第6話 命の価値とは
一柱と一人が、肩を並べて歩いている。太陽は沈み、薄暗い道を延々と。
「とにかく、竹子が気にしていた少女を探すぞ」
「う、うん......もし、私の思っている人なら嬉しいなあ......」
祐輝が襲われた惨劇の場で、銃撃をしてきた謎の少女。滑稽なとんがり帽子を被っている配下を連れていたが、滑稽なのは外見だけで、射撃の腕は正確無比であった。
行く宛もない虎白と竹子は、謎の少女らを探すために歩みを進めた。
「ねえ虎白」
「どうした?」
「祐輝殿の最期を見ていた?」
「いや、俺はその時、意識が遠のいていた......たぶん復活する予兆だったんだろうな。 どうかしたのか?」
竹子は、言葉を詰まらせ、黙り込んだ。心配する虎白が、立ち止まり竹子の小さい背中を優しくさすっていると、声を震えさせながら口を開いた。
「おかしいの。 祐輝殿は弓矢を胸に受けたんだよ......」
「ああ? 怨霊共は、いつも素手だろうが」
「でしょ? おかしいよね......弓手は見えなかったけれど、確かに胸に矢を受けていたの」
顎を触って考え込む虎白は、何か異常なことが起きているのではと危惧している。
日頃は、立ち尽くして一点を見つめているだけの怨霊が、突如群れをなして襲ってきたことに始まり、素手以外の攻撃方法なんてなかったはずが、弓矢まで出てきた。
「異常だな。 弓兵が群れの中にいたってことになる......あいつら、軍隊まで出してきたのか? っていうか、誰の軍隊だよ......」
困惑する二人は、立ち止まったまま会話を続けていた。しかし何処からか、嫌な視線を感じている二人は、周囲を見ながら視線を向ける者を探している。
その時だ。怨霊が姿を現した。家の壁をすり抜けて、現れる邪悪な存在は、祐輝を殺してもなお、追いかけてきた。
「逃げろ竹子! 数が多すぎる!」
日に日に、数を増やしている怨霊が迫る。刀を抜いた虎白は、迫ってきた怨霊を一刀両断すると、足早に竹子を連れて逃げようとしていた。
しかし、虎白の足が突如止まった。不審に思った竹子が、声をかけると、下を向いたまま、口を開いた。
「俺か。 狙いは俺だったのか......どういうわけか知らねえが、俺のこと狙ってんだ。 だから祐輝を殺して、俺を引きずり出そうとしてやがったんだ」
「今はそんなこといいよ! 早く逃げよう!」
「いや、お前だけ逃げろ。 連中は、お前を狙う理由なんて最初からねえんだ」
そう言って竹子の胸元を、力強く押すと、怨霊へ向かっていった。残された竹子は、その場に立ち尽くし、様々な思いを巡らせていた。守りたかった祐輝は、そんなことのために殺された。
どういうわけか、祐輝の息子までも。虎白を解放させて、連れ去るのか、殺すのか知らないが、ただそれだけのために。
「そんな身勝手な理由で......苦しみを乗り越えようとしていた祐輝殿は、最初から眼中にもない殺害対象だった......」
竹子は、下を向きながら呟いている。やがて涙を拭い、髪の毛を後ろで束ねて、鞘から刀を抜くと、走り始めた。
「よくもそんな理由で!」
「おい竹子逃げろって言っただろ! こいつらの狙いは......」
「よくも祐輝殿を! よくも! まだ恩返しは済んでいなかったのに!」
我を失いかけて、刀を振り回している。見事な刀術からはかけ離れ、素人のような振り方だ。
至って冷静な虎白が、周囲を見ていると、怨霊はさらに数を増やしていた。気がつけば、二人を囲むように迫っているではないか。
「落ち着け竹子!」
「許しません! 祐輝殿が何をしたと言うのです!」
「囲まれてんだ! 今は逃げるぞ!」
虎白は、絶体絶命の中、微かに微笑んだ。わかったよ、いいぜここで死ぬか竹子。そう、頭の中で覚悟を決めると、竹子を逃がすことを止めて、自慢の二刀流を存分に振るった。
その時だ。
「放てー! 各自、撃ち続けよー!」
突然の轟音と共に、怨霊が次々倒れた。
虎白が、音の方を見ると、とんがり帽子達が銃撃をしているではないか。そして先頭で、刀を手にしているのは、あどけなさの残っている少女だ。
「おい竹子あれって!?」
怒りと悲しみに狂う竹子は、銃撃に気がついていないのか、迫る怨霊を斬り続けていた。虎白が、少女を見ていると、両手を広げて大きく息を吸い始めた。
「やーっと見つけましたよ! 姉上ー!」
そう叫ぶと、少女はとんがり帽子を引き連れて、突撃を開始した。
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