54日目

「はい。はい、そういうわけで今日はお休みさせて頂きたく……はい」

 電話の向こうに母はお辞儀をしていた。


「……大した事ないけどね」

 受話器を置いた母親に俺は呟いた。


「39度も発熱してたら、立派に大した事よ。

 お姉ちゃん学校行ったら、私達も着替えて病院行くわよ。用意しておいて」


「へぇい」

 正直、部屋に戻るのも気怠かったが、なるべく母親に心配かけるわけにはいかない。

 脚を引き摺って俺は部屋に戻る。


「……熱、あんの? 」

 階段で制服姿の姉とすれ違う。


「移るから、離れてな」

 俺はそう言うと、さっさと行け。という意味で壁にもたれて階段にスペースを空ける。

 それを見て姉は鼻を鳴らし。

「お、おい」

 俺に肩を貸して、そのまま降りた階段を昇り返す。


「息すんな。そしたら、飛沫しないでしょ」


 おいおい。


 無茶言うなよ。


――異世界転生まで

  あと46日――

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