第11話 これが魔王のレベ上げだ?1


 あぁ、やっと始められる

 目の前に広がる草原

 青い空に澄んだ空気

 無邪気に遊ぶ小動物型モンスター

 プルプル震える青いやつ


 やはり最初の冒険といえばこれが王道だろう……


 しかし視力が回復して飛び込んできた景色は、

 なんというか、紫の森だった。

 一面に溢れる紫

 葉っぱの色は紫

 幹の色も紫

 土の色も紫

 なんなら空だって紫だ。

 もはや空気すら紫に見える。


「何?この毒モンスター大好きそうな森は」


 俺はさっきまで笑い合っていた緑の妖精に問い詰める。


「ここは今現在1番高難度のダンジョンだよー

まだ誰も見つけてないんじゃないかな!」


 別に褒めたわけじゃない。

 学は相変わらずのドヤ顔で説明する。


「仕方ないんです

裕二さんの為だけに特別な場所は用意出来ないので、プレイヤーと同じ条件、同じフィールドで、同じ事をして

レベルアップして貰うしか無いんです」


その為には見つかりにくいダンジョンや

高難度すぎて誰も挑めないダンジョンしか選択出来なかったんです



 何故か目が赤くなっている遠藤さんが口を尖らせながら教えてくれた。


「確かに、魔王がプレイヤーと一緒にレベルアップは無理があるか」


 しかし魔王とはいえレベル1の俺が高難度のモンスターを倒せるものなのか……


「いいね!それー」


 俺と学が同時に声を出す。

 今こいつなんて言った?

 恐ろしく嫌な予感がする。


 ニヤニヤしている学は目の前を指差して俺に伝える。


「さぁ、魔王裕くん、初戦闘だよ!」


 すぐに前を確認する。

 そこには王道中の王道モンスター、

 一匹のスライムが跳ねていた。

 紫のスライムの上にはポイズンスライム21とその下に緑のバーがある。


 恐らくHPを表して居るんだろう。

 そして驚くべきはそのレベル、

 最初に軽く倒されてプレイヤーのテンションを上げるのがあいつらの役目だというのに……

 まさかの21だ



「紫でなければ最高なんだが

なんならもう毒を持ってるの確定してんだろ

レベル無駄に高いし

とりあえずあいつの上にある緑のなくせばOKか?」


 それでも楽しみになってきた俺は早く戦闘したいと2人を急かす。


「とりあえず勝ってみてー

魔法は技名叫べば出るよ!後プレイヤーのHPは最初は50固定で後はレベルアップ毎に勝手に増えていくから


あ、ちなみに裕くん専用に武器プレゼントしといたからアイコンから装備して使ってみてねー」


「えっ、うわっ、それだけですか?」


 学はそう言うと遠藤さんを無理矢理連れて空に飛び立つ

 高みの見物ってやつか。


 わかってるじゃないか

 俺はこっちの方が断然やる気出るぜ


「大丈夫だよ、昔から裕くんはピンチの時の方が楽しそうなんだ」


 期待に染まった瞳を下にいる魔王に向けながら近くにいる金髪の妖精すら聴き取れない声で緑の妖精が小さく呟く。

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