サイレン

ランダムに流れていくカードを

色ごとに並べ替える。

青いグレー、赤いグレー、黄色いグレー、

手際よく、作業を進める。

こんな機械文明の発達した時代に

こんな作業をして何の意味があるのか。

そもそもこれは仕事なのか。

「余計なことを考えてはいけません」

「これは、あなたが希望した仕事なのですから」

無表情な女が僕に言う。

今日はいつになく、青いグレーが多い。

この仕事の目的。

何も知らされていない。

いったい僕は何をしているのか。

「それは、あなたには関係ないことです」

終業のサイレンが鳴る。

作業服を着て、紙袋を抱えた人々が、

工場の門から吐き出されていく。

こいつらはみんな、

自分から希望してあんな作業をしているのか。

何かが光って、目がくらみそうになる。

「カメラのフラッシュですよ」

金属製の箱を首から下げた、

長髪でざっくりとしたセーターを着た男が話しかけてくる。

「マグネシウムを焚くんですよね」

「またまた、古風なことをおっしゃる」

サイレンが鳴る。

門の閉まる合図だ。

「サイレンの語源は、ギリシャ神話の女神なんですよね」

「シーレーンですね」

「よくご存じですね、一般的にはセイレーンですが」

「まあ、外国語の表記なんていい加減なものです」

男はゆっくりと歩き出した。

僕は遅れないようについていく。

「その箱は」

「カメラですよ」

「銀塩写真ですか」

「本当によくご存じですね」

僕は首から下がっている、金属の箱をじっくりと見る。

「それにしても、奇妙な形ですね」

「私の知ってるものとは」

「自作ですから」

「銀塩カメラが廃れていた時期に自作したものです」

「私の父が」

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