66日目

「なんだか、ちょっと表現が漫画みたいなんだよね。もう少し小説ならではの表現を折角だから活かしてほしいかな」


 受け取った彼女は、以前の様に取り乱したりせずに俺の校正した原稿をジッと眺めた。


「出来る限り、擬音とかは削って地の文で表現したんだけど、まだ粗が目立つよね。うん。解る」


「……公募は、どこにするか決めたの? 」

 その瞳と眉がピクンっとこちらを向く。


「ううん。でも、やっぱ一番有名なトコがいいかなって」

 俺は、頬杖をついて「でも、有名じゃないとこの方が競争率低いかもよ? 」と意地悪な事を言ってみる。

「獲れるわけないじゃん。流石に私もそこまで厚かましくないよ。自分の実力はまだまだだし。物語の背骨部分とかも結局は誰かの作品の物を借りてるし。まだまだ修行中の身ですよ」


 俺は、振り返ると窓を少し開けて風を浴びる。

「謙虚だねぇ」

 野球部の掛け声とブラスバンドの練習の音が聴こえる。


「でも、ちょっと自信あるよ」

 彼女の声に振り返る。

「だって、君に毎回こうやって校正してもらってるもん」


 二カッと笑うその顔は美少女としか例えようがない程に。


――異世界転生まで

  あと34日――

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