第33話 鰐竜

 小太朗の雷魔法、雅の火魔法を頼りに鰐竜…退治?じゃないよね、討伐?違うな。狩りに出る。素直に鰐竜狩りとは言えないが。


 試しに小太朗にパッチーーン!とやって貰ったら、流石は雷撃。水中には特効なのが良く分かった。後は相手の大きさによって……


 10mを超えて来るような大物では、本家雷神お父様の雷撃で一撃で倒せるらしい。ただ周囲の被害が激しいのと不毛だから互いにやめる方向に持って行くそうだ。


 そりゃそうだな。周辺の動植物を根絶やしにしてしまうだろう。

 しかし、どうやって止めるんだろう?

 相談するのかな?…花いちもんめですか?…相談しましょそうしましょ。


 それにその線引きも何処で決めるんだろう?行き成りじゃ分からないよな?

 う~ん。不思議がいっぱいだ。


 本来の目的の釣りから遠のいてしまったが、周囲の探索も含まれるから目的通りで良いのか?この鰐竜を何とかしないと湖の先には行けない様だから覚悟決めて行ってみようか!


 と言っても、ボートを浮かべて乗り込むのもへっぴり腰だし、陸から離れるのもおっかなビックリです。


 いきなり船外機使うのも何なので、先ずはオールで漕ぎ出しました。

 最初は俺が漕いで船首で小太郎が警戒している。

 船尾では雅が警戒しながらも楽しそうだ。

 水は澄んでて透明でかなり底の方まで見えるし、魚影も濃いから釣りは期待出来そうだけど、問題は鰐竜だけだな。


 このまま平和なら釣り道具を出して見ようと思った矢先に、右舷側に水が盛り上がったと思ったら鰐竜が飛び出してきた。


 5m位の鰐竜でザッッパァ~~~ンと水飛沫を上げて戻って行くが、俺の後ろでピカッと何か光ったと思ったらピッシャーーーンと雷撃が鰐竜を追って行く。

 と…鰐竜が浮いてきた。


「すっげ~~!!」


 しかし喜ぶ暇も無く、鰐竜の飛び出した波でボートは大揺れ。

 危うく投げ出されそうになった所を雅に助けられた。


「すまん雅。助かった。」


「主様、大丈夫ですわ。私がしっかりお支え致します。」


「あ、ああ。宜しく頼む。」

 気付けば雅も小太郎も揺れていないし濡れても居ない。

 俺なんか水飛沫で既にびしょびしょなのに。


「何でお前たちは濡れてないんだ?」


「主ぃ、それは除けたからですよ。」


「へっ?…マジか。」


「「はい。」」


 濡れてないのは水飛沫を除けたからで、揺れないのは腰で吸収するらしい。

 俺の転生アドバンテージはどこ行った?

 此奴らの方がよっぽどチートだぞ?


 ちょっとジェラシーな気分で居たが、小太郎の声で我に返った。

「主ぃ。鰐竜どうします?止め刺しますか?」


「あ~…この場合、どうするべきだ?食うには血抜きでもしながら係留して行くのか?」


「主様、このまま血抜きなんかしたらあっと言う間に骨になってしまいますわ。止め刺して周りに浮いてる魚を囮に離脱するするのが賢明ですね。」


 そうか。血の匂いでドンドン寄ってきて食べられちゃうんだな。

「止めはどうやるんだ?」


「食する様に止めを刺すで宜しいですね。」


「ああ、頼む。」


 雅が何か呟きながら手を上げて振り下ろした。

 光が走ったと思った直後に、浮いている鰐竜の口に光が吸い込まれボフッと音を立てて鰐竜が痙攣した。


「久太郎、お願い!」


「へいっ!」


 河童の久太郎達が浮かんできて、あっという間に鰐竜を岸に引っ張って行った。

 その様子をぽか~んと見てるだけだった。俺はその後、雅と小太郎に促されて我に返って岸に戻って来た。


 そこには、砂浜に穴を掘って血抜きされている鰐竜が居た。

 そのまま内臓を抜いて丁寧に皮が剝がされる。

 ピンク色の白身肉を見ながら、改めて異世界凄まじいなと考えていた。


 内臓肉は久太郎たちのご褒美としてあげたが、やはり心臓、肝臓が美味いし人気がある様だ。

 久太郎たちも鰐竜を狩るのか聞いたら、鰐竜VS河童では河童は餌にしかならないそうだ。水中での直接対決は厳しいらしい。


 それだけに今回の鰐竜内臓肉のご褒美は最高に嬉しいらしくて、あちこちの河童の集落から呼び集めて宴を開くのだと嬉しそうに語っていた。


 小太郎曰く、このサイズの鰐竜なら沢山居るし直ぐ狩れるので、丸ごとあげても惜しくないそうだ。

 そういう事ならと、レバ、ハツ、カシラ、ロース、ヒレ、バラなど主要な部位を食べ切れる分だけ残して、残りは久太郎にあげることにした。


 後で河童の族長たちが集まって挨拶に来るなど、この時点では想像していなかったが。

 この事から河童部族内での久太郎の地位は鰻上りで、発言権も大きくなりモテまくっているそうだ。


 鰐竜は砂浜でバーベキューで食べる事にする。

 これも久太郎たちを使って、小太郎と雅が采配していた。


 種族の格として、小太郎(犬神)>雅(九尾)>久太郎(河童)というのは絶対らしくて、命令されるのが当然でお願いされるなんて誉なんだそうだ。

 そう言えば九尾達は最初は高飛車な態度だったなぁと思い出す。


 その中で全てを統べる俺は生き神様扱いなんだとか……

「いやいや、風神、雷神様より上とか何の冗談よ。」


「主様はそういう立場なんですから、座って待ってて下さいね。」


 結局、砂浜で河童たちとのどんちゃん騒ぎになってしまった。

 鰐竜の肉だけでは足りない様だったので、肉と野菜を大量放出!

 きゅうりだけは久太郎が一人1本と公平に分けていたのが印象的だったね。


 鰐竜の肉は、非常に美味かった。

 鶏のような、マグロのような。でも生臭さは無く。

 これは何匹か狩っておいても良いかも知れない。

 漬けマグロの様に漬けておくのも美味しいだろうが、生でイケるかはまだ分からない。虫とか湧いたら嫌だしね。


 唐揚げや照り焼きも美味いだろうと、料理法は広がるね。

 明日からもう何匹か狩るのは決定しました。

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