アンパン
まあ正直、助かるんですわ
彼らがいることによって
自分もまだまだやらなくてはならないことがあるって再認識させられますから
徹底的にやるわけにはいかないんですよ
仕事が無くなっちゃうじゃないですか
げらげら
生かさず殺さずですよ
おい新しいパン寄越せ
まだ焼きあがらないのか
早く防水加工、施せるように努力しろな?
そうしたら子供が顔を食えない?
何言ってんだおめえ
どうしておれの顔を腹ぺこのガキに食わせなくちゃならねえんだよ
ぼけっ
御託抜かしてねえでとっとと焼き場に戻れ
オーブンの温度は確認したか? この役立たずがっ
………あいつっすか?
別にいいんすよ
耄碌してあのくらい言ってやらないとテキパキ動かないんですわ
そのようなことを記者に言いながらアンパンさんは今朝の新聞記事に目を通した
そこではいつも通りバイキンさんの非人道的行為が目立っていた
感謝しなくっちゃな
アンパンさんはにやりと笑ってテーブルの上の焼きおにぎりを頬張った
もちろんそれはジャム叔父さんの朝食だった
再び新聞記事に目を落とす
『バイキンさん、カバオ君のズボンを一気に下ろし包茎チンポを剥き出しにさせる』
あいつらがいることによって自分たちの為すべきことがはっきりとしてくる
人生
そいつに疑問は必要無い
歩く道に不愉快な物が落ちている、それを排除する
それだけでいい
『ドキンさん、搬送先の病院にて死亡確認』
記事の一つが目に止まった
おやおや
どうやら先日のアンパンチで内臓破裂したようす
「おれってクズですかね? へへ」
ぐったりと半開きの目で横たわるドキンさんの腰を持ち自らの性器をねじ込む食パンさん
さあね
おれは興味無い
おれが興味あるのはこの世界を作ったのが誰で一体なんのためにおれたちがこんな場所へ隔離されているのかということだけだ
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