宇宙人を助けたら恩返しに棒人間みたいな化け物にされた件について
かげはし
プロローグ あっけない人間の最後
深夜零時を過ぎた時間。
社会人として生きている俺は、久々の休日にと飲んでいたビールが切れたため買い出しに向かって夜道を歩いていた。
行き交う人も少なく、寒さを噛みしめてコンビニへと急ぐ。
そんな時だった。
横断歩道で首輪も何もない野良の仔犬が車に轢かれそうになっていたのを発見してしまったんだ。
「あぶない!」
無我夢中だった。
このまま突っ走ればどうなるのかぐらいわかっていたというのに、目の前で失われる命に手を伸ばそうとした。
思わず身を挺して守ろうとした刹那、己の身体に感じたのは冷たい衝撃と激痛だった。
車に轢かれて身体が吹っ飛ぶ。何が起きたのか分からず、視界が揺らいで鉄臭いものが吐き出された。
キキキィィッッ――――と、車がどこかへ逃げていくのが見えた。
「わふぅ」
首も動かない身体で、必死に目だけを動かして見えたのは子犬がこちらを見下ろしている姿。
無傷なようで、安心した。
(よかった。無事だった……)
意識が薄れていく。
痛みも鈍く感じてきているから――――もしかしたら、このまま死ぬかもしれない。
後悔はあった。
なんで仔犬を助けてしまったんだろうって思った。
恋愛もせず働いて、趣味はビール飲むことぐらいで。
何もない人生だったと……。
「くぅん」
仔犬の真っ黒な瞳が――――不意に、爬虫類のように薄い膜が目を覆い、気味悪い瞬きをした。
(な、ん……)
犬が俺を見て、そのまま口を開いたんだ。
「んsgxkjfm」
いや何言ってんだよ、犬ならちゃんと鳴けよ……。
痛みが急になくなり、ただ視界が真っ暗に染まる。
何が起きたのか分からない。
しかしただ眠いということだけは分かった。
――――それが俺の、人間としての最後の瞬間だった。
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