第383話

「その...コウさん。どうでしょうか?変なところはないですよね?」


 白薔薇騎士団の屋敷内から出てきた女性陣である2人は馬車の側に立っているコウに近づいてくるも、イザベルはドレスの裾を掴み、不安そうな表情を浮かべながら変なところはないかどうか尋ねてきた。


 そんな不安そうにしているイザベルのドレスといえば、ピンク色の生地を基調としたものであり、花のようなデザインがあしらわれたレースの部分は白色の生地を使われ、特に変なところはなく、寧ろ晩餐会に相応しい格好だろうか。


 そして髪型はポニーテールのように纏め上げられ、髪留めとして以前、コウがプレゼントしたものである銀の十字架の髪飾りがワンポイントとして添えられているのは少しだけ嬉しく思えてしまう。


 最後に足元を見ると、普段から履いている動きやすそうな革のブーツではなく、白いハイヒールを履いており、いつもよりも大人びた雰囲気を感じる。


「まぁ...なんだ...似合ってると思うぞ」


「その...ありがとうございます」


 不安そうにしていたイザベルに対して似合っていることを頬をぽりぽりと人差し指で掻きながら恥ずかしげに伝えると、雲掛かっていた表情が一気に晴れて、口元が緩み、優しげな笑顔が溢れた。


 普段から白薔薇騎士団の団長という立場のため、キリッとして張り詰めたような表情をしているのだが、そんな今日のイザベルは心なしか表情が柔らかい。


「むぅ~コウさんは私にも何か一言ぐらい無いんですか~?」


 イザベルだけを構っていると、今度は逆にライラが不満そうな表情を浮かべ、文句を言いながらタキシードの裾部分を引っ張って、視線の先を変えられてしまう。


 そんなライラの身に纏っているドレスは自慢の金色の長い髪を主張させるようになのか黒い生地で仕立て上げられたものであり、スカート部分には大胆にも裾から切れ込みが入り、チラリと健康的な素足が見え隠れしていたりする。


 そして髪は後ろで三つ編みのように束ねられ、イザベルと同様に靴はハイヒールを履いているため、大人びた雰囲気をかもし出していた。


 普段着ているシスターの格好から、また違った格好をしているため、印象はだいぶ変わるが、それでも綺麗なことには変わりはない。


 とはいえ、綺麗な容姿と見えてしまうのは身内贔屓みうちびいきだからだろうか。


「ライラもちゃんと似合ってるから安心しろ」


「おぉ~...何だか改めて褒められると何だか恥ずかしいですね~...」


 そしてコウの言葉を聞いたライラも満足そうにしてはいるのだが、普段褒められ慣れていないせいか、頬に両手を添えて若干恥ずかしそうにしていた。


「じゃあ準備も出来たことだし行くか」


「そうですね」


「今日は楽しみますよ~!」


「キューイ!」


 そんなコウ達は側で待機していた馬車に乗り込むと、御者席が見える小窓から、いつぞや見た顔がこちらを覗くようにひょっこり現れた。


 その人物というのはレイニーウッドへ向かう際、御者として馬車を操作していた団員であり、全員がしっかり乗ったのを確認するため、小窓から覗き込んできたのだろう。


「今日もお願いしますね」


「団長任せて下さい!では皆さんお乗りのようなので出発致します!」


 全員が乗ったのを確認した団員はコウ達に出発の声を掛けると、ゆっくりと馬車はイザベラの屋敷に向けて走り出し、白薔薇騎士団の敷地内を抜け、月夜が照らす王都の街中を駆け抜けていくのであった...。



いつも見てくださってありがとうございます!


評価やブクマなどをしてくださると嬉しいですm(_ _)m


次回の更新は7月4日になりますのでよろしくお願いします。

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