反帝国組織MM⑥いつかあの空に還る日に~最後のレプリカントが戦いの末に眠るまで

江戸川ばた散歩

プロローグ

「やあ久しぶりだね」


 彼は、何となく楽しそうな口調で目の前の相手にそう言った。


「君にまた会えるなんて、思ってもみなかった」


 目の前の相手は、何も言わずゆっくりと近づくと、かがみ込み、倒れている相手の大きな目をのぞき込む。黒い長い髪が、地面に落ちるのも構わない。

 黙っている相手は、それでもその物腰だけで雄弁だった。首を横に振る。もうそれ以上喋るな、と目は訴えかけている。


「言わせてくれないか? どうせ放っておいても、もうじきそんなことはできなくなるんだ」


 目の前の相手は、力無く地面に落ちた彼の手を取る。その白い手が、みるみるうちに赤く染まった。彼はその様子を妙に冷静に見ている自分に気付いていた。


「今からでも間に合う」

「やめてくれ、判っているだろう?」


 相手の黒髪がざらりと揺れた。


「それが俺の望みだって」

「そうだ。お前はそう言っていた。全てかゼロか。それ以外は要らないと」

「よく覚えていたよね。俺はうれしいよ。それに最後に会うのが君ですごくうれしい。最高の天使が迎えに来たのかと思ったよ」

「だがお前は言っていた」

「俺が何を言っていた?」

「自分を迎えにくるのは黒い魔物だと」

「そうだよ」


 彼は端正な顔に、物騒な程に穏やかな笑みを浮かべた。


「ずっと待っていたんだ。長い間、俺は、ずっと。誰よりも、会いたくて仕方のなかった奴だもの。俺もいい加減馬鹿だよね。ずっと近くに居たのに、全然気付かなかった」

「居たのか?」

「ずっとそばに」


 そう言うと彼は軽く目を伏せた。


「頼みがあるんだ。昔なじみのよしみで聞いてくれないか?」

「何だ」

「それは……」

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