第17話 ほう、ついに襲撃イベントですな。-後編-

 探知を頼りに馬車の方へ向かう。馬車の周りには比較的軽装の護衛っぽい5人と、先ほどの盗賊の仲間であろう10人が戦闘を繰り広げていた。レベル差はあまり無さそうな上に人数の差もあって護衛側は劣勢だ。



「マーブル隊員。盗賊方が有利みたいなので、護衛側を援護しますが、やられそうな方から順番に攻撃していきましょう。今回も殺さないようにします。よろしいですか?」



「ミャッ!」



「ありがとう。では、右側はお任せします。私は左側を援護します。では、戦闘開始!」



「ミャー!!」



 今回もマーブルが敬礼する。やはり、かわいい。敬礼の後、特に飛び出すこともなく肩の上から飛爪を放っていく。不意を突かれた盗賊達の2、3人が武器を飛ばされた。流石マーブル。お父さんも負けてられないな、ということでバンカーショットを左側の盗賊に放っていく。こちらも武器狙いでいった。上手く盗賊達の武器を吹っ飛ばすことに成功する。



「な、何だ、どこから放ってきた?」


「お、おい、あっちからだ。」


「く、くそっ。」



 盗賊達がこちらを向いた。護衛達は少し呆気にとられていたが、すぐに気を取り直し反撃に移った。武器のない盗賊達は次々と護衛に討たれていき、最後の一人はかなり抵抗していたが、やがて盗賊達を仕留め終わった護衛達が加わっていき、その残り一人も討たれた。



 とりあえず盗賊達はこれ以上いないことを確認して、私達は馬車の方にゆっくりと向かう。馬車にたどり着くと商人ぽい人2にんが護衛達にポーションをかけたり飲ませたりしていた。定番の救出イベントだが、はてさてどうなることやら。できれば移動中にこの国や近くの街、貨幣の価値なんかを聞いておきたいので、とりあえず話しかける。



「お怪我は大丈夫ですか?」



「いや、助かった。救援かたじけない。」



 護衛の一人がそう言ってきたが、他の護衛達は違った。



「我々だけでも倒せたのに、おいしいところだけ持って行きやがって。」



「そうだ、そうだ。そんなんで助けたつもりかい、余計なことしやがって。」



「お、おい。折角助けてもらったのにその言い方はちょっと。」



「いや、こいつらが何もしなくても問題なかった。」



 思ってもいない言葉が出てきて正直呆れた。よりによって、最初に出会った人間がこれかい。この国大丈夫か? どう見ても放っておけば全滅なのに出てきた言葉がそれかい。盗賊達と似たり寄ったりだったか。まあ、いいか。ここには道もあるし、こいつらを放っておいて先に進むとしますか。下手に関わるとろくな事が起きなさそうだしね。とはいえ、折角初めて会った人たちだから、後ろで倒れている盗賊達をプレゼントしておきますか。前方で待ち伏せている連中もそのままにしておきましょう。



「それは、申し訳ありませんでした。後方に彼らのお仲間達が倒れております。殺してはいませんが動けなくなっておりますので、お詫びとしてそちらの方はお好きになさってください。では、私達はこれにて。」



「えっ? ちょっと待ってくれ。それは一体どういうことだ?」



「言葉通りですよ。こちらからこれ以上話すことはありませんので、直接ご自身で確かめられては?」



 そういって、さっさとその場を後にする。あの程度の腕では、どのみち次に襲撃などきたらひとたまりもないだろうけど、こっちもそんなことは知ったことではないし、ああいった心魂の浅ましい方達とは一緒にいないに限る。盗賊の仲間であろう気配を探知した。こちらに向かっているようだが、彼らを襲撃するのであれば、こっちはどうもしない。私達を襲うようであればもちろん返り討ちです。さあ、頑張ってくださいね。



 さらに道を進むこと2時間ほど、道中においしそうな木の実や少し道から外れるが、ジャガイモを確認したので頂いていく。魔物の気配は感じたが、こちらを襲うような感じではなかったので、お肉の補充はなかった。以前の入れ物だと、これで満杯になってしまうのだが、今回はゴブリン謹製の大きめのソリを引いている。まだまだ容量に余裕がある。このソリは見た目も結構大きいが、実はマーブルが闇魔法にある空間変更の術がかけてあるため、中が拡張されており、私達が寝泊まりできるスペースも存在する。専門の空間魔法にはかなわないそうだけど、それでも十分すぎるくらいだ。何せ私、魔法使えない(泣)。



 さらに進むこと2時間、街に到着した。はてさてどうなることやら。



 ちなみに、近づいてきた盗賊達はそのまま引き返したっぽいです。

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