シングルベッド

妻を病気で失った敏夫は、気持ちを切り替えるべくベッドを買い替えた。

一人娘と寝るにしても、ダブルは広すぎたのだ。

しかし、いざそのベッドで眠ると夜中に「たすけて、たすけて」と声が聞こえる。

気味が悪い反面、妻が自分の寝場所を失ったと感じているのでは…と、

誤解を解くために娘を起こさぬよう仏壇へ向かおうとした瞬間、

親子を大地震が襲う。敏夫は必死で娘を抱きしめて庇い、半ば覚悟しながらも

妻に謝り続けた。祟りなのだろうか、すまない、すまない、と。

地震が収まってみると、家は崩壊してしまっていた。

しかし、ベッドを囲うようにして瓦礫が散乱してはいるものの、

親子が寝ていたベッドには何も降ったり、倒れかかったりはしていない。

ふと見れば妻の仏壇はぐしゃぐしゃになっていた。

不意に、怯えるばかりだった娘が口を開いた。

「ママがね、悪くないのにごめんなさいは、みっともないって」


ああ、君は「二人をたすけて」と神様に願ってくれていたのか。

間違えていたね。ありがとう。

敏夫は新居で、ダブルベッドを買った。

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