第37話 幻影の成長率

「と、言うわけだ諸君」


「( ͡° ͜ʖ ͡°)いきなりなんの話だよ。急に呼び出したと思ったら当たり前のように語りやがって」


「まぁまぁ( ͡° ͜ʖ ͡°)さん。お義父さんの事です。今までの経緯を考えてみれば自ずとわかる事ですよ。例えば面子を見て魔導書陣営、かつ最近の出来事といえば聖典側の過去改変だ」


「( ͡° ͜ʖ ͡°)なるほどな。って主語抜いて語りかけられもわからんわ」


「アキカゼさんがいつも通りというのはわかった。だが私達を呼び出した理由について改めて聞きたいな」



 集まったメンバーから開口一番不満の声が上がった。

 もりもりハンバーグ君、( ͡° ͜ʖ ͡°)氏、アンブロシウス氏だ。

 今回森のくま君は誘おうと思ったが連絡が取れないのでまだ何かに巻き込まれてる途中だと思って配慮した。

 


「要はそろそろ君たちも過去改変に携わっても良いんじゃないかと思ってね」


「( ͡° ͜ʖ ͡°)ああ、その件か。ウチの神様はな、そこら辺興味なさそうだし」


「ウチの神様はどうかな? 僕としてはどんな行動が彼に影響するかも判断しかねてるんですが」


「私はそうだな。既にアキカゼさんの神格との不和は解消されてる。敵対関係を解消されてる時点でハスターのやり残した事はなさそうだ」


「むむ、消極的ですね。しかし君たちの幻影はどうかな?」


「そこで僕が来た」



 ぬるり、と影からスズキさんが現れる。

 いや、そこはルリーエが来るところじゃないの?



「ルーちゃん!」



 釣られるようにして( ͡° ͜ʖ ͡°)氏の幻影、サイクラノーシュ君がやってくる。しかもPVの時の衣装を纏っている。



「( ͡° ͜ʖ ͡°)あん? サイクラノーシュ。なんだその衣装」



 普段の蛮族っぽいファッションから一転、ピュアなドレスを纏った姿は可愛さをアピールしている。

 それを訝しんで( ͡° ͜ʖ ͡°)氏がこぼす。



「もらった! 着てちゃダメか?」


「いや、気に入ってるんなら別に良いけどさ。でもそっか俺があげた服はもう飽きたか」



 ( ͡° ͜ʖ ͡°)氏が残念そうに言うと、泣きそうな顔サイクラノーシュ君がスズキさんと( ͡° ͜ʖ ͡°)氏を見比べてワタワタしている。

 スズキさんはサムズアップしながら良い顔で口角を上げた。

 ああ、もうめちゃくちゃだよ!



「ルリーエ、イジワル、よくない」


「やだなぁ、全然、そんな事」


「顔がいやらしい」


「顔が!? ちょま、ぐぎぎぎ……エラはそっちに曲がらな……ぎゃーーー!」



 見かねたセラエ君が仲裁に入る。

 そして無慈悲なまでにスズキさんをバッサリ切り捨てた。

 その上でスズキさんの顔を掴んで左右に引っ張っていた。


 それを見ていたサイクラノーシュ君がオロオロしている。

 普段の破天荒っぽさはすっかりなりを潜め、今じゃすっかり弱気キャラだ。

 今まではそれが出ないように( ͡° ͜ʖ ͡°)氏が引っ張ってやっていたのだなぁと感心した。

 その懐き方は親子のようで。見ていて仲睦まじい。



「うーん、仲睦まじいね。うちの子も混ぜてくれると嬉しいんだけど」



 同じような意見を述べるもりもりハンバーグ君。

 その肩には彼の幻影がゆらりと揺れた。

 そこが定位置になってるのだろう、もりもりハンバーグ君の髪の毛をハンドルがわりに引っ張って遊んでいる。

 しかし目線が頭からスズキさん達に向かってるのが気になるのか、もりもりハンバーグ君から声をかけた。


 この中では一番新参だからか声がかけにくかったのかもしれない。

 特にスズキさんやセラエ君みたいに神格が兄弟関係でもなく、サイクラノーシュ君のように神格が従姉妹同士でもない。

 だからか一緒にいても距離が遠く感じてしまったのだろう。



「一緒に遊ぶ?」


「いいの?」


「勿論! って言うか僕たちもう同じ仲間でしょ?」


「うん!」



 もりもりハンバーグ君の幻影ゆらめくと、気がつけば足元に降り立っていた。



「マスター、あそんでくるね!」


「うん。いってらっしゃいヤディス」



 手を引かれ、スズキさん達の輪に混ざるもりもりハンバーグ君の幻影。

 ヤディス君というのか。やはり幻影は神格の住処の名前がつけられるようだね。



「スズキさんはイジメないようにね」


「|ー〻ー)信用ないな~」


「信頼はしてるけど、君の場合は日頃の行いがね?」


「ふーんだ! いこ! 向こうで衣装チェンジするよ」


「いしょう?」


「そそ。普段着と違う自分を見せてアピールしなきゃ」


「あぴーる?」



 何やら企んでるようだ。

 幻影達が仲良さげでいいのか悪いのか。

 見てる分には可愛らしいんだけど、彼女達の本体はもっと冒涜的な場所だったりするんだよねぇ。



「( ͡° ͜ʖ ͡°)んで? 幻影達に話聞くんだっけか? 向こうで好き勝手やってるようだが」


「準備があるんでしょう。見た目こそ子供っぽいですが、中身は数億年も生きてるような老獪です」


「ヤディスも?」


「どのように成長するかはヤディス君次第だよ。その場所にずっといるだけならたいして成長しないだろう。けれど誰かと一緒に行動することで開ける道もある」


「あの子にも目標ができるでしょうか?」


「勿論だとも。ウチのスズキさん……もといルリーエは普段あんな感じでおちゃらけてるけど、幻影として私の前に出てきた時は別人かと思うほどに感情を失っていたよ。スズキというNPCで活動していた記憶が今の彼女を彩っている。だからね、元がどんなであろうと、その後の経験でどうとでもなるんだよ。過去がどうであれね?」


「積み重ねるべき経験とはそういう事ですか。確かに僕は慎重に行動しているのであまり冒険らしい冒険はしてこなかったですねぇ」


「ならばいっぱい旅をさせてあげなさい」


「その第一歩が幻影同士の付き合いだと?」


「( ͡° ͜ʖ ͡°)ウチのサイクラノーシュがいつの間にかおかしくなってたのはアキカゼさんの所為か?」


「私、と言うよりは私の幻影だね。PVの件だって後から知ったんだよ?」


「今のセラエも彼女と接するようになってから随分と年相応になっている。彼女もずっと一人寂しい時間を過ごしていたのだろうね。私では彼女の傷を癒すことはできないと思い込んでいたが……」


「それは勘違いも甚だしい。彼女達とはもっと肉親のように接してあげなさい。ウチのスズキさんのようになれとは言いませんが」


「あそこまでは流石に……遠慮したいと言いますか」



 もりもりハンバーグ君が目を伏せながらヤディス君の未来予想図を思い浮かべて苦笑いする。


 セラエ君がスズキさんのようにはしゃぐ光景を思い浮かべたのか、アンブロシウス氏もこめかみを揉み解しては首を横に振っていた。


 彼らにとってどれほどの悪夢なのだろうか? 今の姿より成長しすぎた姿は。

 まぁ日頃の行いが悪いからね、彼女の場合。

 


「遠慮しなくてもいいのに。まぁ彼女はやりすぎだと私でも思っているよ。手綱をきちんと握れているか怪しくなる時がある」


「ハヤテさーん」



 と、ベルト持ち同士で語り合っているところにスズキさん達の準備が出来たようだ。


 どこから用意したのか舞台があり、そこでお揃いのドレスを纏って各々踊っている。

 踊りが得意じゃない幻影は、タンバリンなりサイリウムを振って賑やかしをしていた。

 舞台中央ではスズキさん(ルリーエver.)が歌を披露している。


 そんな彼女を見て、私達は拍手をしながらアンコールを送った。ぶっつけ本番でありながら、全員が一つになった瞬間である。



「みんな、今日は特別コンサートに来てくれてありがとう!」



 まるで今日のために準備したと言わんばかりだが、セラエ君やらサイクラノーシュ君、ヤディス君は戸惑っているのが印象深い。

 完全にルリーエ一人だけで盛り上がっている。

 全く誰に似たのやら。

 そうこぼすとみんなして私の顔をじろじろ見出した。



「何ですか?」


「( ͡° ͜ʖ ͡°)いや、間違いなくアキカゼさんの影響がでかいなって思っただけだ」


「確かに。これほどの濃い経験を積み重ねられたのはアキカゼ氏ならではだと思う」


「流石はお義父さんです。まだまだ見習わなくてはいけないことばかりですね」


「え、私が悪いの?」



 みんなしてうんうん頷く。



「( ͡° ͜ʖ ͡°)だが、どうやって育てていくのか改めて指標は出来たな。良くも悪くもアキカゼさんを反面教師にさせてもらうぜ?」


「素直じゃないなぁ。普通に教師として受け止めてくれていいのに」


「いやいや。それをそのまま受け止めて、ドーターがああなってしまっては困るからな」


「右に同じ」


「だって?」



 ルリーエに尋ねると、いつも通りの口調で愚図る。



「|◉〻◉)えーー! 皆んな、僕を目標にしてくれてもいいんですよ?」


「あはは。あたしはルーちゃんみたいにはなれないかな?」


「無理。ルリーエの真似、恥ずかしい」


「|◉〻◉)恥ずかしい!? ちょ、酷いよセラエちゃん!」


「わたし、がんばってみてもいい?」


「|ー〻ー)おーよしよし。ヤディスちゃんは捻くれずにまっすぐないい子ですね~。僕が君を一人前の幻影に育ててあげますからね~?」


「はい、ししょー!」


「|◉〻◉)師匠。……いい響きだ。フハハ!」



 良いのかな? 彼女に任せて。

 何となしにもりもりハンバーグ君に向き直る。



「いいの? スズキさんに任せて?」


「僕一人じゃ彼女を変えられないと気が付きましたから。ウチの娘ですら妻の命令をこなすマシーンだった。でもね、マリンちゃんと一緒に遊ぶようになってからようやく年相応の表情を見せた。だから自分の手から離すことも大きな成長だと思うようになったんです」


「そう思ってるんならいいんだけど、でも彼女はマリンの数倍おかしいよ? 私が言うのもあれだけど、責任は持てないからね?」


「あはは。だからこそどう変わるのか楽しみなんですよ。僕だけじゃ変わらなかった彼女がどう変わるのか。その変化を見て彼女が何に興味を示すのかを確かめたいんです」


「そうか。じゃあお試しで預かる事にするよ」


「お願いします」


「任された」



 と、言っておきながら私はノータッチだが。

 結局魔導書連合で過去の改竄を行う人は居ないみたいだ。

 全員が全員、クトゥルフさんみたいに熱い感情をたぎらせてるわけでもないようだね。



[神格にとってそれぞれ思惑もあるだろうからな。今はまだ動く時ではないのだろう。余ほど切羽詰まった環境に置かれた存在はいないものだ]



 そんなものですかね?



[そんなものよ。神格にとって多種族などそれほど重要ではないからな。気にかかるのは同格かその眷属ぐらいよ]



 なるほどねぇ。

 魔導書の神格だからと全ての存在が戦争に関して興味を示すわけでもないのか。

 ガタノトーアとか絶対に敵対したくない能力持ちだけどね。

 神格の方はまだ外の世界にそれほど興味がないようだ。

 ヤディス君の成長に合わせてどのような変化を遂げるか楽しみだね。



[逆に余は心配だがな]



 苦労させられてきた旦那としてはそうなのだろう。

 私からは何も言及せずに思考を終える。


 さて聖典の方はこれからどんな動きをするのだろうか?

 よもやこのままで納得するわけがないのは目に見えている。


 聖典側が連合を組んだように、此方はこちらで仲良くする。

 向こうと違って誰が次の天下を取るとか考えてないので仲はいい方だ。

 勿論神格がやる気を出したなら私達はサポートするつもりだよ。誰がトップを取った時に世界にどのような変化が起きるか、そっちの検証もする必要があるからだ。


 良くも悪くも神格による地上の変化は見過ごせないからね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る