第114話 流浪の民
「第二回目建国クラブを始める」
ミニアの言葉にダッセンがやる気の無い拍手を送る。
「強くなれるんだろうな」
「ちっちっちっ」
ライナルドの言葉にミニアが指を振る。
「馬鹿にしているのか」
「これだからお子ちゃまは。戦闘に必要なのは機転。何気ない生活でしか磨く事が出来ない。難問に機転を利かす事により鍛えられる」
へぇ、そんな事を初めて聞いた。
ただ、対応力があると色んな場面で役に立つ事はなんとなく分かる。
「ふん、なら話を最後まで聞いてやる」
「国にとってまず求められるのは住民。住民が居ない国など終わっている」
「住人を増やす算段を考えるのね」
とセラリーナ。
「それはあてがある。リトワースの民がいる」
「それならもう増やす必要は無いでげす」
「移民を考えているのね」
「強き者の所には自然に人が集まってくるものだ」
「リトワースの民って戦争で行き場を無くした人達だよな。そういう人達を勧誘したら」
「エイドリクには勲章を上げよう。紅葉勲章だ」
「では、そういう情報を集めるでげす」
「よろしく。二つ目のお題は臣下の確保だけどこれはどうでもいい。集まった人達の中にきっと人材がいるはず」
「学校を作って育成したらどうかな。子供を強制的に集めて無料で訓練するといい」
「師匠凄いです。視点が違います」
「夢物語でげす。お金はどうするのでげす」
「産業の育成と貿易ね。これは魔道具を考えている」
「国なんてのは戦力と恫喝だ」
「ライナルドの言う事ももっとも。軍備と外交はおいおいなんとかしましょう。軍備は一応魔道具で賄う事を予定している」
「魔道具の魔力はどうするのでげすか」
「毎日53万の魔力が湧いてくる秘術があるのよ」
「本当に国が出来そうな気がするでげす」
「当たり前よ。ウィザは無敵だから」
第二回の会合は終わった。
こんなもんで国が出来るはずがない。
実際はリトワースの宰相が取り仕切ってなんとかするんだろうな。
だが、人集めは協力してやろう。
俺は翼を広げ戦場を探して何日か飛びまわった。
ある山に差し掛かった時に流民の集団と出くわした。
俺が降りると集団は疲れた様子でへたり込んだ。
顔は誰も諦めきった顔に見える。
俺はゴーレムをアイテムボックスから出した。
「あー、聞こえるか流浪の民よ。ドラゴン様がお前達に未来を示してやろう」
「本当ですか。私達ルルシャの一族は土地も失いもう行く場所もありません。せめて最後は魔獣と戦って死のうと山まで来たのです」
「魔法都市は知っているか」
「ええ、存じてます」
「そこにいるホレイルという人物を頼れ。ミニア様の命だと言えば
「私はルルシャ族の族長ニコントです」
「俺はホムンだ」
腹が減っているようなので、魔獣を何匹か仕留めて運んだ。
「決めました。私達一族はあなたについていきます」
腹が一杯になって希望が湧いてきたらしい。
ルルシャ族の表情が明るくなったのが見て取れた。
さてと、人間の足で歩いたらどれだけ掛かるか分からない。
こういう時は魔法だな。
石の板を魔法で作り浮かす。
それにロープをかけドラゴンが引っ張った。
「ドラゴンは凄いですな。ホムン様の従魔ですか」
「いや、ミニアのだ。ミニアは俺の弟子で、王位継承権を持っている」
「どこの国か聞いてもよろしいですかな」
「リトワース王国だ」
「おお、あの戦乱で失われたという小国ですな」
「そうだ。今、建国の為に人を集めている」
「なるほどそれならお力になれそうです」
「私ドラゴンに乗りたーい」
「こらこら無理を言ったらいかん」
「いいよ、子供達が交代で乗ると良い。一度に四人しか乗れないから順番だぞ。さあ並べ」
話を聞いていた子供達が列を作る。
後から話を聞いた子供も全員列に加わった。
途中、子供達が何度も乗り降りするたびに進行が止まる。
非効率だがこういう体験が後でミニアの忠誠につながらないとも限らん。
こういうのもいいだろう。
「ホムン様、魔法見せて下さい」
「こら、何て事を」
「おう、別に良いぞ」
俺はゴーレムから進行方向に居たフォレストウルフ目掛けて誘導弾を撃った。
燃え上がるフォレストウルフ。
「凄い。どうやったらホムン様みたいになれますか」
「いっぱい勉強して、魔獣退治を頑張ればなれるだろう。だけど、無理は禁物だぞ。大人たちの言う事を聞いて行動するんだ」
「うん」
魔獣は出てきたが道なき道程をこなし、隣国の宿場町までなんて事なくついた。
「道中倒した魔獣の素材は金に換えて路銀の足しにしろ」
俺はアイテムボックスから金貨百枚を出して渡した。
「こんなに沢山頂いてよろしいのですか」
「こんなのはした金だ。気にする事はない」
「ありがたく頂いておきます。この恩は一生忘れません」
そろそろ、魔法都市に帰らないとな。
ミニアとは伝言魔法で連絡を取り合っているから、問題はないとは分かってはいるが。
予定では建国する土地を決める視察にそろそろ行くはずだ。
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