トウタが化け物に殴り掛かるのを確認して、ユリアはスキルを停止した。風を集めただけのレーザーでは、化け物のバリアーを抜けはしない。

もっと威力が必要だ。それも初手の爆発をはるかに超える大火力が。

「可能な道を考えるのよ。出来ないことを探したって、仕方がないんだから」

 ユリアのスキルは『コンセントレート(濃度変更)』。その名の通り、周囲のものを集め、濃度を変更することができる。最初の爆発は空気と煤を集めて、指輪のスキル『着火』で火を着けたというからくりだ。レーザーは風を一か所に圧縮し、細い穴から噴出させている。まぁ、正確に言えばビームに近い原理だが。

とにかく、簡単に行えるそれらではダメージを与えられなかったのだから、更に繊細な調整が必要になってくる。

「これは使いたくなかったけど、仕方ないか」

 ユリアは懐から、『賢者の眼鏡』を取り出して装着した。

「『コンセントレート』!!」

 周囲一帯から水を集め、熱が上がらないように圧縮していく。

「このまま発射しても、風よりは威力があるかも知れないけど……」

 水を高速で噴出するウォータージェットであれば、ダイヤモンドをも貫けると聞いた。が、バリアーに有効とは聞いたことが無い。

「『コンセントレート』!」

 再度スキルを唱える。今度は水を一気に拡散し、氷点下まで温度を下げる。そのまま熱が上がらないように圧縮し、氷の槍を生み出していく。

「『コンセントレート』」

 再び周囲から水を集め、目の前で圧縮していく。

「これなら、貫けるかな……」

 高硬度まで圧縮した氷の槍を、周囲を覆う水を圧縮してのウォータージェットで超高速発射する。トラックの荷台位なら貫けそうだと、賢者の眼鏡には表示されていた。

「いまいち使えないのよね、これ……私が知りたいのは、あいつを倒せるのかなんだけど」

 賢者の眼鏡は知的サポートをしてくれるアイテムらしいが、どうにも頼りない。もっと氷槍を大きくした方が確実に倒せるかもしれないと不安がよぎるが、

「化け物と対峙してる肝心のトウタくんが、これ以上は耐えられそうもないのよね」

賢者の眼鏡もそういっている。

「『ディレイ』!」

 トウタがスキルを使い、化け物と共に遅くなる。恐らく体勢的には、このスキルが切れたら、もうトウタは次の攻撃は凌げないだろう。

「申し訳ないけど、合わせてね!発射!」

 ならばこそ!この一撃で決めきるしかない。

 ほぼ停止している化け物へ向けて、高硬度の氷槍が飛翔した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る