第15話白雪姫
「鏡よ鏡世界で一番美しいのは誰だい」
よく聞き慣れたお約束のフレーズから始まった。
高校生にもなれば白雪姫の童話の内容を知ってる人がほとんどなのだが、なぜこんなにも人が集まるのだろうか。
多分その答えは多岐に渡る。
友達が演者として出ていたり。白雪姫というよりは演劇そのものに興味があるか。
前者でも、後者でもまたは、それ以外でもやはり見に来てくれるというのは嬉しいのだろう。
ステージ上の人達の表情も緊張という硬さの中にうれしさが滲み出ているようだ。
隣にいる璃久は静かに真理愛の事を応援している。
ある意味当然ではあるけど、応援してくれるってのはつくづく元気出るしな。
璃久はそこまで考えて応援しているとも思えないし、ただ真理愛にぞっこんなだけだとは思っているが......
ステージ上に目を戻すと、イノシシの肺臓と肝臓を白雪姫のものだと思い込み食べているというシーンだ。
そして王妃は再度鏡に問いかける。
「鏡よ鏡世界で一番美しいのは誰だい?」
鏡は白雪姫だと答える。
皮肉なものだなと思う。美醜にこだわりを持つことに関しては悪いことだとは思わないが、それに囚われてしまっているのだから。
所詮、ファンタジーの中の話だ。
大衆向けの話だ。
俺が思っている事は、多くのリアリストが生む無数のうちの一つでしかない。
自分の中のくだらない戯言から意識を離して、ステージを見る。
もう、クライマックスのシーンだ。
そして幕は閉じ、キャストが挨拶しに来て終わりだ。
問題は何一つなく、演技もいいものだったと言えるだろう。
皆、顔には笑みを浮かべてよかったねと話している。
教室に着くなりお昼の十二時を告げるチャイムがなる。璃久と真理愛に誘われてお昼ご飯を桜も加えた四人で食べることになった。
「真理愛、とっても可愛かったよ!」
「やっぱり、俺の真理愛の演技は格別だったなぁ〜」
「りっくん、嬉しいけど、恥ずかしいからやめて。桜もありがと」
教室で俺の真理愛とか言っちゃうあたりバカップルだなと思ってしまう。
俺と桜はそんな熱いところを昼食中ずっと見せつけられて、少し胸焼けしていた。
「はぁ、あいつら今熱すぎて、冷める。なんて事はないだろうけど少し温度落ちた時大変そうだな」
「そうだね、ちょっとあれは見てる方が恥ずかしいよね」
そう言って桜はご飯を口に入れて、頬張っている。
ちょっと膨らんでるのが面白くてつついてみると、桜は箸を持った手で俺の手首を掴みもう片方の手で俺の頬を引っ張って来た。
「
「もう、次やったらこの後、私と一緒に回ることになるからね」
「別に触らないけど、一緒に行こうよ」
桜は飲んだお茶を器官に詰まらせたのが咳き込んでいる。
「いいの?」
俺はそのまま首を縦に振った。
桜は、何かを思案しているようでハッとしている。
「その、颯くん、一緒に行くならほっぺさわる?」
「いや、大丈夫だけど」
すると桜はムスッとした表情を浮かべるなり、俺の手首をもって自分の頬に無理やり持っていった。
触れた感触か、気持ちよかったので、つついたり、軽く引っ張ったりしてみる。
すると桜の頬は段々と熱を持ち始めて明らかに触り始めた時よりかは熱くなっている。
俺はそれでも懲りずにこねくり回していると、「ご飯食べ終わってないから」という理由と共に少し楽しかった時間が終わりを告げた。
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