Responsorium 3
「サキさん、今すぐ第四部隊と第五部隊を集めて、南へ逃げてください!」
シバタ・アカネは
「へ?」
と、間抜けな顔を浮かべた。
「退避命令です。この
「そんな!」
住民を全員捨て置くっていうのか。
サキの表情に怒りの色が混じる。
「だから、サキさん。住民は地下の鉄道を使って南のサイパン
「でも、私たちでは『零式』に勝てない」
「それをうちの隊長がひきつけるんです」
「そんな! まさか!」
「
「わかった。とりあえず、第四部隊の残りを集める。アカネはナナを頼んだ」
「ありがとうございます。第五部隊には住民の避難誘導の命令が出ています」
ミズタニ・ナナ軍曹にはすでに話をしていたが、アカネはあえてそれを隠した。
彼女も、先輩に言えない野望を、その想いを胸に秘めていたのだ。
その決意は、白銀の巨大な竜と、それとほとんど同じ大きさの金色の竜のにらみ合いを見て、より一層固まった。
私も、故郷を守るんだ——
「やめときなよ」
すぐ近くで低い声がしたので、アカネは思わず飛びのいた。
声を出したのは、少し小柄な「V」だった。彼女は鱗の浸食が激しく、四肢はもちろんのこと、
「君は、その身を捧げるにはあまりにも若すぎるよ」
「戦いっぷり、すごいよ。うちのミツキより、君のほうがずっと筋がいいと思う。だから、君は——ここで死ぬべきではない。『
彼女はそう言うと、
「キクチ軍曹のところに行きな。あたしは、見なきゃいけない人がいるからさ」
と言って、西の空へ飛んで行った。
それは見とれるほどに優雅で勇壮な飛翔だった。
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