第99話

 ローランから東の方角には大規模な渓谷があり、コウは前日ジールに頼まれた巨大の魔石を捜索していた。


 やはりこの渓谷にも巨大な魔石の影響で魔物が少ないのか探索していても、あまり魔物とは出会わない。

 

 この渓谷にはオーガやそれなりに強い魔物が多いとされていて、更に東の方角に行くと獣人の国がある。


「というかこんな広い場所を探索しても見つかるわけないだろ...」


 朝からコウはこの大規模な渓谷の谷底を探索しているのだが、一向に巨大な魔石が見つからないためか少しだけ文句が漏れる。


 多くの冒険者は散らばって南へ巨大な魔石を探しに言ったり、見つけたものを調査したりして忙しく人員が確保できてないのでしょうが無いのだ。


 とはいえ多少はこちらにも探索する冒険者を割かれているが、それでも人員は足りない。


 ゴツゴツした岩が周囲には散らばっていて足場は悪く歩きづらいが、暫く進むと大きな滝が姿を表した。


 滝の上空には多くの鳥のような魔物が飛んでおり、ずっと同じ場所をぐるぐると旋回していた。


 何の魔物だろうと見ていると一部、魔物が光の粒子に変わって滝の中に吸い込まれていくのが見えた。


「おっ!巨大な魔石が起こす現象だ!フェニは近くで待っててくれ!」


「キュイ!」


 あの巨大な魔石に近づくのはフェニにとってはあまりよろしくはないので一旦、近くの岩場に待っててもらうことにした。


 魔物が光の粒子に変わる現象など1つしか心当たりはなく、そこまで水は流れていない滝へギリギリまで近づくと滝の裏側に少しだけだが、巨大な魔石の一部分が見え隠れおり、ほんのりと光っている。


「やはりあったか。すぐにギルドへ戻って報告だな」


 くるりとその場から振り返りギルドに戻ろうとすると巨大な魔石は急に大きな光を放った。


 急に大きな光が後ろから放たれた為、なんだ?と思いコウは巨大な魔石の方向へ振り返るとそこには10体程の武器などを持っていないオークが急に現れ、近くの岩場で周りを見渡していた。


「何処からあのオーク達は現れた...?もしかしてあの巨大な魔石が魔物を生み出したのか?」


 急に現れたオーク達にコウは驚き何故、現れたのかを考えようとするがオーク達はコウに気づいたようでそれどころではなさそうだ。


 オーク達は真っ直ぐにコウの元へと足場の悪い岩場を軽快に走り出し向かってくるのでコウはフェニの待っている場所まで走り一気に下がる。


「悪いフェニ待たせたな!オークが来るから迎え撃つぞ!」


「キュイキューイ!」


 フェニは待ってましたと言わんばかりにコウの肩へと乗りバチバチと雷の球体をコウの真上に作り出しコウは


「ブモォォォォォォォ!」


 オーク達は逃げたコウに追いついたことにより、歓喜し鳴き声を上げながらこちらに向かってくるがフェニが準備していた魔法を先制攻撃と言わんばかりにオーク達へ放つ。


 バチバチと雷の球体は鳴りながら飛んでいくが数匹のオークは避けることに成功するのだが、上手く回避できなかったオークに当たると前よりも威力は上がっているのかバチン!と大きな音が鳴ると同時に当たったオークは黒焦げになり倒れる。


「ナイスだフェニ!」


 コウはフェニを褒めつつも迫ってくる2体のオークに向かってサンクチュアリを左右に振るい首を切り飛ばすと壊れた噴水のように血は溢れ出し、周囲の岩場はまるで塗装用のペンキを零したかのように岩場は赤色へと染まっていく。


 他のオーク達は仲間が殺されたのに憤怒したのか全員が一気に襲いかかってくる。


 コウでも流石にサンクチュアリでオーク達を纏めて断ち切ることは出来ないので、素直に後ろへと退くように下がり、氷槍を作り出してオークに向かって次々と放ち突き刺していく。


「こんなもんで終わりかな?」


 服をパッパと払いながら周囲を見渡すと既に襲ってくるオークはおらず、コウは倒したオークを回収していくと最初に襲ってきた数は10体程だったはずなのだが回収したオークの数は8体程だった。


 きっとやられた味方を見て何処かに逃げ出したのだろう。


「まぁいいか。それより早くこの事を報告しないとな」


 巨大な魔石の発見場所と魔物が生み出された事を早く報告するべくコウは岩場の上をジャンプしながら急いでギルドへと戻るのであった...。


 コウは無事にギルドへと戻り、サーラへと事情を説明したのちギルドマスターの部屋へと案内されていた。


「きたか。東の方角の探索はどうだった?」


「東の渓谷の奥にある滝で巨大な魔石を見つけたぞ」


「やはりあったか...」


 ジールは東の方角に巨大な魔石を見つけたという報告をコウから聞くと、あると思っていたのか特に驚きもしない。


 こうなると残りの南の方向にも同じ巨大な魔石があると思っていたほうが良いだろうか。


「あとはオークが10体ほど急に現れたな」


「コウよ...その話は聞きたくなかったぞ...」


 耳を手で塞ぎ聞いていないふりをジールはするがしっかりと耳にはコウの報告が入っている。


「そんなこと言ったってな。事実なんだからしょうが無いだろ」


「まぁそうなんだが...これから起こることをお前さんには伝えておくか」

 

 そしてコウはこれから起きることをジールから詳しく伝えられた。


 ギルドの倉庫には過去の文献があり、そこには今回の巨大な魔石について約100年ほど前にもあったらしく、詳しく記されていたそうだ。


 どうやら今回の巨大な魔石は魔物のスタンピードの前の現象で、コウが想像した通りあの巨大な魔石自体は卵らしく、周囲の魔物を吸収しより強力な魔物が生まれてくると記されていたとのことだ。


 そしてスタンピードの前には巨大な魔石から魔物が約7日前から生み出されそして最終日に巨大な魔石から魔物が生まれると書かれており、何故か全ての魔物がローランの街へと4方向から向かってくるそうだ。


 因みに巨大な魔石を破壊しようと試みたことがあるようだが、魔法で破壊しようとしても光の粒子に変わり、近くによると魔力が吸い取られ枯渇してしまうらしく全て失敗に終わっている。


 また何故、この様なことが起こるかはわからないようらしく数百年単位の間隔で起こっているらしい。


 もしかしたらローランの街の底に、何かしら魔物を寄せ付けるものがあるのだろうか。


 ジールから話を聞く限り、発見された日から予測をすると大体今日から約7日後にスタンピードが起こるということになる。


「まぁこれから7日後に向けて防衛の準備するしかあるまい...」


 こうして約7日後に起こる予定の魔物のスタンピードのことについてジールはローランの領主へと報告し、スタンピードに向けて防衛の準備をするのであった...。



ここまで見てくださってありがとうございます!


そしてブクマや星をくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m

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