第15話二人の思い出
「いつも三玖がお世話になっております」
三玖がお風呂に入っている間俺は彼女の母と話をしていた。
「いえいえ、こちらこそお世話になってます」
そんな社交辞令のような言葉から入って後は颯は相槌を打っているだけの状態になっている。その内容は多岐に渡り、彼女の学校での事だったり、家での事だったりして自分が知らないことなんてたくさんあるんだなと改めて思った。
「三玖は今年受験生だし息抜き出来るのも夏までだから付き合ってあげてね」
「喜んで、付き合いますよ」
「後輩さんなのに頼もしいわね」
ちょうど話が終わったタイミングで三玖がお風呂から出てきた。
「私はそろそろ寝ようかしらね、二人も夜遅くならないようにね」
まるで置き土産かのように爆弾を投下していった彼女だった。
三玖も意識してしまったかのように顔を赤らめて風呂上がりの艶かしいオーラを全開に出していた。
三玖は普段から髪を結んでいる訳ではないが今は髪がまだ少し濡れているからか大人っぽい雰囲気がただただ美しく感じた。しかも彼女が今着ているのはネグリジェだ。胸元は空いていないが生地が薄いので起伏がハッキリしていて俺は視線を下げざるを得なくなっていた。
そんな中痺れを切らしたように三玖が喋り始めた。
「は......颯くんこれどうかな?」
三玖は椅子から立ち上がってそのネグリジェに対する感想を求めてくる。
「はい......その綺麗で、可愛いと思います......」
「ありがとっ」
そうするとまた二人の間に沈黙が生まれる。
三玖はさっきよりも上機嫌になったようで笑顔になっている。
「じゃあ、私の部屋いこっか」
「え、俺が寝るとこって、もしかして......」
「ん?私の部屋だけど」
「いや、さすがに年頃の男女が同じ部屋で寝るのは......」
「私がいいって行ってるんだからいーの」
俺はされるがままになって彼女の部屋に連れていかれた。
三玖の部屋は薄紫色で統一されていた。
そんな中俺は机に立てかけてあった彼女の写真に目を奪われていた。
「どう?私のちっちゃい頃」
「はい、とっても可愛いですね。まるで天使みたい」
俺がじっくりその写真を見ていると三玖はその写真を取り上げてきた。
「もうダメっ!恥ずかしいよ!」
俺がえーと不満そうな声を上げても三玖がその写真を返してくれそうな雰囲気はなく、だんだん話はお互いの幼少期の頃の話に写っていった。
「颯くんって小さい頃なにかやってたの?」
「小学生から中学まではバスケをしていましたよ、小学生の時は水泳もやってましたね」
「へぇ〜でも高校じゃ何もやってないんでしょ」
「バスケで県の選抜入ったんですけどね。推薦もいろんな所から来ましたけどお金をかけたくなかったんで公立に来たんですよ」
「へぇ〜県選抜って凄いねそれがいまじゃモデルかぁ〜人生何があるかわかんないね〜」
「三玖さんは小さい頃何かしてたんですか?」
「特になかったけど一年間水泳をしてたくらいかな〜中学の頃は陸上部に入ってたんだよ〜颯くんに比べたら大した成績も残せなかったけどね」
すると三玖があくびをして眠そうな目をしていた。
「三玖、目がとろーんとしてるよ」
「だってぇ〜眠いんだもん仕方ないじゃん」
「そうですね、俺も眠くなって来ちゃいました」
「敬語とタメ語の使い分けやめいっ!」
「さん付けしないと違和感ありすぎてタメ語になっちゃうんですよね」
「全部タメ語でいいのに。私がいじめてる同級生みたいじゃない」
「分かったよ。頑張ってみるって」
「よろしい。それじゃ寝よっか」
そうして三玖は布団に入るとまるで入ってとでも言うかのように布団の角を持ち上げている。
「三玖......俺はここで寝るから......」
「風邪引くのでダメです〜私だって恥ずかしいんだから早く入ってよ......」
三玖の照れるような表情を向けられ俺はあっさり陥落してしまった。
「それじゃ電気消すねおやすみ」
「おやすみなさい」
颯の夜は長くなりそうだった。
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