閑話【価値】

「君に根負けしたこちらも悪いとは思っているよ

まさか君の選んだ娘が如何しようも無い娘だとは知らなかったから」

「それは違います父上」


ヒューゲルの言葉に反論するラッパ。


「彼女は努力を惜しみません」

「だから?」

「彼女には武術の才能が有ります、 事実私のシールドに素手で罅を入れました」

「ふーん、 だが君が彼女の価値を貶める事を言っているのを何度も聞いた事が有るが?」

「あれは彼女が取られない様にする為の物です」

「そうか、 でも彼女は如何しようも無い娘だよ」

「何故ですか?」

「君がそう言ったからさ」


ヒューゲルがラッパを指差す。


「どういう事ですか?」

「ショウ家の跡取りが価値を貶めている

その時点で実態がどうあれ無価値なんだ」

「何でそうなるのですか?」

「だから、 ショウ家の跡取りが価値を貶めている

その時点で実態がどうあれ無価値なんだ

上がそう言っているのだからそうなんだよ」

「・・・・・」


この身分を絶対視しているこの考え方が如何にかならないか頭を抱えるラッパ。


「そもそもモルガナと言う娘にも問題が有ると思うよ」

「どういう事ですか? 確かに私に攻撃をしたのは

彼女の問題です、 ですがきっと錯乱しているからでしょう」

「そうじゃない、 君が無価値だと言っているのならば

モルガナは無価値になろうと努力しなければならない、 そうだろう?」

「・・・言っている事の意味が分かりかねます」

「大公家の跡取りが無価値だと言っているのだから

そうならなくてはならない、 そうだろう?」

「それは違うと思います」

「いやいや、 モルガナを取られない様にする為だろう?

だとしたら『君を守る為に君を貶めているのだから協力しろ』と

君はモルガナに言わなかったのかい?」

「・・・いえ、 『君は無価値だ』そういう類の言葉はかけた覚えが有ります」

「あぁ・・・だとしたら価値を作ろうと無意味な努力をしたのかもしれないね

君に釣り合う女性になる為に・・・」

「・・・・・」


そうだったのか、 とラッパは放心する。


「確かにそれは得心しました、 何故鍛えるのか、 長年の謎でしたが

やっとはっきりしました、 それならば私を攻撃して来たのも

私に見合う女になれたという事の証明だったのですね」

「そう言う事だ」

「ラッパちゃんを攻撃するなんて

頭の可笑しい子だと思ったけどそういう理由が有ったなんて・・・」


クララも納得した。

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