第59話 聖魔大戦 ⅩⅦ

「やぁ、奇遇だね少年。君もこの町の探索かい?」



 どの面を下げて言ってくるのか。探偵さんはさっきまでのやり取りをまるでなかったことのように気さくに挨拶してきた。

 その横で申し訳なさそうな顔で会釈するどざえもんさんを引き連れて私達の前へと現れる。


 娘達の戦いには参加しなくていいのかと問いただしたいが、逆にいえば戦闘に参加しても邪魔と判断されたのかも知れない。

 だってこの人いつだって自由だから。



「そうですね。と言うより、何でさっきの今でそうやってフレンドリーに接することができるのさ? 私はまだ君たちをクラメンとして接する余裕があるけど、他の二人は違うよ。なんせこちらは君達から襲撃を受けてるんだからね?」



 チラリと後ろを覗き見れば、臨戦態勢に入るアンブロシウス氏に( ͡° ͜ʖ ͡°)氏。幻影達も威嚇してきている。当たり前だよね。あんなにも敵意剥き出しで襲ってこられたら気だって許せない。

 だと言うのに探偵さんはお互いに協力者じゃないかと肩を竦めるばかりだった。



「俺から言うのもなんだが、一応この人の独断行動だからな? 姉さん、シェリルさんからは情報収集は任せたと任が下っている。アキカゼさん達を見つけたのは偶然だが、俺は関わるつもりはなかった。この人が俺の意見を無視して連れてきたんだ。絶対にこうなるってわかってたしな」



 どざえもんさんの意見は尤もだ。

 しかしよりによってこの二人を情報収集に回すとは。

 シェリルも見る目があるものだ。

 どざえもんさんは独自に妖精発見にたどり着いた功労者であり、探偵さんに至っては親友。私と共に行動した一人でもあるから手の内はバレてるんだよね。

 そしてそれぞれ単独での能力が高い。

 娘じゃなくても彼らに情報は任せてしまうだろう。

 多分私だってそうするし。


 だがこれだけははっきりさせないといけないことがある。

 要は魔導書陣営と聖典陣営で区別して攻撃を仕掛けてきたのは他でもないそちらであると言うこと。

 確かに特性はそうであろうとも、やられた方の気分は悪い。

 だと言うのにこの人たちはなんに悪気も持たずにこうも気安く接してきている。

 理由は? 私だったら笑って許してくれると思っているからだろう。どざえもんさんはともかく、探偵さんならそう思っていても不思議じゃない。



「早速内輪揉めですか? そんなのに私達を巻き込まないでくださいよ」


「いやさ、確かに僕たちは君を襲ったかも知れない。でもさ、アレに関しては僕たちは君に巻き込まれたようなもんだぜ?」



 アレ。探偵さんは背中越しに親指を向け、背後に聳えるグラーキを指し示す。まるでその責任がこちらにあるとでも言わんばかりの口調だ。真実はいつもひとつとその瞳が物語っている。

 要は途中で横入りしてきたNPCの撃退方法について情報を寄越せとそう言うことなのかも知れない。

 いや、アレを撃退したらまた襲われるんでしょ?

 なんで協力しないといけないのさ。



「それは一か八かの賭けに出たんですよ。ワンチャン、狼狽えてくれてる間に逃げる算段でした。まさかこんなことになるなんて私も思いもしませんでしたよ」


「本当かな〜? この顔はこうなるって知ってて誤魔化してる顔だぞ?」


「そんなことがわかるのか?」


「こう見えて長い付き合いだ。彼の誤魔化す素振りはあるパターンがあってね。僕くらいになればとぼけているか誤魔化しているのかわかるのさ」


「よくわからんが、アキカゼさんは、嘘をついていると?」


「そう取ってもらっても構わない」



 ほらー、私達のやりとりを早速疑われてるじゃない。

 どざえもんさんを君のやり方に巻き込んじゃダメでしょ。

 


「適当言わないの。こっちだって何もわかってないんだから。一応こう言うのは手に入れたけど、欲しい情報はなかったよ」



 一部抜粋したグラーキの召喚方法をムー言語を自動翻訳した画像を添付してメールで送る。

 それを受け取った探偵さんがしっかり見つけてるじゃないのとこちらを睨んだ。



「確かに欲しい情報ではないね。けどこれが見つかったと言うことは、それに近しい情報だって眠ってるんじゃないの? 例えばお帰りいただく方法とかね?」


「それを今から探そうとしてるんですけどね」


「( ͡° ͜ʖ ͡°)おい爺さん、正気か? 敵と手を組むなんて。腹に何を抱えてるかわからんぜ?」


「そうだとも。つい先ほどもそのようにして襲われた。私は構わないが、( ͡° ͜ʖ ͡°)氏が敵対視する気持ちもわかると言うものだ。それとドーターも聖典の幻影と折り合いがつかないようでな。私は是非とも辞退したいところだ」



 うちのメンツはそれぞれの事情で聖典陣営を疑わしく思っているようだ。ま、彼らのやってきたことを鑑みればね。私だって気を許せないよ。

 でもそれだけじゃあ攻略の糸口は見つからない。

 それは魔導書陣営だからこそ召喚方法が見つかったように、聖典陣営だからこそ撃退方法が見つかるのではないかと考えられるからだ。


 それがそれぞれの陣営にとっての利点になる。

 そういう意味では陣営によって用意される回答が違うのも納得できた。



「嫌われてしまったかな? 僕としては君の娘さんの命令に従って動いて居ただけなのにね?」



 ことあるごとに自分は悪くないと仕草で訴えてくる探偵さん。

 その行動の逐一が君の何もかもを見透かしてるよ。

 ほぼ独断行動で動いて失敗してはうちの娘に責任を負わせているのだろう?

 全く勝手な人だ。普段から私が君の息子に責任を押し付けてる意趣返しだろうか?

 それはそれとして足止めを食らっているのもまた事実。



「それにこちらも攻撃手段を得たのはいいが、表面的に攻撃は効いているように見えて倒す術は今のところ全然見えていない。俺たちはその決定打が欲しくてこうして探索をしにきたんだ」


「じゃあ聖典陣営で勝手にやっててくださいよ。何でこっちに合流する必要があるんですか。それとも何? 私の周りに居れば勝手に情報が転がってくると思ってるんですか?」



 探偵とどざえもんさんが顔を見合わせてから苦笑いする。

 まるで自分だけわかってないみたいな疎外感を覚えた。

 悪気はないのだろうけど、そういう態度が人を傷つけるんだからね?



「うん、まぁ。君のユニーク摘発率は全プレイヤーの中で随一だし? 今回もそれにあやかろうかと」


「さっきの今で虫が良すぎると思わないの?」


「まぁね。うちの大将は誰に似たのか頑固で柔軟な思考ができない。だから僕たちがこうやってサポートしながら円滑に後押ししてるのさ」



 ドヤ顔で他人の傷に塩を塗り込む探偵さん。

 今日一の嫌味に私は苦笑いする。

 探偵さんのそういうところ嫌いだよ。

 でもそれって特大ブーメランだって知ってた?



「シェリルは私を反面教師にして育ったんだ。似てると言われたらあの子は怒るよ」


「表面上はね。でも内面はどうかな? 疎遠だったとは思えないくらいにベッタリじゃない? ツンデレって言うの? 彼女は距離感の詰めかたが下手くそなだけさ。ああやって何かにつけて君を悪者にしてるけど、内心は感謝仕切りだと思うよ?」


「それ、今の話に関係ありますか? うちの娘を勝手にリサーチして」


「リサーチも何も、見てればわかるよ。うちの奥さんも似たようなところがあるからね」


「そういえば君の奥さんも随分と変わり者だったような……」


「おっと、それ以上ウチのプライベートな部分に突っ込まないでくれ。話が脱線する」


「先にうちのプライベートに土足で踏み込んできた人が何を言うんですか。こちらの情報は先ほど渡したものぐらいですよ。交渉をするならそっちも情報を出してくださいよ」


「そりゃ尤もだな」


「もらってばかりじゃダメか。ならばこちらも鬼の子を切ろう」



 取り出されたのは一枚の画像、フレーバーだ。

 それはシェリルあてに送ってさらに身内で拡散されたもの。

 それはかのグラーキが封じ込められていた画像で、しかしその画像には封印が解ける前と後とで内容が大きく変わっている。

 要は影が一切見えていないというものだ。

 グラーキが表に出てくる前までは確かに巨大な影が潜んでいた写真が、今ではただの風景画でしかなかったのだ。

 それに気がつくこの人も大概切れ者である。

 ただ交渉が相手の神経を逆撫でするものでなければね。


 まるで尋問する警察官が犯人に自白を促すような口調で接してくるんだもん。悪いのが私だと決めつけてね。これじゃあ誰だって口を割らないんじゃないかな?



「情報と言えるほどのものではないけどね。僕は少年の首から下げてるカメラが怪しいと思うんだ。それ、神話武器でしょ? さっきから僕のベルトから下げた鈴が鳴り止まない」



 相変わらず着眼点が鋭い人だ。

 ただのフレーバーとは考えずに、これに狙いを絞ってきたか。


 軽いジャブで家庭の事情を暴露するのさえやめてもらえれば本当に優秀なんだけどね、この人。

 ほら、どざえもんさんが何ともいえない顔で見てるよ?

 一応弁明しておくとしよう。



「そうだね、その人は味方だと非常に頼りになるんだけど、なにぶん常識が足りてない。要は意地が悪いんだ」


「君にだけは言われたくはないぞ、少年。アトランティス人にツルハシを打ち込んだ件はいまだに理解が及んでないんだからね?」


「終わったことをグチグチと。結果良かったんだからいいじゃないですか」


「いいや、君はもう少し巻き込む周囲の人たちのことを考えた方がいいね」


「何をー」


「やるかい?」



 売り言葉に買い言葉。

 結局は鬱憤の払い場所として相手を選び、軽く殴り合ったら雑談を交えて議論を交わす。


 結局情報が足りないのはこちらなのだ。



「( ͡° ͜ʖ ͡°)なんだ、この茶番?」


「さぁ。当人でなければわからぬこともあるのだろう」


「親友と聞くが、案外似たり寄ったりなのだろうな」



 私と探偵さんから少し離れたところで部外者のように垣根を作る三人。すっかり仲良しになっちゃってまぁ。

 ま、探偵さんは敢えて私からヘイトを稼いでおいて、さりげに発散する場所の提供もしてくれるのだ。


 ストレスは溜め込みすぎると思考を迷宮入りさせてしまいがちだ。なので適度の発散は有効的。

 今は陣営という立場上敵と味方ではっきり分かれてるが、どうせ後数十時間で元の世界に放り投げられるんだ。

 最後くらい一緒に遊ぼうと情報のすり合わせをする。


 探偵さんは相変わらず自分から情報を出さないスタイルなので、こちらも適度に出さずに匂わす程度に留めておく。

 向こうからしたら私がうっかり漏らすのまで計算してるけど、事前に把握しておけばそんなミスは犯さない。



「と、いうわけなのだけど?」


「ふむ。じゃあ試しにそのカメラで再度撮影してみてはどうかな?」


「確かにそれは有効そうですね。でも今すぐですか?」


「何か問題あるかな?」


「問題点しかないんですよねぇ。もしこれがうまくグラーキを取り込んだとします」


「うん。そうすれば世界が少し平和になるよね。いい事じゃない?」


「それで拠点の支配権はどちらに移るんでしょう?」


「僕たち、と言いたいところだけど君が今現在グラーキよりも権利を持ってそうだから君じゃないかな? その場合はもちろん略奪し返すけど」


「だよねぇ。その場合ここにいる五人掛かりでって事でしょ? こちらが三人に対して一切手を抜かずに対応するんでしょ?」


「そりゃもちろん。手を抜かずに全力で行かせてもらうよ? 君たちのステータスも検証が進んでるからね。今度こそは大手を振って奪い返してみせるよ」


「じゃあ嫌です」



 即答だった。当たり前だ。

 何故私達が不利になることを了承すると思っているのか。

 一度この人の頭の中を覗いてみたい。

 それぐらい身勝手の塊みたいな要望である。



「そりゃ残念。せっかく僕たちが有利になると思ったのに。君も友達想いがない奴だね」


「ね、この人こうやって自分が楽になるためなら親友でも裏切る人でなしなんです」


「( ͡° ͜ʖ ͡°)そういう人種だって知ってて付き合ってるんじゃないのか」


「類は友を呼ぶと言うやつだな」


「|◉〻◉)ハヤテさんも普段からそう思われてますよ?」


「えっ」


「|◉〻◉)えっ」



 まさかの援護射撃がフレンドリーファイアで痛恨の一撃を喰らう。背中から刺されるなんてレベルじゃないですよ?

 それに私がいつ他人を利用して自分の理を得たって言うんですか。



「|◉〻◉)犬のじいじ、いつもハヤテさんに恨言言ってますけど、それってそう言う意味ですよね?」


「あ、うん。あの人はね、それをヨシとしてるところがあるし私もそれに乗っからせてもらってるんだ。彼は自分と平等に扱ってもらえることに願望を抱く人でね? 私はそれを叶えてあげてるんだよ」



 ここにきてジキンさんの話題が飛んでくるとは思ってなかった。あの人はほら、私に嫌な役割押し付けてる張本人ですし、少しくらい私の気持ちを知ればいいんです。だからノーカンですよ。



「いやいやいや。僕は彼の気持ちわかるなー。僕も大概な目に遭わされたけどね、やっぱり一番の被害者は彼だと思うよ。なんせゲーム内で一番のフレンドさんでしょ?」


「君だって結構迷惑かけてるじゃない」


「生憎と君に比べればまだ情状酌量の余地はあるかな?」


「|◉〻◉)ハヤテさんはノータイムで殴られても文句が言えないくらい迷惑かけてますからね」


「スズキさんはどっちの味方なのさ」


「|ー〻ー)僕は中立な立場なんでー」


「そういえば魚の人はどうしてこっちにいるんだ?」


「|◉〻◉)えっ」



 ふと、どざえもんさんが当たり前のように混ざり込んでいたスズキさんの存在に気がついた。

 探偵さんや( ͡° ͜ʖ ͡°)氏、アンブロシウス氏はまだ気がついて無かったのかとその存在を懸念する。



「|◉〻◉)僕はハヤテさんの付き添いですよ!」


「いや、でもここイベントエリアだし。一般のプレイヤーは入ってこれない筈だぞ?」


「( ͡° ͜ʖ ͡°)なぁ、あんた。そいつはルルイエ異本の幻影だぞ?」


「|◉〻◉)b シーー」


「( ͡° ͜ʖ ͡°)今更隠すことかよ。さっさとバラしちまえ」


「ふむ、そうなのか。しかしどうやって幻影がプレイヤーの権限を使ってクラン入りを?」



 どざえもんさんの疑問は尽きないようだ。

 確かにNPCにそこまでの権限はないよね。

 あまり深く考えたことはないからわからなかったけど、不思議だね?



「そういえばそこら辺は私も知らないなぁ。どうやって?」


「|◉〻◉)ふふふ。そこは秘密です。ただし皆さんの幻影も僕くらい頑張ればそれくらいはできると言うことは話しておきましょう!」



 この人、バラすときは勢いよくバラしますよね。

 どざえもんさんはとっくに知ってたと思ったんだけど。

 いや、この人はログイン時間がまちまちなんでその辺の情報もあやふやだったりするのか。

 下手したらまともに情報すら集められてるのかも怪しいし。



「じゃあウチのスプンタやアンラも?」


「出来るんじゃないですか? 知りませんけど。取り敢えず一度世界を支配するくらいのガッツは見せないとですけど」


「それは先が長そうだ。シェリル君は上手くやったものだよ。そのうち彼女のクランにシヴァとか入ってきたりね?」


「|◉〻◉)流石に神格は来ないんじゃないですか? 来れるのは僕みたいな幻影くらいですよ。影分身を覚えてからきてください」


「じゃあウチのは無理だな。権力争いに興味がなさすぎる」


「聖典陣営はそういう人達多そうですよね。あくまでも私たちに対してのカウンター的存在というか」


「( ͡° ͜ʖ ͡°)いい加減探索の話しようぜ、お前ら。さっきから脱線しすぎだ。茶番やるなら俺たちが居ないところでやってくれ」


「スズキ、目立ってる」


「スズちゃん、聖典の幻影とも仲良しなの?」


「|◉〻◉)ふふふ」



 魔導書陣営の幻影からやや嫉妬を浴びるスズキさん。

 本人は今日一のドヤ顔で勝ち誇っている。同じ陣営の幻影同士でもマウントを取りたがるのもどうかと思うけど、やっぱりこの子も特殊なんだろうね。


 出てくると話が明後日の方向に飛ぶという意味で。


 それはさておき、私に向いていたヘイトがうまいこと流れてくれたぞ。

 そして陣営同士の険悪な雰囲気さえも拭いされたのは大きいぞ。


 前後で結構ドンパチとやり合ってるのもあって、足並み揃えるのは無理かなと思ってたんですよね。



「そういえば探偵さん、ジキンさんの息子さん見た?」



 物の流れで聞いておく。

 先程ジキンさんの話題が出たのをきっかけにくま君の消息が行方しれずになっていることを明かした。

 残り少ない時間のうちに探せるだろうか?

 


「くま君? そう言えばそっちの陣営だったっけ? あんな目立つ風貌、見たら記憶に残るから見てないよ。というか人里に降りてこられるの? 僕達は神格の影響でどうしても人類圏でしか活動できないから」



 あぁ、うん。無理じゃないかな?

 一応それ以上にやばい生命体が跋扈していたとしても、人間が営んでいる世界だ。殺人熊を野放しにしている住民がいるとも思えない。

 こうなってくると人間意外を選んだプレイヤーって結構ハードモードなのでは?



「なんだ、まだ合流出来てないのか? 人探しは得意だぞ? 同じムー陣営のよしみで手助けしてやろう」



 そこでどざえもんさんが人肌脱いでくれた。

 彼ぐらいじゃないかな? 聖典や魔導書の陣営の括りで見ないで手助けしてくれるのは。やはり持つべきはクラメンさんだよ。



「良いんですか?」


「この人が迷惑かけた礼も兼ねてな」


「ですって、探偵さん。自分の尻拭いを他人にしてもらって恥ずかしくないんですか?」


「えぇ、僕?」



 そこでさっきまで煽られてた仕返しをしてやると、困惑した表情を返される。この人ってば、自分のしでかしに無頓着なんですから。



「わかったぞ、こっちだ。意外と近くにいるみたいだ。案内する」


「え!?」



 情報を渡してくれるだけで良いのに、どざえもんさんが探索そっちのけでくま君探しを開始してしまった。

 良いのかなぁ?

 探偵さんの顔色を見るに良くはなさそう。



「ちょっとちょっと、そっち始める前に街を探索しないと。リーダーにどやされるよ?」


「街の中には何もなかった。外の探索を開始する、送信。と、これで良いんだろう?」


「( ͡° ͜ʖ ͡°)良いのか? 俺たちの都合に巻き込んでしまって」


「増えたところでどうせ一人だ。もう一人が合流するなら考えるが、5対4ならそれほどハンデにもならないだろうと考えた」



 どざえもんさんの考えは非常にありがたいけど良いの?

 一人だけ良くない顔をしてる人がいるけど。

 誰であろう探偵さんだ。この人、勝てる試合しかしないから、状況が悪くなるのを黙って見過ごさないんだよね。

 仲間である時は頼れるのに、敵に回すとこれほど厄介な敵はいない。けど、そのやり方に全員が納得してくれてるわけもなく……こうやって反感を買う場合もあるのだ。



「君はせっかく掴んだチャンスを棒に振るつもりか!?」


「俺はそうやって生きてきたんだよ。特に地底の龍人様はそういう考え方を好むのでな。それに浸っているうちに俺もまたそういう考えを持つようになった」


「あー、もぅ! これだからソロで偉業を達成する人種は!」


「災難でしたね」


「今日一の嫌味をありがとう。君にだけは言われたくなかった」


「|◉〻◉)プークスクス」


「君も主人に似て煽ってくるね? 覚えてろよ」



 おーこわいこわい。

 兎にも角にもこのまま戦線離脱を図るべく、私達は行動を開始した。

 最悪グラーキ退散の情報が取れなくてもくま君と合流できるのならワンチャンある。

 写真撮影はうまく逃げ切った先で撮れば良いだろう。

 あんなに大きい体なんだから、場所が少し遠くなっても良いはずだ。



 ───そう、思っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る