第39話 我が魔王
目を覚ますとアストがいた。
「起きたか。ちょうどディアナさんたちが来てくれてなんとか持ち堪えたぞ」
わたしは起き上がって辺りを見回すとこの街の冒険者だけでなく、ディアナとクルミさんが戦闘に加勢していた。
どうやらあの二人が護衛していた街では戦闘が終わったみたいだ。
「でも、このままだと……」
ディアナたちも体力を消耗しているようで、だいぶ疲れが目立っている。おそらくディアナの魔力ももうすぐ尽きるだろう。
「わたしはいいから行って」
「そんなことさせるわけねーだろ? お前も俺様の領民だ。お前は俺様が絶対に守ってやる」
「……っ!」
その時、わたしは胸が締め付けられるような感じになった。
アストは近寄ってくる魔物を斬り倒す。彼もチートというわけではないが、普通に強い。
領主の息子というのはここまで強いものだったんだ……というかすごいカッコいい━━━━
「ありがと……っ!?」
そしていつの間にかわたしの後ろに立っていたオークがわたしに金棒を振り下ろす。
わたしは咄嗟に避けようとしたが、金棒を振り下ろす速度の方が速かった。
「ぐにゃあぁぁぁぁあああ!!!!!」
「フェノンフェリナス!!?」
凄まじい激痛が走る。激痛のする方を見るとオークの金棒に右足が潰れされていた。
痛い……! 痛い! 痛い!!
そしてオークは振り下ろした金棒を持ち上げた。
わたしはあまりの痛みに座って動けず、今度逃がすまいとはオークがその金棒でわたしを潰そうとした。
『まったく、無茶をしてくれる……』
その時、空から聞こえたセリフと同時に辺りにいた全ての魔物が一瞬にして焼き払われた。
そして、わたしの目の前に1人の男が現れた。
「アイツは……
その場にいたクラスメイトたちが驚いた。
そして魔王はわたしに近寄って足の状態を確認する。
「……後遺症が残るだろうが、使えないよりかはマシだろ。落ちついて足を伸ばせ」
わたしは両足を伸ばそうとするけど、潰れてしまった右足は動かせなかった。
すると魔王はわたしの右足を持って真っ直ぐに伸ばす。
「『オーバー・ザ・リカバリー』」
わたしの右足は丸で何事も無かったかのように再生していく。
さすがはお母様の元パーティーメンバー……そしてわたしの本当の━━━━━━
『フェノン、一度しか言わないからよく聞いて?
「おとうさま……」
「そこまで知ってたか。ほら、立てるか?」
わたしはお父様の手を取って立ち上がろうとするとあまり右足に力が入らず、倒れそうになる。
「大丈夫か? 後遺症で膝に力が入りにくいだろ。無茶するな」
「フェノンフェリナス、掴まれ」
アストがわたしに自分の腕を貸してくれた。
わたしはアストの右腕にしがみつく感じで立ち上がった。
「……嫁入り前の娘を見てる感じがするな」
「にゃっ!?」
お父様に言われて一気に顔が赤くなった。
冷静に考えれば年が離れた兄妹ぐらいの感覚のはずなのだが、お父様がそれをイタズラで言ったのかはわからない。
何故なら今のお父様はとてもセンスの良い仮面をつけているから。
もしもわたしの精神があの
「娘との会話を邪魔するな!」
お父様は近寄ってきた魔物だけでなく、山や空間の亀裂まで全てを一瞬で消し去った。
「「「…………」」」
わたしたちはお父様のあまりの不条理さに絶句した。
「フェノン、もうすぐアルカデア王国に来るのだろ? なら王城に来い。全員まとめて泊めてやる」
「おとうさま……」
そしてお父様が立ち去ろうと、後ろを振り返ると、お父様はそこにあったはずの山が消滅しているのに気がついた。
「……あっ」
そしてその山があった場所は更地になり、近くにあった街も魔物たちの襲撃によって少なからずダメージを受けた。
特にこの街は被害者こそ居ないものの、建物の損壊が激しく、残っている建物の方が少ない状況だった。
「アーヤベー、ココニナニガアッタカオボエテナイナー。ナニガアッタッケ? オモイダセナイナー」
お父様が1人でカタコトになりながら呟いた。
わたしはそのお父様の意図を汲み取り、会話をする。
「マオウサマ、ソコニハトテモオオキクテウツクシイマチガアリマシタヨ。ワタシタチノスムイエガキエチャッタ。アーザンネンダナー」
わたしがカタコトでそう答えるとお父様は何か魔法を使った。
するとその何もなかった更地には1つの街が出来上がり、そこには綺麗な学園の校舎やたくさんの新しい家、1つの大きな屋敷などがあった。
「ワルカッタナメイワクヲカケタヨウデ」
「アリガトウゴザイマスマオウサマ」
凄いカタコトでくさい芝居を済ませるとお父様は空を飛んで何処かに飛びさってしまった。
そしてその新しく出来た街についての取り決めが領主によって行われた。
魔法学園は新しく出来た街の方に移動となり、領主も街にある大きな屋敷へと移動した。
他には損壊が激しかった街の人たちを優先的に住まわせることになったのだが、思いの外街が大きく、他の街の人たちも全員住めてしまった。
1つ1つの土地の大きさは所有者の職業によって決められた。なので農家の人たちにも支障はなかった。
教会は新しい街にもあったのだが、銅像がなかったので、古い街から新しい街にお引っ越しとなった。
こうしてルーズベルト領の新しい街への大移動が行われたのだった。
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