突然の襲撃

 通りの曲がり角を曲がったところで、響樹達の正面から黒いスーツにサングラスをかけた男達が歩いてくる。


 人数にして十人程度、彼らは威圧感満載であった。

「ちょっと、先輩。 道を変えましょうか?」響樹は男達に威圧され逃げようとする。


「なにを言っているのよ。 私達が道を変える意味は無いわ。 このまま真っ直ぐ行くわよ」勇希は意地を張るように先頭を切って前へ進む。 その後ろを響樹は、少し俯きながらも付いて行く。勇希は背筋を真っ直ぐ伸ばして、堂々とした姿勢で歩いていく。


「おお!」響樹は目の前に起こった現象を見て驚く。

 それはまるで、モーゼが海を割るが如く男達の群れが左右に分かれる。

 その中を威風堂々と勇希は突き進む。男達は立ち止まり中央を進み行く男女二人の姿を見つめていた。

 ちょうど真中辺りまで進んだところで、男達に変化が見えた。

 彼らは前方と後方を塞ぎ響樹と勇希を囲むように円の形となった。


「な、なんで?!」響樹は恐怖に顔を引きつらせた。


「貴方達、一体どういうつもりかしら?」勇希は冷静な声で尋ねる。しかし、男達からの返答は無かった。

 変わりに男達の手に刃が姿を見せる。


「ちょ、ちょっと先輩!」響樹は男達の様子を見て泣きそうな顔を見せる。


「不動君! 私の背中から離れないで!」勇希が構えを見せる。

 道場で見せた受けに重点を置いたものでは無く、攻撃を主体にしたものであった。


「やー!」気合と共に勇希は正面の男の腹部に足を掛け、その足を軸にしながら見事な飛び後ろ回し蹴りで顔面にダメージを与えた。

 蹴られた男は派手に飛んでいく。

 後方の男が、刃を勇希の腹部目掛けて突き出してきた。 彼女は男の手を流し脇の下に挟み動きを止める。

 そのまま肘の辺りに掌で攻撃した。 骨が折れるような音が響く。

 別の男が響樹の顔面に刃の攻撃を繰り出す。

 勇希が響樹の手を引き、間一髪の間合いで攻撃をかわすことが出来た。

 彼女は響樹と入れ替わるように体を前に移動して男の顔面に側刀蹴りを食らわせた。


「すごい!」響樹は勇希の超人的な動きに感動を覚えた。


「おお!」ついでに要所で見られる彼女のパンチラにも感動していた。


「危ない!」油断している響樹の目前に男の刃が迫る。

 勇希は響樹の体を突き飛ばした。


「きゃー!」勇希の悲鳴が響く、彼女の胸の辺りが男の刃で切り裂かれる。


「先輩!」響樹は驚愕の声をあげる。

 次の瞬間、勇希の前蹴りが男の鳩尾に突き刺さる。 男は前のめりになってその場に倒れこんだ。


「もう、制服が破れちゃったじゃないの!」勇希の制服が切り裂かれていた。体に傷は無いようであったが、ブラウスが裂け更にその下のブラジャーも千切れて胸が露出寸前であった。


「・・・・・・・」響樹の目が勇希の胸元に釘付けになり、ゴクリと生唾を飲んだ。


「ちょ、ちょっと、何見てるのよ!こっちを見ないでよ!」勇希は両手で胸の辺りを覆った。顔を真っ赤に染める。

 そのお蔭で彼女の戦闘力は急激に減少したようである。


「危ない! 先輩!」響樹は勇希の背中の辺りに飛び込み、彼女の体を庇った。 男に刃が響樹の背中を切り裂き鮮血が飛び散る。


「え・・・・・・!」勇希は何が起こったのか解らなかった。 響樹の体が彼女に覆いかぶさるように倒れこむ。


「・・・・・・・せ、先輩、大丈夫です・・・・・・か?」自分の体が傷ついているのに響樹は勇希の体を心配しているようであった。


「何を言っているのよ! 不動君! しっかりして・・・・・・不動君!」勇希は響樹の体を抱きとめて、彼の名前を呼ぶ。 しかし、響樹の返事は返ってこない。


 勇希の両目から大粒の涙が流れ出す。


 周りを囲む男達は容赦無しに、勇希の頭上から刃を振り下ろす。勇希は観念したように両目を瞑った。

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