第6話 二度目の叫び(ドラッグストア店員)

 店の電話が鳴った。嫌だけど、私は受話器を手に取った。条件反射とは恐ろしいものだ。


「ありがとうございます。ドラッグみ……」

「もしもし? トイレットペーパーや――」


 やっぱりな。店名を名乗る前から、もううんざり。


「トイレットペーパーや箱ティッシュの段ボールって余ってませんか?」

「はい?」

「ほら今、小学校も休校でしょ? 娘が、段ボールいっぱい使って、猫ちゃんハウスを作りたいって。フフフ」


「アハハ。素敵ですね!」


 私は、一生懸命に猫ちゃんハウスを作る女の子と、段ボールから顔を覗かせる猫を想像した。


 自然と温かい涙が零れた。何日振りだろう? こんな温かい気持ちになれたのは。


「はい! 喜んで!」


 私は、駅前の居酒屋に負けない、歓喜の声を上げた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る