第79話
オーガという多少のトラブルはあったが無事に2日目の夜も越え平和な旅が続きもう少しで聖都シュレアへ着くような距離となっていた。
時たま草原の中からホーンラビットなどが馬車の音や振動が気になり、顔を出すぐらいで周りの風景はずっと変わらない草原のままで飽きてくる。
ただこの2日間、野宿をしていると馬車の御者からは面白い話も聞けた。
例えばこの馬車を引いている馬のことだ。
この馬車を引いている馬はウォーターホースと言う魔物で水さえ定期的に飲めれば休憩などをしなくても走り続けることが出来き、ケアもいらないという便利な魔物だ。
また小さい頃から育てると人に懐くため、それなりに重宝されているらしい。
ただ問題としては小さい頃から育てるといってもかなり難しいらしく大体は通常の魔物のように人を襲うように育ってしまうのが問題と言っていた。
他にもアルトマード王国が現在、他国と戦争中だとか聖都シュレアはどちらにも手を貸さずに傍観しているだとか様々なことだ。
きっと色々な場所に行き人達を送っているため馬車に乗っている人達を飽きさせないように持っている話の引き出しは多いのだろう。
「そろそろ聖都シュレアに到着致します」
馬車には御者席が見えるような小窓があり、そこから御者が顔を覗かせ聖都シュレアへ到着する旨をコウ達へと伝えた。
馬車の外を見るとそこには王都ほどは広くなく、ローランよりは広い町並みが広がっており、建物の殆どは真っ白な外壁が目立つ。
まるでイタリアやギリシャのような風景だろうか。
「おぉ綺麗な町並みだな」
「そうでしょうとも~」
何故か自慢気にコウの街への感想に答え胸を張るライラ。
まぁクルツ村でもそうだったがライラは自分が住んでいる場所や住んでいた場所を褒められるのが嬉しいのだろう。
そうこうしているうちに既に聖都シュレアが目前まで迫っており、門の前に王都やローラン程ではないか人が列を成し並んでいた。
聖都と言われているのか並んでいる人も王都やローランでは見ないようなシスターや神父などの格好をしたものが多くいるのがわかる。
馬車がスピードを落としゆっくりと止まると御者席が見える小窓から「到着いたしました」と御者に声を掛けられた。
馬車のドアを開け外に出るとずっと座っていたためか身体を伸ばすといたる所からゴキゴキと音が鳴り、停滞していた血の流れがドクドクと体の中を巡りだす。
「さて...並ぶか」
コウとライラは街へ入るために少しだけ並んでいる門へと歩き出すのであった。
■
聖都シュレアとはこの大陸を作った神が丁度降り立った地とされており、数多くの崇拝者が住んでいる街である。
又、この街を収めているものは聖女とされているようで聖女になるには特殊な儀式があるらしくそれを通過し、更に審査された女性のみが聖女になれるらしい。
そしてこの街はただの聖都ではなく、観光にも力を入れているらしくコウにとっては軽い旅行でもあった。
「よし、やっと街に入れたな。後は荷物を渡すだけだ」
「キュイ!」
聖都と言われるような場所なので魔物と言われ排除される存在のフェニが街の中へ入れるかどうか心配ではあったが特に問題は無いらしく無事に入ることが出来た。
ただ一昔前までは人族至上主義であったためか魔物は忌み嫌われ、更に亜人も同じ様な扱いとなっていたらしいが今はそうでもない。
コウがこの聖都シュレアに訪れた目的はジールから渡された荷物を運ぶことであり、それさえ渡しさえすればこの聖都シュレアを観光した後、帰って報告するだけでCランクにめでたく昇格ということになる。
「もしよろしければ~中央区まで案内しましょうか~?」
どうやらライラがコウの荷物を運ぶ場所へと案内してくれるらしい。
初めて来た街なので迷わずに荷物を運ぶ場所へと行けるのはありがたいとコウは思うので「頼む」とライラにお願いをする。
「では~しゅっぱ~つ!」
ライラの白い陶器のような手がコウの手を取りそのまま白い街の中を歩き出す。
街の中は王都やローランでは見たこと無いような屋台があり、美味しそうな匂いが漂ってきて興味をそそられるが荷物さえ運んでしまえば後はのんびりと観光できるので我慢し荷物を運ぶことを優先とする。
又、観光としても力を入れているということなので宿屋や服、雑貨、観光限定品などを扱っている多くの店があるのが見えた。
暫くライラに手を引かれながら白い町の中を進んでいくと大きな広場に出た。
「到着です~!」
教会と聞いていたが目の前には大きな大聖堂が立っており、ここが目的の地だということがわかる。
ジールからしたら大聖堂と教会の些細な違いなどはどうでもよく一括りにして教会と言っていたのだろう。
周りにいる人の殆どはシスターの格好や神父のような格好をしており、冒険者の格好をしているコウは少し浮いているため場違いにも見えるだろうか。
といってもコウを奇異の目で見るものはいない。
「ライラありがとうな。あとは荷物を渡すだけだが...誰に渡せば良いんだろうか」
持っていく場所は聞いていたが誰に渡すかについてはジールに聞いていなかったのでコウはしまったなぁと少しだけ後悔をする。
「ん~でしたら~大聖堂の中にも受付があるので、そこに渡せばいいと思います~」
「あぁそっか別に荷物さえ渡せば誰でも良いのか」
ライラの言葉へ納得し、とりあえずコウは中心部にある大きな大聖堂の中に入っていくのであった...。
ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます