まえてだね……」


 あ、これってフリですよね? 


「パイオツハザードとか」


「……何程、危機感はマシましたね。って、ミラなんとかビッチですか」


「あたしこれでも、ミラなんとかビッチに似てるって言われた事あるしさ?」

 と、モモ姉さんがのたまいました。


「ああ、確かに似てますね」ビッチなトコが。


「うん?何か言った?」


「いえ、何も」


『はい、はーい、じゃ、我も1つ。



パイオーツ オブ 枯れてるやん?』


「……おっぱい枯れてどーするんですか」


「……ってかさ、コレなに?おっぱい大喜利?組織のネーミングがなんで大喜利になってる訳?」


「ああ、まあ今の時代、子供にキラキラネーム付けるのも大喜利みたいなもんですからね」


「うわ〜、アンタがそれ言っちゃう?」




 ヨッパのモモ姉さんにドン引かれてしまいました。





















 


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