第62話 ゲーム内配信/寄せ集め連合 Ⅵ

 オメガキャノン君の成功を皮切りに、私達は次々にレシピの欠片を拾い集めていく。殆どがレムリア言語で暗号化されていたので私が翻訳をし、それを元にオメガキャノン君が仕上げていった。


 そしてついにそれは完成する。

 一見するとサザエのような尖った形をした銃と言うにはあまりに歪な物だった。



「オメガキャノン、それが?」


「ええ、100%正真正銘、レーザーガンですよ。レシピは全て頭の中に入ってますので、素材さえくれたら量産します」


「やはりあの黄金の石は核でしたか」


「ですね、あれがビームの生成機です。時間経過かビームを吸収することによってチャージされ、横にあるこの丸い穴の回数だけ打ち出すことができます」


「つまり最大で7発と?」


「はい」


「じゃあ供給するから受け取れるようにして」



 私は懐からレムリアの器を取り出して構える。

 オメガキャノン君は銃の後方につけられてるツマミを回して充電モードにする。

 さっきまでサザエみたいな形の銃は上下に開いて盾の様な受け皿になった。

 そこにビームをビビビと流し込むと、残弾数がみるみる回復していった。

 おおよそ10秒でフルチャージされる。



「レムリアの器持ってるとチャージ早くて良いですね」


「ね」



 私とオメガキャノン君はニコニコしながら語り合う。



【そもそもレムリアの器あればレーザーガンが要らない件】


「そんな事ないぞ。ビームを扱えるのとビームを理解して作れるは大きく違う。俺は一度汲み上げた手前、発生源と発生経路を全て把握している。つまりモデルに縛られずにレーザー兵器を作れるようになったんだ」


「オメガキャノン殿、つまり拙者の刀にもつけられると?」


「素材さえありゃな」


「ふぉおおお、是非!!! 是非!!!!」



 村正君は瞳をキラキラさせながら懇願した。

 それを片手で払いながら貧乏人に用賀なうと言いたげである。

 しょぼくれてる村正君の肩を叩き、とあるアイテムを手渡した。アトランティス鋼である。



「これをあげるからこれで作ってもらいなさい」


「良いのでござるか!?」


「良いよ。村正君もせっかく張り切って攻撃してくれてるのに、耐久減らせなくて踏んだり蹴ったりだろう?」


「そうでござる、当たりでござる。アキカゼ殿はよく見てくれるでござるな。父がすごい人だと言っていたのがよくわかるでござる」


「と、いうわけで素材出すから作って?」


「はいはい。素材さえありゃ文句ないっすよ、こっちは」



 オメガキャノン君は両手を上げて降参のポーズ。

 そしてついに村正君の刀の峰の部分にビームが出る仕掛けが施された。

 彼女の愛刀はクラン『朱の明星』で作ってもらったらしい。

 彼女のサイズに合わせて頭身を短くし、その上で切れ味を極限まで高めたのだそうだ。

 そこにさらにビームソードの要素まで加わって、まさに天下無双と言いたげだ。



「良いなー、村正ばっかり。俺の弓も頼むぜ」


「僕の剣もお願いします」


「じゃあ素材は私が出すよ」


「アキカゼさんは素材の価値を理解してなさすぎます」


【草】

【マッドドクターがツッコミに回ってるぜ?】

【マッドってなんだっけ?】

【アキカゼさんにとって取るに足らないもの】

【古代獣の飼い主は格が違った!】

【古代獣の飼い主になる前からその素材持ってたんだぜ?】

【そういやそうだった】



 そんなこんなで私達は装備を一新し、レーザーガンを抱えて古代獣討伐令に参加した。

 このフィールドはレイドボスなので6人以上居ても問題なく入れたりする。

 1人から最大で30人まで。

 シェリル達が低人数で挑んでいるのは単純に取り分が行き渡る様にだとか。



【さぁ、始まりました。明らかな無理ゲーが】

【陣営なしで勝負仕掛けるのは流石に無謀すぎるよ】


「今回は特効武器のお披露目ですからね。勝てなくて良いんですよ。ね、みんな?」


【草】

【アキカゼさんだけ生き伸びそう】

【それ】

【空飛べるのアキカゼさんくらいだし】

【ショートワープも持ってるし】

【つくづくスキルが常人離れしてるから】

【それだけじゃ泥試合になるってのは以前の配信でしれただろ?】


「まぁ、空を飛んでても私が叩き落としますので、皆さんはその隙に追撃を」


「まぁそれしかないよな」


「流石に拙者も空は飛べぬゆえ」


「俺のレーザーガンが火を吹くぜ!」


【空の王者に制空権なんてなかった】

【相手のフィールドなのにね】

【リンドブルム君可哀想】



 そうこう言ってる間にリンドブルムが現れた。

 太陽を遮る様に私達を包み込む巨大な影を落とす。



「敵は頭上! みんな散って!」


【無茶言うな】

【リンドブルム君、ピョン吉より大きいんだぜ?】

【ショートワープとかなきゃ逃げきれない】


「なら!」



 私はみんなから離れる様にショートワープで移動し、召喚する。



「ピョン吉! 尻尾を掴んで叩き落とせ」


[ゲェエエコォオオオオオ!!!]



 ビヨーンと伸ばした舌を尻尾に巻きつけて、吸い込み攻撃を仕掛けながら寄せ集め連合の真上より少しズラして叩き落とす!



「今です!」


「新陰流秘奥義!!!! 竜巻裂き!!!!」



 村正君は縮地ばりの間合いの詰めかたで肉薄し、ビームを生やした峰を尻尾の先端に突き刺すと、人参の皮でも剥く様に動き回る!

 あっという間に尻尾の桂むきが完成した。



「肉なら物理が効くな! ナイスだ村正!!」



 ジャスミンさんが爪を奮いながら尻尾に飛び付き、



「斬!!!!」



 陸ルート氏がもうそれビームソードだよねという剣を振って尻尾を一刀両断して見せる。

 パスカル君は戦闘スキルを持ち合わせていないそうなので逃げ回り、オメガキャノン君がバイクみたいなので移動して、リンドブルムの頭……というより脳天に目掛けてレーザーガンを照射した。それも7発全部だ。その結果、

 


<リンドブルムの討伐を達成しました>



【草】

【リンドブルムーーー!!!】

【お前、お前……もう少し粘れよ】

【えらい早く決着ついたな】

【早すぎる死】

【本当に古代獣の名折れだな、こいつ】

【特効武器が強いのか、陸で生活できないこいつが弱いのか】

【尻尾掴まれて頭から落下したら気絶しても仕方ない】

【首が長いからしなる様にして頭ぶつけたからな】

【そんなふうに落とされることも今までなかったんだろうよ】

【タイムなんぼだ?】

【00:00:30だって】

【やべー】

【これはシェリルさんもぷんぷんですわ】

【配信ごとに伝説作らないと気が済まないのか、この人】

【前回のカエルソロもやばかったが、今回も凄いな】

【殆ど足手まとい6人で始末してるからな】


「足手まといだなんて。むしろトドメ刺したのはオメガキャノン君だよ?」


【だよなぁ】

【尻尾切っても大して耐久減ってなかったし】

【レーザーガン7発で耐久全部削ったのか! えっぐいなぁ】

【多分気絶中にレーザー当てると効果に倍率かかるとかそんなんじゃない?】

【ありえる】

【迷わず7発ブッパするこいつもこいつだよ】

【それ】

【ダメ元だからって後先考えてなさすぎんだろ】



 相変わらずコメント欄は騒然としているね。

 今回の配信も大成功といったところだろう。

 前回の様に特効武器の製作には錬金術のスキル持ちが必須なのは大体どこも同じな様だ。

 そういえばファストリアの水銀武器もオクト君に頼りっぱなしだったしなぁ。



「はい、今回の配信はこれにておしまい。寄せ集めでも全員が同じ目的を持てば古代獣だって討伐できる。それがよく分かりましたね!」


【まだ視聴中だよ?】

【勝手に終わるな】

【いや、古代獣に勝利できたのはアキカゼさんのアシストあったからでは?】


「それは些細なことだよ。最後に一人一人に今回の探索を通じて感想をもらおうか。ではジャスミンさんから」


「なんというか、アキカゼさんのアドバイスで今後の方針が決まったよ。私たちに足りないのは気持ちなんだなって今回の配信を通じて教わった気がした。そして的確な指摘。アキカゼさんは私達の手柄にしてくれたけど、それは違うとうちのメンツは全員が思っている。今回たった一日でここまで進めたのは間違いなくアキカゼさんの力あってのものだ。これからは今日の探索で学んだことを今まで以上に胸に刻んで進もうと思う。それまでは陣営に参加するつもりはない。以上だ」


「はい、ありがとうございます。それでは次、モーバ君」


「彼女募集中です!!」


「だ、そうだよ村正君?」


「そこでどうしてこいつが出てくるんですかアキカゼさん? 俺はこんなちんちくりんより、ボンッキュッボンなねーちゃんの方が好みなんだけどさー」


「そんなおなごは居ないでござる。モーバ殿はもう少し現実を見ると良いでござる」


「だって?」


「うるせぇえええええ、わかってるんだよそんなことはあああああ!!!」


「次、村正君」


【スルーされた】

【相手するだけ無駄だからな】

【そもそも感想ですらないし】

【こいつが常日頃から何考えてるかよくわかるよな】


「拙者は今回ひさしぶりに楽しむことができたでござる。それはひとえにアキカゼさんの気遣いがあらゆる面で抜きん出ているのが印象に残って居るでござるな。頼りになる大人とはこういう人を言うのでござろうな。モーバ殿ももっと頑張ってほしいでござる」


「うるせーよチビ!」


「ふーんだ」


【おや?】

【これはこれは】

【ほほう、あの暴走娘がな(後方父親顔)】

【モーバ君といったかな? 少し話がある^ ^】

【あ、本物のお父さん出てきた】

【モーバ、逃げろ!】

【その人トップクランのマスターなんで逃げきれないぞ?】


「さて、あとは若い二人に任せるとして」


【流すな】

【自分で話振っておきながら他人のフリですか】

【勉強になりますwww】


「次は陸ルート氏」


「はい。そうですね、やはりアキカゼさんは探索者としても年配としても先陣を切って歩いてきたノウハウが段違いだなと感じました。特に戦闘なんかもパッシブ曲とは思えないくらいの思い切りの良さ。今回の配信は後で何回も見直して糧にさせていただきます」


「真面目な回答ありがとうね。こういうので良いんだよ、こういうので」


【モーバが不真面目代表だからな】

【まだもう一人いるだろ】

【そう言えばマッドドクターが居たわ】


「じゃあ視聴者に期待されてるオメガキャノン君」


「アキカゼさんにはめっちゃ稼がせていただきました!! あざーす!!!!」


【おいwww】

【正直すぎる】

【こいつこんなやつだっけ?】

【生産してる奴は素材カツカツだからな。だいたいこんなふうに切羽詰まってる】

【マッドさが見る影もないな】

【初戦あやつはマッドの中でも最弱】

【最強は?】

【そりゃアキカゼさんでしょ】

【だよなぁ、余興でリンドブルムに挑もうなんて普通の神経してたら考えない】


「終わりよければすべてよしというでしょ? 最後にパスカル君」


「俺の擬態はどうだった? アキカゼさん」


「あ、やっぱり君ロウガ君だったんだ」


「なんだ、見抜かれてたのか。いつからだ?」


「出会った時から。似合わないメガネしてるなぁって」


【草】

【メガネかけただけで変装と言い切れるこいつも凄い】

【ロウガって誰?】

【漆黒の帝の幹部だよ】


「くま君の弟だよ。うちのサブマスターの息子さんなんだ。彼には情報の一部をブログに書き起こす役目を任せてたんだけどまさか探索者になってるとは思わなかったな」


【ああ、くま】

【vsヤマタノオロチ以降、そこまで恐怖心抱かなくなったな】

【そもそも恐怖心抱く奴はレッドネームだとあれほど】


「それで、俺の仕事はどうだった?」


「いいね、凄くいい。この調子で伸ばしていきなさい。君は真面目だから探偵さんの様になるなよ?」


「なろうと思ってなれる人じゃないだろ、あの人は」


「だね、年季が違う。彼のキャラ作りは45年に及ぶものだ付け焼き刃では敵わないよ」


「そうか。道は長いな」


「うん、君の人生はまだ長いんだから頑張って。私達は君よりも先にお暇するからね。壁にぶつかったら相談くらいは乗るよ?」


「そん時ぁ、親父に頼むさ」


「それがいい。彼も素直に相談すれば話を聞いてくれるだろうからね。と、言うわけで今回は寄せ集め連合の皆さんでした! ではまた次の配信の時にでも会いましょう!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る