第7話 ほう、これが、かの有名な。
マーブルと一緒に生活してからは、狩りの効率も上がり食糧問題はほぼ解決したといっても過言では無い。むしろねぐらの食料庫はいっぱいになりつつあった。というわけで、しばらくは狩りをやめて探索範囲を広げることにした。途中で魔物などに遭ってしまったらできるだけ戦闘は避けることにした。
そんなこんなでしばらく探索していると、一本のかなり太い木を見つけた。大の大人3人が手をつないでやっと囲める太さだ。その太さのわりには高さが私の身長ほどしかない。ちなみに私の身長は170センチくらい。この不自然さは流石異世界、と思いたいがどうみてもこれ人工物だろ、と突っ込みたくなるような外観の木である。その木の根元には、これまた変な像が建っている。触ったらやばそうな感じがした。マーブルはというと、特に興味もなくどうでもよさげだ。こういうときはアマデウスさんに聞くのが一番。というわけで、木と像をそれぞれ鑑定してみた。
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『マーシィの祭壇』・・・ポーラ・マーシィの墓。それ以上でもそれ以下でも無し。
『マーシィの祭器』・・・ポーラ・マーシィを祭る像。ってか、こいつ何者? 久々の出番じゃというに、こんな訳のわからん物を調べるためにワシ呼び出されたの? こんなもん、ワシにもわからんわい。とりあえずこの像を触ると面白いことがあるかもしれんぞい。つまらなかったらすまんの。
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本当に、誰って感じですな。って、やっぱりアンタが一々答えていたのかい。触ると面白いことがあるって言ってたけど、これって何か出てくるってことですよね。ヤバイ物だったらどうしようとは思ったけど、アマデウスさんが暢気なコメントをしてきたということは、そうでもないということでいいのかな。ただ、進んでただけだから、ここでイベントの一つでも起こしておかないとな。絶対何かありそうだけど。というわけで、触ってみた。
いきなり地面が揺れ出したが、激しい揺れかというとそうではない。本当に微妙だ。というか、意識しないと本当に揺れたのかどうか分からない程度の揺れだ。震度1くらいだと思ってくれれば問題ない。マーブルは多少ビクッとしたが、私が平然としているのを見て安心したのか、すぐに落ち着いた。
微妙な揺れのあと、像からこれまた微妙な煙が出てきて何か人のような形に形成されている。マーブルも落ち着いているので脅威ではないのだろう。大人しく完成を待つと煙の塊が人型となって、いきなりこちらの襲いかかってきた。こちらもビックリして思わず腹パンをカウンターのような形で攻撃してしまった。
戦っていて思った。こいつ弱いけど、かなりタフそうだと。この光景、どっかで見た記憶が、、、。そうだ、某3Dダンジョンで出てくる固定敵だ。名前は何とかゴーストという感じだったかな。知っている人は知っていると思うけど、とある部屋を調べると現れて、倒しても部屋を出入りしたりすれば何度も出てきてくれて経験値も低くは無いので、序盤のレベルアップでお世話になる人も多い、あの敵だ。ここでも同じなのかな。何かあるかわからないから、バーニィを起動する。とりあえずバーニィバンカーで打ち抜いたら、あっさりと人型の敵は消えた。マーシィの像に触れてみると、また煙が出てきたので姿が完全に出てから再び倒した。これは、定番のレベルアップポイントか? でも、経験値がショボいとただの徒労に終わってしまう。とはいえ、試さずに放っておくのも何だし、今日一日試してみますか。久々のステータス確認としましょうか。
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名前 < アイス > 種族 【 人間 】
年齢 < 35 > 性別 ♂
レベル 13 職業 【 なし 】
生命力 126 / 126
魔法力 0 / 0
腕 力 19 (21)
体 力 14 (16)
器用さ 5 ( 5)
知 力 22 (35)
魔 力 0 ( 0)
幸 運 18 (18)+32 (50)
[スキル] 水術 4、格闘術 5、解体 2
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お、レベル1つ上がってる。体力増えた。スキルも軒並み上がってる。
さてと、マーブルはどうかな。
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名前 < マーブル > 種族 【マンチカン(デモニックヘルキャット)】
年齢 < 5ヶ月 > 性別 ♂
レベル 7 職業 【 アイスのペット 】
生命力 65 / 65
魔法力 115 / 115
腕 力 11 (16)
体 力 15 (15)
器用さ 21 (25)
知 力 12 (15)
魔 力 22 (25)
幸 運 11 (20)
[スキル] 格闘術 5、身体強化 5、気配探知 7、罠探知 2
火魔法 3、風魔法 3、闇魔法 1
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おお、いい成長っぷりだ。お父さんは嬉しいぞ。って、5ヶ月から年齢進んでないのですが。でもかわいいから許す。
では、戦闘前のステータスも確認できたことですし、いっちょやりますか。折角なのでいろいろと試しながらマーシィブートキャンプを行うとしますかね。
数え切れないほどの戦闘回数を重ねたが、そろそろ日も傾いてきたところなので、ねぐらに戻ろうとふとマーシィの木を見ると、かなりの量の銅貨と一枚の手紙が置いてあった。最初に見たときは何も無かったのでいつの間に置いてあったのかわからなかった。手紙には『ネコ連れの冒険者へ』と書かれていたので、間違いなく私たちに宛てた手紙だろう。中を読んでみると、『暇つぶしにつきあってくれてありがとう。そこの銅貨はお礼だ。』という書き出しに始まって、長々と誰も来てくれないだの、寂しかっただのといった愚痴もかなり書かれていた。お礼1割愚痴9割といった感じだろう。銅貨はこれから人里に行ったときに必要だろう。何せ無一文ですからねぇ。手紙の最後には、『たまにでいいから、また相手をして欲しい。できたら知り合いにここを紹介してくれないかな。』と書かれていた。あんな気味悪い物誰が好きこのんで関わろうとするのだろうか。第一、ここって私たち以外に人はいませんよ。っと突っ込んでおく。
さて、レベルは上がっているのでしょうか。これだけ戦ってレベルが上がってなかったら完全に徒労に終わってしまう。せめて1だけでも上がって欲しいものです。時間があるとはいえ「オッサン」では若い頃と違い成長などあまり見込めないのだ。でも、マーブルは成長しているんだろうな。その点うらやましいかな。さあ、確認の時間だ。
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名前 < アイス > 種族 【 人間 】
年齢 < 35 > 性別 ♂
レベル 18 職業 【 なし 】
生命力 63 / 183
魔法力 0 / 0
腕 力 21 (21)
体 力 16 (16)
器用さ 5 ( 5)
知 力 27 (35)
魔 力 0 ( 0)
幸 運 18 (18)+32 (50)
[スキル] 水術 6、格闘術10、解体 2
[称号] アマデウス神の加護(極)、悪魔を調伏せし者
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おお、5つも上がったぞ。ステータスも知力以外は目一杯上がってる。スキルもかなり上がりましたな。って、ん? 何か称号に加わってるぞ。全く身に覚えが無いのだが。まあ、いいか。とりあえず厄介そうだから、これも隠蔽しておきますか。では、マーブルはどうかな。
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名前 < マーブル > 種族 【マンチカン(デモニックヘルキャット)】
年齢 < 5ヶ月 > 性別 ♂
レベル 17 職業 【 アイスのペット 】
生命力 88 / 248
魔法力 125 / 325
腕 力 16 (16)
体 力 15 (15)
器用さ 25 (25)
知 力 15 (15)
魔 力 25 (25)
幸 運 15 (20)
[スキル] 格闘術 7、身体強化 8、気配探知 7、罠探知 2
火魔法 5、風魔法 5、闇魔法 3
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おお、すげぇ。かなり上がった、って生命私より多くなってるし。レベルもほぼ同じやん(泣)。あれ? 闇魔法が上がってる。火と風はわかるけど、闇魔法っていつの間に? まあいいか。わからないことは聞くに限る。というわけで、アマデウスさんお答えください。
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『悪魔を調伏せし者』・・・この世界の災厄となる存在を無害な存在に変えてしまった者達に付く称号じゃ。さりげなく付いておるが、これはとんでもないことじゃぞ。これが付いたのはお主の飼い猫の存在じゃ。先に言っておくが、この件にはワシは一切関わっておらんからの。何でもかんでもワシのせいにされてはかなわん。お主の考えているとおり、目立ちたくないのなら隠しておく方がよいと思う。ちなみに、この称号が付くと魔力がかなり上がるぞい、ってお主一切上がっておらんな。おかしいのう。まあ、上がらんものは仕方ない故あきらめるしかないの。
『闇魔法』・・・悪魔のみが使える魔法じゃ。毒や病気などのいわゆるバステというやつがメインじゃが、一部、空間魔法としても応用が利くのも存在するぞい。このスキルレベルが上がると、ヤバイ攻撃魔法も使えるらしいの。ワシは覚えられんからこれ以上詳しいことはわからんよ。
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私に関しては魔力って付与でも上がらないのね。魔法が使える世界なのに。もちろん、水術だってかなりありがたい技能なんだよ。でもさ、折角ならいろんな種類の魔法をさ、使えるものなら使ってみたいじゃん(泣)。それが何も使えないって、そりゃないよ(号泣)。
さて気を取り直してっと、闇魔法で空間魔法が使えるかどうか聞いてみますか。
「マーブルの闇魔法で何か空間を作れませんかね。例えば、そこにある銅貨を入れたりするスペースとか。」
マーブルは「ミャッ」と一声鳴くと、そこには小さな空間が出てきた。
「これに入れてみろと?」
マーブルがうなずくので、早速銅貨を2、3枚入れてみると、空間の入り口が閉まる。そして、今度は別の空間が空いて「ミャッ」と鳴いた。空間に手を入れてみると先ほどの銅貨がそこに入っていた。おお、流石私のマーブル。かわいい上に賢いなんて言うことないですなぁ。
「この袋の中に、今の空間を作れますかね。」
小さめの袋を出してマーブルに聞いて見ると、もちろん、と自信満々に「ミャー」と鳴いてくれたので、試したらバッチリ袋の中で出し入れしている感じになってくれた。というわけで、マーシィさんがくれたたくさんの銅貨をその空間魔法入りの袋に入れると、銅貨とはいえ結構な量があったのだがすんなり入った。しばらく使う予定がない、というか使いようがないため、このままマーブルに預けておくとしましょうか。
マーシィさんのいるところは、いくつか気になることもあり、しばらく通ってみるつもりで目印を付けながら帰路についた。今日はねぐらに戻っても特に解体や選別などはなかったので、食事と洗濯と風呂を済ませた後はマーブルとじゃれ合って至福のひとときを過ごしながらその日は終わった。
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