感覚
ユッキーと付き合ってから不思議な感覚があるんだ。なんかわかってしまうって感じて言えば良いかなぁ。誰でもそんな気がすることがあるけど、これが不思議に当たるってところ。ちょっと気色が悪いぐらい。
ユッキーの死もそうなんだ。わかってしまったんだ。そりゃ猛烈に悲しかったけど、同時に素直に受け入れてしまうって感覚ってわかるかなぁ。もちろん今でもショックは強烈に残ってるけど、どん底に落ち込んで救いようのない状態とはちょっと違う感じ。たとえれば、みいちゃんに捨てられた時とは全然違う。
みいちゃんと言えば、あの失恋は強烈で十年以上引っ張っていたけど、ユッキーと付き合ってから綺麗に澱みが洗い流された気がするんだ。
シオに呼び出された時もわかってた。シオがどれだけ辛い気持ちで来てたのもかもわかっちゃったんだ。そりゃ、実際に口に出すのは辛くて、悲しくてしょうがなくて、ユッキーの死を口にした後は茫然としてしまい、シオには悪かったけど黙って出て行ってしまっちゃったけど。
だって仕方ないやん。あそこで思い出話に花を咲かせる気分になるには無理があり過ぎたってところなんだ。まだまだそこに至るまでは時間がかかると思うわ。でもユッキーを失ったのは致命傷でない気だけはどこかでするんだ。
ユッキーの夢も見た。そこには可愛いユッキーも出て来たけど、なんとあのユッキー様も出て来たんだ。懐かしくて夢の中でも泣いた気がするぐらい。さすがに氷姫は出て来なかった。夢に出てくるユッキーは優しいんだ。ユッキー様だって優しいんだ。で言うんだよ
「ユッキーはカズ坊の可愛い奥様、心の中に永遠に住み続ける素敵な奥様」
そしてね、
「ユッキーはカズ坊の心の中で奥様してるから、ちゃんと次の奥様を迎えなさい」
つづいてユッキー様が、
「これは私の命令だからね。聞かないと市中引き回しの上、磔獄門」
ふと見ると可愛いユッキーが
「そういうことだからよろしく」
こういう夢を毎晩のように見てしまうんだ。思わずさぁ
「それでエエのか」
こう心の中で聞いちゃうんだけど。ユッキー様が
「心配せんでエエで、ちゃんとこのユッキー様がばっちり用意してるから安心し。選り取り見取り品質保証付やからやから、楽しみにしとき」
ユッキーを思う気持ちは誰にも負けないつもりだし、もうユッキー以外の女と恋などするはずもなかったのに、なんだか癒されてしまい、ふらふらっと次の相手を探したい気分にさせられてしまうんだ。最後は
「カズ坊を想ってくれる女をこれ以上泣かせたらあかんよ。私もちゃんとカズ坊の中で奥さんしてるから、心配せんでもだいじょうぶ」
ユッキー、ユッキー、ユッキー、ほんまにエエのか。カズ坊が他の女を抱いてもエエのか。ユッキーはそれでも幸せなのかって心の中で叫んだら目覚めちゃうんだ。その目覚める前にこれ以上はないっていう可愛いユッキーの満足そうな笑顔を残しながら。
まだまだ時間がかかると思うけど、あの耐えきれないと思った衝撃による大きな傷が少しずつ癒されていく感じが続いています。
もしかしてユッキーは癒されるまで夢の中で頑張るつもりなのかもしれません。なんてイイ女なんだ、どうして逝っちゃったんだ。夢の中じゃなくて、この現実の世界でもっとユッキーと一緒にいたかった。聞いてるよな、心の中の可愛いユッキー。なぜか『聞いてるよ』ってユッキーが微笑んでいるのを感じます。
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