第49話 帰り道1

 苦労して捕まえた男も、尋問してみると水上先生の事件とは無関係だと分かった。とりあえず駅員に引き渡した後、僕らは帰ることに……


「それじゃあ神森さん、社君、明日は部室に集合という事でいいわね?」


 六星先輩は僕達と明日の打ち合わせを済ませた後、他の二人が待っているバス停に行きかけた。


「あ! そうそう大切な事を忘れていた」


 不意に立ち止まって僕たちの方へやって来てクリアファイルを差し出した。中に入っているのは入部届け。


「二人とも、明日部室に来るときは、これに記名して持ってくるのよ」

「「しません!」」


 まったくしつこい

  

 先輩たちや美樹本さんと分かれた後、バイクを押しながら歩く樒の横を僕とミクちゃんが歩いていた。


 歩きながらミクちゃんに、式神も眠るのか? と聞いてみると……


「優樹君。式神は眠っていたわけじゃないの。ただ、あたしのコントロールが途絶えたので一時的に動かなくなっていただけ」


 そういう事だったのか。


「もう痴漢は出ないだろうと思って、あたしも油断していたのよね。とにかく、もうミッションも終了したから、二人で優樹君を迎えに行こうという事になって樒ちゃんのバイクに二人乗りしてきたの。そしたら、バイクの二人乗りってすごく怖くて、集中力が途切れちゃって、それで式神が止まっちゃったの」

「なるほど。だけど、無理に迎えに来なくてもよかったのにな。一人で帰れるのに」


 不意に樒が振り返った。なんだ?


「優樹。あんたその格好で、人気のない暗い夜道を一人で帰るつもり?」


 え?


「優樹君。そんな可愛い格好で夜道を歩いていたら、変な人がやってくるよ」


 そうだった! 女装したままだった。


「どっかで、着替えられないかな?」

「ええ!? もう着替えちゃうの」「もったいない」


 君たち……楽しんでいないか?


 その時、一台の車が近づいて来て僕たちの横に止まった。


 ミクちゃんを迎えに来た家族の車だ。


「じゃあ、樒ちゃん、優樹君、また明日ね」


 ミクちゃんを乗せて去っていく車に僕と樒は手をふって見送った。

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