第15話 そして未踏の地へ
「はぁっ! とりゃっ!」
それから、さらに数日後。
池の
「うりゃっ! せやっ!」
人類の祖先が、獲物を狩るために石を投げ始めたのと同じように、チロもようやく気づいたのである。
────自分は弱いのだから、接近戦はそもそも無理だということに。
「ちぇりゃっ! ほりゃっ!」
あまり鋭くはない掛け声とともに、チロは槍を投げ続ける。
練習用の槍なので、その先についているのはまだ研いでいない、ただ先が尖っただけの陶器だ。
もとの強度が脆いこともあり、槍は木に突き刺さることなく、当たった瞬間に穂先が砕けて地面に落ちている。
だが、命中の精度と威力は、確実に上がってきていた。
初めのうちは木に当たりもせず、当たっても穂先が砕けることなどなかったのだ。
「ふぅ……」
と一息つき、チロは本日の練習を終えた。
練習用の槍は十本作ってあり、今は一日十セット百投をノルマとして、自らに課している。
本番用の穂先を研いだ槍も、すでに二十本は用意してあった。
本当は弓矢を作りたかったのだが、やはり知識もなく作ってみても、ちゃんと飛ぶ弓矢にはならなかったので諦めたのだ。
チロはごく普通の一般人だったので、
「さて、それじゃそろそろ出かけるか」
槍投げの練習を終え、チロは探索に出かけることにした。
今日は角ウサギの縄張りだった辺りを越えて、もう少し先の方まで行ってみる予定である。
また凶悪な野生動物に出会わないとも限らないので、腰にはドリンギの汁を入れた小さな壺を吊るしていた。
いざとなったら、槍の先にこの毒汁をつけて投げるつもりなのだ。
もちろん、接近された時用に、毒汁と砕いた破片入りの壺も携帯している。
二つの壺を腰に
角ウサギの縄張りを越えると、やや草木の密集した、薄暗い場所に出た。
茂みや木の陰に注意を払いつつ、チロはさらに先に進む。
すると────
「これは…………洞窟か?」
目の前に、岩山をくり抜いたような天然洞窟が姿を現したのだった。
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