『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』上野 千鶴子 田房 永子
『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』上野 千鶴子∥著 田房 永子∥著(大和書房)2020/01
200p足らずの対談集なのですけど、めっちゃ勉強になりました。すっきりと言語化して言い切ってもらうのって大事。他者の言葉に頼ったっていいのですね。それが学問の力。本を読むって大事。
私、個人のうらみつらみを環境や社会のせいにするのって嫌いなのですけど、それでも、「個人的な経験」は「世代的な経験」であり、「個人的なことは政治的である」という標語に納得です。
それくらい「あるある」と「なるほどー」の繰り返しで読み応えありました。イラスト満載な軽い楽しい対談なのですけど、語ってる内容は濃かった。
こういう「あるある」をわかるわかるーと読んでると、男社会というカタマリに対する怒りがふつふつとこみ上げてきてしまうのですけど、「フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想」。「あんたらみたいになりたいなんて思っちゃいねーよ!」ですから、ほんとそう。
異性愛セックスについても、女がご奉仕するのが当たり前って風潮はロスジェネ(私もこの世代)以降のものなんだと知って愕然。
AVの影響はもちろんだけど、私は『an・an』のせいだと思うのですよ。男のホンネとか気にするよりも、もっと女が主体になるべきだったんだと。こうしたいって主張すべきだし、イヤなものはイヤって言わないと。男は言わなきゃわからない。
コンビニからエロ本が撤去された話題のくだりではちょっと悲しくなっちゃいました。
「でも「コンビニからエロ本がなくなるのはちょっと寂しい」派の人はほわーっとしてて、ノスタルジックなんです。その差がすごくて。「これどっかで見たことあるぞ?」と思ったら、DV夫の暴力から命からがら逃げて自由を掴み取った妻の苦しみからの壮絶な安堵と、もぬけの殻になった家の中で「なんで? どうしたんだろう?」って思ってるDV夫。その構図とそっくりだと思いました。」
「片方にとっては息をするのも苦しかった時期のことを、もう片方は「あの時は楽しかったなあ」と思い出せるんです。そういう構図が、コンビニのエロ本でも見られるんだなと思いました。」(p131より)
男女間の認知のギャップってほんとヒドイ。日本の社会は男の性欲に寛大だから。
ポルノについては、私も楽しめる人なので否定はしないですけど、ほんと「やるならこそこそやれ! 表に出て来るな!」だと思います。
いろいろな話題が上る中でよく出てくるのが「想像力のなさ」「想像力の限界」って、やっぱり「想像力」の問題なのです。
「なぜ人は恋愛をした時に、これが恋愛だとわかるのか。」それはメディアで学習してるからなのですね。「これはあの本で読んだ恋愛ってものだわ」と。
ところが「日本の子ども向けのアニメはそういうジェンダー意識が昭和初期のまま」。女子向けのマンガやアニメやディズニーアニメだって社会の変化と共に変わってきているのに、男子向けはそんなに変わらない。「作っているのがおっさん」だから。
田房さんは漫画家さんなので、文化には文化で対抗、
「母親の視点から言ってても、どうにもならないなって。どうしても「表現を潰す」っていう文脈になっちゃうし、そういう作品を好きな人を傷つけることになるし、敵もむやみに増えてしまう。やっぱり漫画家として、土俵に上がるしかないと思います。」(p149)
ということは、ラノベにもラノベで対抗しないとってことですかね…………。
とまあ、頭の中がぱんぱんになりましたが、「女としての自己嫌悪と闘うことがフェミニストへの第一歩」「フェミニズムは女が女であることを愛し、受け入れる思想」ってことで。
私も、生まれ変わってもまた女がいいって思います。
初出:読書メモ㉝近況ノート2020年10月12日
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