魔法使えないエルフと最強魔法使いの冒険譚

タライ

第1話魔法が使えないエルフってわがままだな

≪魔法≫

それは知識であり、力であり、生物としての存在意義でもある

魔法とは人々の生活に根深く関わっており

私生活、仕事、娯楽、教育、道具

すべてに魔法が関わっている

この世界で魔法とは誰もが使えるものであり

魔法が使えない者は、生物として認められない

正確には魔力がないものが生物として認められない



「何よ!いいじゃない!私だって少しくらいは贅沢したいのよ!」

「だめだ!いいか!俺はお前の親みたいに貴族じゃないから!金がないんだ!俺と一緒にいたければ我慢するということを覚えろ!」

「い~や~だ~わ!それになんで金ないのよ!あんたの実力があれば、王国の聖魔導士くらいにはなれるでしょ。」

「いやだね!俺は働きたくないんだ!」

「うわ~・・・」

「だから我慢しろ!」

「ふざけんな!」


 俺の名前は

 海の人と書いてカイトと読む

 そんな俺だが、まぁ日本人だ。

 しかし前の世界でトラックに轢かれてから俺の生活は変わった

 まぁ最初に起こった変化、というか出来事は俺の死

 次には目の前に自称神のおっちゃんが現れた、髪の毛がバーコードの神だ・・・

 こいつがとんでもないことを言いだした。

 世界の均衡がなんたらだとか~

 生まれてこのかた悪いことをしたことなかったからとか~

 褒美として異世界に最強の魔力を添えて送ってやろうとか~

 バーコードの神が何言ってんだって思って話をろくに聞かずにいたら・・・

 つい1ヵ月前だ、この世界に来た

 最初に送られた俺は思った・・・へ?っと

 だって考えてほしい例えば君が死ぬとしよう、なに縁起が悪い?

 ・・・死んだとしよう!急に目の前に髪の毛がバコードの神が自分のケツをかきながら出てくるとしよう

 君はきっとこう思うだろう・・・へ?っと

 次にその神が君はいい子だったから異世界で最強の力を使えるようにするよっと言って

 同意も聞かずに異世界に送られたとしよう!

 きっと君はこう思う・・・へ?っと


 そして、俺がこの世界に来てすぐの事だ

 俺がこの世界の常識を頭にある程度叩き込んだ後

 道端でこいつを見つけた。


「おじいさん!セルベーサおかわり!」


 この飲んだくれのエルフと出会った。

 こいつの名前はセレスティア、俺はセレスと呼んでいる

 セレスはとある問題を抱えた美人の巨乳エルフでその金髪碧眼はまさにファンタジーに出てくるエルフそのものの見た目だ。服装は俺が適当に買った女物の服だが、サイズが合わなかったようだ

 胸の谷間が非常に強調された状態になっていてなんというか、目のやり場に困る

 まぁ俺のせいなんだが、あとで買いなおすか、それかいっそ俺が作れば・・・

 俺がそう考えていると

 ふと柔らかいものが腕に当たる・・・


「ね~カイト~聞いて~、私ね~私ね~」


 酔っぱらったセレスが引っ付いてくるのを押しのけていると。


「私ね~お父さんにゴミって言われたの~お母さんにも我が家の恥だって言われてね~兄弟たちにも石ころを投げられてね~痛かった~の!」


 セレスは酔っぱらうと毎回この話をする。

 初めて会った頃は貴族とは分からなかった、だってこいつ薄汚い皮の服を着ていたんだから

 路地裏で膝を抱えて顔をうずめて泣いていたのだ。

 体のあちこちには打撲の跡があり

 小さな切り傷も多くあった 

 俺はかわいそうに思い回復魔法をかけて傷だけ治してやりその場を離れたのだが。


「でもね、私が家から追い出されて、辛い思いをたくさんして男の人にもたくさん弄ばれて、嫌な思いもたくさんしたけど、私ね本当にうれしかったの、カイトに助けてもらって」


 そう、傷を治すとその街を出てもセレスは俺の跡をつけてきた

 話しを聞こうとそばまで寄ると

 一言感謝の言葉を言いたかったらしい

 俺は好意でやったことじゃないからいいよっと言ったがセレスはそれでもというものだからとりあえず感謝の言葉を聞いてやり

 するとセレスは仲間になりたいと言い出した。

 きっと俺の事を旅の途中の魔法使いとでも思ったのだろう、俺も別にいいと思ってしまい、セレスのお願いを聞いてしまい、今に至る


「ね~聞いてるの?カイト~」

「聞いてる聞いてる、引っ付くなお前の胸無駄にでかいから当たるんだよ」

「私の巨乳に触れられるだけ、感謝してほしいわ~」


 こう言っちゃ、ひどいかもだが、こいつの母親が言っていた我が家の恥ってのは案外的外れではないかもしれない・・・

 しかしこの性格が災いしてセレスは親に捨てられたわけではない

 心無い男から好きなように扱われたのも性格が理由ではない

 もちろん僕が助けた理由も性格とは関係ない。

 むしろ性格を知ってたら助けなかったまである、いやそれはないか。

 性格を知っててもおそらく俺は助けただろう、仲間にはしなかったかもだが

 セレスの受けた迫害や暴行、そして情けは彼女のあっけらかんとした性格が原因ではない

 すべての原因は彼女が魔法を使えず

 魔力を持たないからだ。

 この世界では魔力は物にすらある

 つまりは魔力を持たいないというのは物以下のゴミになり下がる

 そしてそういった人々はごくまれに生まれてくるそうで原因は分かっていないのだそうだ


「ね、カイト、私ね、カイトに感謝してるんだ」

「なら、少しは酒を飲むをやめてくれ、あぁ金が・・・」

「い~や~だ~」


 このエルフ!

 俺がこのバカエルフに金の大切さを教えようと怒ろうと思ったら

 酒場のおっちゃんが近づいてきて


「お兄さんよ、しばらくこの街にはいるのか?」

「まぁ、金を集めるためにモンスターを狩ろうと」


 働くのは嫌だけど、金は絶対に必要だしな

 それに、この世界にはモンスターがいるのだ。

 モンスターたちは体内に魔石を持っていてそれを抜かれたり壊されたりすると、消滅する

 そんなモンスターの魔石はそれなりの値段で売れるので、俺なら一回の狩りで、一週間分の宿代と飯代が稼げる、一人分のだけど


「モンスター狩りか~それもいいがこの町のギルドには行ったか?」

「それは、まぁ魔石を換金しに」

「だったらよ。その嬢ちゃんと一緒に冒険者登録すればいいじゃないか。そうすればクエストで報酬をもらいながら狩ったモンスターの魔石を換金すればかなり効率がいいぞ」


 確かに、俺もそれは考えたが・・・

 俺はただでさえ規格外であり、ここでの冒険者登録は魔力の値に比例して階級が与えられる

 おそらく俺は一番上の階級だろう、しかし

 そんなことすればおそらく俺は国に関わる事件に巻き込まれる可能性がある

 俺はこの世界でなるべくそんなでかいことには巻き込まれずに過ごしたい

 そして何より、セレスの事もある

 セレスは魔力がない、つまり冒険者登録をするときにセレスが魔力を持たないことがばれる。

 それだけは絶対に避けてあげたい。

 助けて、仲間にしたからには、世話を見てやるのは当たり前のことだ。

 本当は働きたくないが、目立たずに過ごすためには働く必要がある。


「遠慮しておくよ。冒険者には興味がないんだ。」

「そうかい、まぁそこはあんたの自由さ。ちなみに金足りるかい?」

「すみません、つけにしてもらえますか?」

「あいよ~いつまでなら返せる?」


 初対面なのにつけを許可してくれる偉大な酒場の主人に感謝しながら、明日には返すといって俺らは宿へと向かった

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