第25話 ゴブリン退治

 二日連続の開拓地。

 昨日は俺の活躍で開拓地の開拓が大分進んだから、今日は道作りだ。

 作業は昨日と変わりなく岩をどけて木を切るだけ。


「あれを見ろ!!」


 叫ぶ冒険者の作業員が指差した先にはおびただしい数のゴブリンの群がいた。


「やばいな。千はいると思うぜ」


 鐘がカンカンと鳴らされる。

 開拓地からも全員が武器を取り道作りの現場に出てきた。

 完全に迎え撃つ体制だ。


「俺、生き延びられたら、あの娘に告白するんだ」

「ついてねぇなぁ」

「やるしかないだろう」


 辺りは悲壮感に包まれた。


「魔法放て」


 魔法の詠唱する声が重なって聞こえる。

 様々な大きさのファイヤーボールが一斉に放たれた。

 俺はブレスを吐いた。


 ゴブリンの群は炎に包まれ断末魔が絶え間なく続く。

 千ぐらいと思われたゴブリンが実際はそんな数じゃなかった。

 後から後から湧き出るように出てくる。

 こりゃあ埒が明かんな。

 範囲攻撃がないとジリ貧だ。


「ウィザ」


 ミニアの緊迫した声が飛ぶ。

 俺は10×10メートルのストーンウォール40枚を出して一斉に進ませる。

 複数の魔法を同時に操るのは前に解決したので今回使わせて貰った。

 魔法のイメージは。


void magic_move_multi(MAGIC **mp,char **orbit,long orbit_size,int multi_size)

{

 long i; /*カウンター*/

 int j; /*カウンター*/

 for(i=0;i<orbit_size;i++){ /*軌道データの数だけループ*/

  for(j=0;j<multi_size;j++){ /*対象の数だけループ*/

   vector_add(mp[j],*(&orbit[j][i])); /*一個分の速度を設定*/

  }

  time_wait(1);

 }

}


void main(void)

{

 MAGIC *mp[40]; /*魔法四十個の定義*/

 orbit[40][100000]; /*軌道データ*/

 int i; /*カウンター*/

 for(i=0;i<40;i++){

  m[i]=stone_wall_make(10000);

  magic_straight(mp,orbit[i],100000); /*軌道真っ直ぐ*/

 } /*繰り返しの終わり*/

 magic_move_multi(mp,orbit,100000,40); /*40枚の石の板を一キロメートル動かす*/

}


 こんな感じだ。


 石の400メートルの壁が一キロ前進していく。

 魔力コスト四十四万の魔法だ。

 ゴブリンは押しつぶされ、さながら津波に押されていくようだ。

 木や土砂を巻き込み進軍。

 森が一つ消えてしまったが問題ないだろう。


 粗方つぶしたので魔法を強制停止させる。

 生き残ったゴブリンは俺を見ると逃げ出して行った。

 ところで今回は何だったのだろう。

 魔王とかの話も聞いてないし、スタンピードの兆候なんてあったかな。


 開拓予定地に戻ると一同は宴会を開いていた。

 俺は情報収集するべく耳を澄ます。


「嬢ちゃんも飲みな」


 こらミニアに酒を勧めるな。

 注意しようと顔を寄せると果物の匂いがする。

 ジュースでしたか。

 勘違いしてすみません。


 何って目でミニアが俺を見る。

 俺は串焼きを一皿丸ごと飲み込んだ。


「今回はあれかね。ベヒーモスのせいかね」


 もっと詳しく。


「ドラゴンの旦那の事は悪く言いたかないが、旦那を食うためにベヒーモスがやって来て魔獣のテリトリーが乱された。どうにもならんとは分かっちゃいるが、なんとかしてほしい」


 なるほど、ビリヤード状態って訳か。

 ベヒーモスがそれより少し弱い魔獣を怯えさせ、その魔獣はそれより弱い魔獣を怯えさせる。

 そうしてゴブリンが弾き出されたって訳だな。


「ウィザ、悪くない」

「そうだな。弱肉強食だ。それよりあの石壁の魔法はなんだい」

「秘術」

「そうか。なら口止めしとかないとな。貴族に目をつけられたら大変だ。もっともドラゴンを連れている時点で目立つも目立たないのもありゃしないがな」

「よろしく」

「上手い事やっとくよ」


 辺りが薄暗くなってきた。

 そうだこんな魔道具はどうだ。


void main(void)

{

 light_test(); /*ライト*/

 time_wait(3600*100); /*一時間待つ*/

}


 一時間灯りを灯す魔道具だ。

 試しに作ってみると開拓地の一角にポツンと灯りが灯る。

 魔法ってエネルギー効率がとってもいい。

 一時間でも余裕で持つ。


 普通に出す魔法の光は魔法が終わると三秒ほどで消える。

 それと魔石なんだけどFランク魔獣の魔石は魔力コストが15ぐらいの魔道具しか作れない。

 Cランクで30といったところだ。

 Aランクだと100未満でSランクは100オーバーだ。

 リタリーが30と言っていたのは自分で手にできるのがCランクまでらしい。

 Bランク以上は通常だとオークションに掛けられる。

 情報はミニアが集めて来た。

 ミニア有能だな。


 ちなみにライトの魔力コストは11だ。

 Fランク魔石でも充分作れる。

 魔石に書き込む呪文を改良して、こんなのを作った。



void main(int argc,char *argv[])

{

 char spell[256]="ヒラニシ・モチニミゆヒラニシよ・が・リニキクカろカイトカゆよレ・カニモイろテチニカゆアオワワよレ・む"; /*書き込む呪文*/

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 int i; /*カウンター*/


 if(argc != 11){ /*対象が十個ないときはエラー 魔法自身も対象に含まれるため11になる*/

  exit(EXIT_FAILURE); /*強制終了*/

 }


 for(i=0;i<10;i++){ /*十回ループ*/

  mp=magic_tool_init(argv[1+i]); /*一個書き込みの準備*/

  magic_tool_write(mp,spell); /*一個書き込み*/

  magic_tool_compile(mp); /*一個実行できる様にする*/

 }

}


 魔石10個を一度に魔道具にする呪文のイメージだ。

 魔力コスト11だから、ミニアにもやさしい。

 一度に10個までなのは、対象をイメージするのが十個ぐらいがミニアの限界だったからだ。

 ドラゴンなら百個でも余裕だ。


 ここには採れたてほやほやのゴブリンの魔石(Fランク)が腐るほどある。

 俺とミニアは魔道具を量産してその場にいた冒険者に売り払った。

 商人をやるつもりはないが、これは良い商材が手に入ったかもな。

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