超短編小説群
布施鉱平
崩壊スイッチ
人は皆、平穏に暮らしたいと望んでいる。
だがその反面、自らを危険に晒してでも刺激を味わいたいという願望が、心のどこかにあるものだ。
私は日々、そんな欲求に駆られている。
仕事に行くたび、デパートに行くたび、私を誘惑するものがある。
火災報知機の『押す』というボタンだ。
押せばけたたましく音が鳴り、上司や同僚は慌て、デパートの店員は客を誘導するだろう。
そして、混乱を巻き起こした私は、知らん顔をしている。
平静を装いながら、手に汗をかき、事態の行く末を見守るのだ。
得られるものは何もない。
緊張と罪悪感があるだけだ。
だが、小さなボタンを押すだけで、私は自分の心の平穏を壊すことができる。
それは何故か、とても魅力的なことだと思うのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます