怪獣少女 甲斐路優 (護神獣降臨)
森緒 源
第1話 甲斐路 優への告白
…僕の名前は乙掛輝男 (おつかけてるお)、千葉県立東松戸高校の二年生からこの春で三年生になるところ。…で、三学期の終わり、春休みになる直前に、一大決心をしたんだ!
それは、クラスメートの女子に告ること…本当はもっと早くに決行したかったんだけど、もしもフラれたときのことを考えるとたぶん相当なダメージを受けたままのスクールライフになる訳で、自分でも意気地の無さを自覚してる僕には耐えられないと思ったんだ。
それで、三学期の終わりならもうすぐに春休みだし、三年生になったらクラス替えになるから告るならこのタイミングしか無いと思った。
…告る相手の名は甲斐路優 (かいじゆう)、155センチくらいの小柄で可愛い子なんだけど、あまり他人と関わらなくて何かちょっと独特な感じなんだよね。女子って普通何人かの仲良しグループになってキャッキャラするでしょ?…そんな姿は全く見せずに授業が終わるとサッサと帰宅しちゃうんだ。
付き合ってる男子も居ないと思うし、謎の美少女って感じ。
まぁ、そういうところがすごく気になって惹かれる訳なんだけど…。
一方僕の方はといえば、自分で言うのも何だけど170センチ61キロの平凡な眼鏡男子、特にイケメンでもなく地味な生徒なんだ。…もちろん今まで恋愛経験も無い。女子と気楽にお喋りなんてことも出来ない、たぶん女子側から見たら冴えない男だと思う。
ウチの学校の生徒は僕も含めほとんどが学校から約1キロ離れた駅まで歩いて電車通学をしている。
…今日は三学期最後の日、授業が終わって僕は素早く走って行き、校門のところで彼女、甲斐路 優を待ち伏せした。
…やがてぞろぞろと校舎から生徒の群れが出て来て、その中に混じって彼女の姿を見つけた。
「甲斐路!…さん !! 」
僕はこの期に及んで戸惑いながらしかし思い切って声をかけた。
彼女は僕の顔を見て、意外そうな表情を示した。
「…乙掛君… !? 」
僕はここで踏ん張らなければ ! と思って必死に言葉を絞り出す。
「あの、ちょっと話があるんだけど…聞いてくれないかな?…」
出来るだけ、穏やかに平静に言ったつもりだったけど、明らかに彼女は訝しげな顔で、
「…急ぐんで、歩きながらで良い?」
と応えた。
…そういう訳で二人で駅に向かって歩きながらの会話になった。
「じゃあ思い切って告白するんだけど、僕と付き合ってくれないかな?」
正直僕はもう滝壺に身を投げるつもりでそう言った。言ってしまった。
「付き合うって、何に?」
「えっ !? 」
彼女の意外な返答に僕の方が戸惑ってしまった。
「乙掛君が何することに私が付き合うの?」
「えっ !? …いやあの、だからその、一緒に映画観たりとか、お出掛けとか勉強とか、デートとか…普通のカップルみたいに」
「…要するにカノジョになって恋愛しようってこと?」
「えっ、いやいきなりじゃなくても、最初は友達からとか」
僕があたふたする間に彼女は、キッ ! とこちらに顔を向けて言った。
「断る!」
…その瞬間、僕は歩みを止めてがっくりとうつ向き、そのまま呆然と立ち尽くしてしまった。
(…終わった…あっという間に、終わった!…)
全くなす術も無いままにあっけなく撃沈した我が身を震わせる僕を残し、彼女は歩行速度を落とさずにずんずん先に進んで行った。
「…どうしたの~っ?もう話は終わり~っ?」
しかし気が付くと、彼女は30メートル先で振り向いて僕にそう叫んでいた。
「えっ !? 」
…僕は顔を上げて彼女のもとに走って行った。…周りの下校生徒の何人かはそんな僕を見てクスクス笑ったけど、もうどうでも良いや!
…「ハァハァ ! …だって、今キッパリ断る!って…」
彼女に追いついてそう言うと、
「私が乙掛君の趣味に付き合うのはお断りだけど、乙掛君が私の趣味に付き合うってことなら、OKだよ!…ちょっと条件付きだけど!」
「…えぇっ !? どういうことか良く分からないんだけど」
「私に付き合う気があるか?ってことよ ! 」
何だか全く予想外の展開だけど、とりあえず付き合えるなら僕は万々歳だった。
「もちろん付き合うよ!…ところで条件ってのは?」
少し心を落ち着かせてそう言うと、
「バイクの免許は持ってる?もちろんバイクも!」
唐突にそう訊かれた。
「原付免許なら…それと、家に姉貴が使ってたスクーターがある。就職して今は家を出たから僕が乗っても大丈夫だけど」
戸惑いながら答えると、彼女は初めて笑顔を見せて言った。
「OK!じゃあ明日は私とツーリングに行くわよ !! 」
「ツーリング !? …って何処へ?」
予想外過ぎる話に驚きながら訊くと、甲斐路 優はハッキリと答えた。
「サキタマ古墳群!じゃ、よろしく !! 」
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