#4 【初配信】初めまして、黒猫 燦にゃ【あるてま】

【初配信】初めまして、黒猫 燦にゃ【あるてま】

 14,158 人が視聴中:黒猫 燦 チャンネル登録者数 4,863人


:初めまして(2回目)

:デビュー二回行動とはたまげたなぁ…

:今回も新人濃かったな

:トップのおかげで後続が緊張せずに行けたみたいだしベストな人選だったのでは?

:この子は伸びる

:↑むしろ沈みそうなんですけど


「はい、こんばんにゃー!」


:こんばんにゃー

:こんばんにゃー

:まだかわいい


「初めましてにゃー、あるてま所属の新人バーチャルユーチューバー、黒猫 燦だにゃー!!」


:にゃーにゃー

:猫被るな

:まとめと切り抜き上がってたぞ


「は!? もう切り抜きされてんの!? あっ」


:化けの皮早速剥がれてて草

:ポン子

:黒猫さんは化け猫だったかぁ…


 っぁああああ゛あ゛!!!

 折角何事もなかったかのように振る舞えばデビュー配信を仕切り直せると思ったのに!

 コメント欄には「草」「ヤバい」「期待不安の新人」といった文字が次々と流れていく。

 こんなはずじゃなかったのに、どうしてこうなった!?


 とはいえ、いつまでも失敗に心を乱している訳にもいかない。

 あの配信の後、マネージャーさんには散々怒られて泣きのもう一回を用意して貰えたのだ。

 この配信だけは何があっても強制終了、炎上する訳にはいかない。


「すぅーはぁー、はい」


:はい

:はい

:こっから本編


「まずは謝罪させてください。先ほどは配信を途中で終了してしまい、大変申し訳ありませんでした。2期生のデビュー一番手にも関わらず勝手な行動で色んな人に迷惑を掛けたこと反省しています」


:ええんやで

:謝れて偉い

:俺らもいじりすぎたから反省

:ごめんなさい


「と、いうわけで! 暗い空気はそこそこに自己紹介をしていきます!にゃ!」


 と言っても事前に用意した自己紹介文は事故紹介により流出してしまった。

 流石のわたしも馬鹿正直に同じ文章を読み上げるほどの胆力は備わっていない。


「余計なことは省略するにゃ。詳しいプロフィールは公式サイトを見るか切り抜きでも見やがるにゃ」


:自己紹介は切り抜き見ろとか言うライバー初めて見た

:つよい


「諸事情により時間が少ないので巻きでいきます。では、こちらをご覧くださいにゃ!」


【タグとか色々】

 配信タグ:#黒猫さんの時間

 イラストタグ:#黒猫さんが通る

 センシティブ:#黒猫さんが避ける

 ファンネーム:#ご主人


「本当は配信内で決めたかったんだけど、時間の都合上マシュマロで募集した中から独断と偏見で決めました、にゃ」


 黒猫燦名義で作ったツイッターアカウントで事前に公式タグや質問などは募集していた。

 中には悪ふざけみたいな名前もあって放送内で候補として晒し上……取り上げようかと思っていたのだが、本当に時間がないので候補の中から無難そうなものを選出した。

 まあ時間がないのも全て身から出た錆なのだが。


 取り敢えず、視聴者の反応は悪くなさそうだった。

 特にファンネームのご主人というのが気に入ったようで頻りにコメントではご主人の文字が目につく。

 しかしこのにゃーにゃー言うキャラ設定、猫耳が生えているからって安直すぎるんじゃないだろうか。

 それに語尾に「にゃ」と付けるのは地味に面倒だ。

 バーチャルユーチューバーはリアルとバーチャルの融合によって生み出された全く新たなキャラクターであるから、設定が存在していて基本的にそれに準基するのは分かるのだが、慣れないキャラを貫くというのは素人にはやはり難しい。というかストレスが溜まる。


「あと10分ぐらいしかないしマシュマロに来てた質問何個か返そうとおもーます」


:だんだん適当になってて草

:また運営から怒られるぞ

:媚びない孤高の猫、それが黒猫燦


「はいまず1件目! 『はじめまして、2期生の配信今か今かと待ち遠しくて夜も8時間しか寝れません。黒猫さんは見た目がとても好きなんですが、配信はどういったことをしていく予定でしょうか、病気の妹が安心して逝けるように教えて下さい』、と。うんまずね、病気の妹勝手に殺すな! ネタでも不謹慎だぞ!」


:不謹慎厨湧いちゃ

:あーあまた炎上

:やっちまったなぁ〜

:最速で炎上していく女


「は!? 私悪くないが!? いやマシュマロ選んだの私だけども!」


 どーしても投稿者に一言言ってやりたかったから……。


「と、とりあえずね。配信はしばらくは手探りで色々やっていこうかなって思ってます。ゲーム配信もやりたいけど機材が揃ってないし、しばらくは雑談メインだと思うよ」


:雑談大丈夫?

:すぐ炎上しそう

:不安しかない

:隣に運営置いたほうが良くない?


「私の印象最悪か! 別に雑談ぐらいできますー。コミュ障でも相手の顔が見えなかったら普通に会話できますー」


:黒猫さんがコミュ障?

:(本当の)初配信は結構アガってたからね

:あーコミュ障特有の空気読めずに炎上するパターン……

 

 たとえリアルでコミュ障だったとしても、ネット上ならそこまで気負うことはない。

 まあ、それは相手が顔の見えない、且つ喋らないチャット前提なんですけどね……。

 あぁ、同期と初めて通話をした時の記憶が…うっ……。


「き、気を取り直して次行きましょう。『黒猫さんこんばんわー。私は女性のスリーサイズ図鑑を執筆している紳士ですが良ければ黒猫さんのスリーサイズも教えていただけませんか?低身長の貧乳はなかなか需要が高いと思います』……って誰がツルペタロリじゃい! 投稿したやつ名乗り出ろ! ぼいんぼいんやぞ!」


:晒し上げやんけ!

:地が出てるぞ

:ぼいんぼいん(笑)

:スリーサイズ紳士ニキ最近よー見るな


 本当なんです! 本当にぼいんぼいんなんです! 2.3ヶ月毎にブラジャー買い替えてるぐらいぼいんぼいんのばるんばるんなんです!! 信じてつかぁさい!

 しかし画面に表示されるわたしのアバターは悲しいほどにその胸は絶壁であった。

 ブレザーを着用していることを差っ引いても着痩せするタイプと言い張るには無理があるほど、そこには夢がなかった。

 世は無情。


「えー、スリーサイズは上から91、56、84です!!!」


:え

:ゑ

:エッ

:サバ読みすぎィ!


「はー? 本当だが? 本当にボインボインだが? 脱いだら凄いんだが?? かぁ〜脱げないのが残念だわ! 脱ぐと運営が怒るからね!」


:新衣装は薄着でオナシャス!

:水着はよ

:しかしこの女、もはや猫をかぶる気すらない


「はいはいはいはい! 次ラストね! 『はじめまして燦ちゃん初配信楽しみに待ってます。早速質問ですが、燦ちゃんがバーチャルユーチューバーを目指そうと思ったきっかけはなんでしょうか。答えづらかったら好きな食べ物おしえてください」


 バーチャルユーチューバーを始めたきっかけ。

 それは本当の初配信の時に誤爆した自己紹介に乗っていた。

 しかし今更取り繕っても仕方ないので、設定としてではなくわたしの言葉として質問に答えようと思った。

 あと質問の殆どが初配信で答えるようなものじゃなくて他に選択肢がなかったのが本音だったりする。

 なんだよパンツの色って! 性感帯って! マタタビ嗅いだときの反応って! 自重しろよ!

 まあいいよね、これも定番の質問だし。


「好きな食べ物はケンタ○キーとマク○ナルド、カップヌ○ドルにあとは焼肉!」


:不健康そう

:野菜食え

:好みが完全にデブ

:シッ


「は? めちゃめちゃ痩せてるが? 40kg前半だが?」


 まあそもそも好きなものであって、頻繁に食べるものではないのだから当然なのだが。

 ケンタ○キーは天才の発明だしマク○ナルドはあのチープさが良いし焼肉は言わずもがな。

 因みにカップヌ○ドルとカップラーメンはまったくの別ジャンルだ。


「バーチャルユーチューバーになったきっかけはきりん先輩の記念配信を見た時、かな。元々バーチャルユーチューバーはいち視聴者として楽しんでたし、オーディションがあるって聞いたときはこれだ! って思ったよ」


:わいもこれだ!って思ったよ

:わいも

:まあ落ちたけど

:わいも


「まあそれはきっかけってだけで、理由はまた別にあってね。初配信で事故った時に見えたけど、友達がほしいっていうのがちゃんとした理由。ほら、私って友達いないから……」


:うっ

:あれ、画面が

:(´;ω;`)ブワッ


「さっきも話したけど私コミュ障でね。後天性コミュ障って自称してるんだけど、昔は普通に会話が出来てたのに、いつの間にか人と会話すると必ず吃るようになってたの。で、流石にこのままじゃまずいなーと思って、バーチャルユーチューバーならコメント相手だからコミュ障の改善になるかなって。ほら、レスバする時って相手は文字だから自分がコミュ障とか気にしないじゃん?」


:こんな悲しい理由でデビューした子おったか?

:さらっとレスバ告白すな

:昨日レスバしたの黒猫さんかもしれん

:この子あまりにも共感できすぎて辛い

:コミュ障なのに改善したくて応募するなんてすごいよな…俺なんてきりんちゃんに会うことしか考えてなかったのに

:俺が落ちた理由がわかったわ


 まあ、そうは言いつつも。


「一番の理由はちやほやされたかったからなんですけどね!!!!」


:はい炎上

:よし燃やせ

:切り抜き確定

:謝罪はよ


「なんでええええ゛え゛!!」

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