第26話 服

 取り敢えず、雅の服を何とかしないとな。

 女性用の下着から選ぶが、何がどうなのかサッパリ分からん。


「おーい、雅。」


「は、はい!な、何で御座いましょう?ご主人様!」

 夜伽の事でテンパってた雅は、思考力が追い付かない。


「ちょっと入ってお出で。」


 ~~雅、心の声~~

 来た、来た~!!

 着いてイキナリなんて、つ、遂に雅も女になるんですね?

 あ‥‥でも、九尾様の後継者には‥‥

 こんな、いきなり決断を迫られるなんて‥‥


「雅?どうした?」


「は、はい!ただいま。」

 ちょっと様子を見ましょう。

 す~は~す~は~。


 意を決してハイエースに足を踏み入れる雅。

 中は意外と広く、ぼんやりと光る板が浮かんでいる。

 これはいったい?何?

 思いながらも冷静を装う。


「これを見てみ?雅の服を準備しようと思うんだが、女の子の服はサッパリ分からん。先ずは下着から自分で選んでみろ。」


「はっ??」


 雅は固まった。

 夜伽と思ったら、服を用意する?

 確かに服は人化用のこの1着だけだが‥‥


 光る板には色とりどりの小さな三角の布が表示されている。

「これは、いったい?」


「これは下着だな。どれが良い?」


「え、選んでも宜しいのですか?」


「ああ、選んでくれ。」


 雅は小さな▽ピンクを選んだ。

「そんな感じなのが良いか?」


「は、はい。カワイイかな?と。」


「よし、じゃあそこに真っ直ぐに立て。」

 コウ様は細い紐を身体に巻き付けて、何か書いています。

 あれは、紙ですか?

 紙なんて巻物しか見た事無いですよ。


「ひゃん!」

 胸に紐を巻かれて、変な声が出ちゃいました。

 さ、先っぽがウズウズします。

 嫌~。変な気分になっちゃいます~!


「良し。いいぞ。後は適当に選んでおくから、風神様のトコに行っててくれ。」


「はい‥‥」

 簡単にお役御免になってしまいました。

 さっきの胸に触れたカンジが、夜伽に期待を抱かせてくれます。

 ちょ、ちょっと楽しみになりました。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 雅の服選びにスリーサイズを測ってしまった。

 だってしょーが無いじゃん!選びようが無いんだもん!


 まぁ適当に、今の巫女服じゃ動きずらいだろうし、替えがあれば汚れても洗濯できるしな。パンツとブラも少し多めに買って、動きやすそうなスポーツブラってやつにしてみた。慣れたら自分で選ぶだろう。


 この行いが各方面に波紋を広げる事は、今は知らない。



 雅の服を持って風神様の所に行ってみる。


 雅はちゃんと挨拶出来たようだ。

 小太郎はお説教されたんだろう。シュンと小さくなっていた。


「おお!コウ様。お伺いしようと思ってたんです。ご足労頂きありがとうございます。」


 雷神様も少し丁寧な感じに変わった。風神様は何故かキラキラした目で見て来るんですが‥‥雷神様が怖いので、そんな目は止めて下さい。


「小太郎の話も雅の挨拶も終わりましたか?」


「「はい。」小太郎には、世の理をよく言い聞かせました。もうご無礼な真似は致しません。」

 風神様も雷神様も何故か人化していて、武蔵坊弁慶と小野小町?‥‥ヤバい!風神様めっちゃ綺麗です。


 そして小太郎は若武者といった偉丈夫。なんだろ?このイケメンぶりは。

「主様、出過ぎた真似、申し訳ありませんでした。」

 綺麗な土下座を見せてくれた。


「小太郎。」


「はい。」


「これからも宜しく頼むぞ。」


「はい。ありがとうございます。お任せください。」

 うん。この笑顔。俺が女子なら惚れるね。


「良し。この話はここまでだ。後は雅。ちゃんと挨拶できたか?」

 雅は風神様の後ろで綺麗に正座している。


「はい。こちらに置いて頂くに当たり、主様の事を聞いておりました。」


「そうか、雅は女の子だからな。風神様、申し訳ないですが色々聞いてやって下さい。」


「はい。畏まりました。」

 こちらもキレイな土下座を見せてくれる。

 三つ指立ててお辞儀する様は、老舗旅館の女将って雰囲気だな。


「後、雅はキツネ姿は見た事無いが、基本的に人型で暮らすんだろ?」


「はい。九尾様からもその様に仰せつかっておりますが、コウ様のご指示で在れば、どちらでも構いません。」


「うん。人型で良いよ。自分で楽な方で良いからな。それと、人型で暮らすなら服な。これをやるから、風呂入ったら着替えな。」

 さっきネットショップで買った服を渡した。

 下着からスウェットから普段着まで。一揃いだと結構な量になる。

 渡した瞬間、風神様の目がギラッと光ったのを俺は見ていなかった。


 その後は、狼たちはワーウルフとして人化して生活できるのか?とか、家を作って行きたいとか、雷神様たちの生活とかを改善して行こうとかの計画を話し合った。


 その場は、それで済んだのだが‥‥‥



 雅と風神様が風呂に入った後、洋服に驚愕したらしい!

 雅は風呂に入る時点でぶっ飛んでいたらしいが、雅が人型で居る以上、風神様も人型で合わせて一緒に風呂に入り、雅の着替えに風神様が振り切れた!!


 もう、その時の事は筆舌に尽くしがたい‥‥

 パンツとは!?‥‥

 ブラとは!?‥‥

 スウェットとは!?‥‥

 あのカワイイ普段着とは!?‥‥


 攻め立てられて風神様の分も準備する事を約束してしまった俺は悪くない‥‥

 だって余りにも鬼気迫る迫力で迫って来るんだもん。


 もう、ワーウルフは戦闘云々ではなく、風神様を切っ掛けに女性たちは全員人化をする様になった。

 そうなると、人化を出来ない♂男は♀女に相手にされない‥‥

 そりゃ、必死になりますわ!!


 つか、普通の狼さんは居なかったの?

 異世界恐るべし!






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